再審議
再び訪れた謁見の間は、以前よりずっと静かだった。
王妃の進退をかけた、大法廷だというのに出席者は前回の半数ほどしかいない。特に、王妃派に所属する貴族の姿はまばらだ。今回の審議が彼女にとって分の悪いものだと、感じ取っているのだろう。
まったく雰囲気が変わってしまった謁見の間で、私はもくもくと審議の準備をする。
「それが、今回の新兵器か?」
声をかけられて振り向くと、眼鏡をかけた銀髪の少年がいた。快活そうな少年の隣には、いつも通り銀髪の少女の姿がある。ヴァンとクリスだ。先日やっと抜糸を終えたクリスは、自由になった右手を振って笑う。
「そんなところ。ヴァン達は、今日もクレイモア伯の名代?」
「そ」
家紋の刻まれたブローチを胸に着けて、ヴァンはにやっと笑う。
「だって気になるじゃねえか、お前らがどうやってあの女狐を追い詰めるのか」
「ちょっと面白がってない?」
一応、国政を左右する重大審議なんだけど。
「見世物になっちゃうのは、もうしょうがないんじゃないかな」
横から柔らかな声が入ってくる。ヴァン同様、モーニングスター侯爵の名代として登城したケヴィンだ。実家にいる侯爵と通信するためだろう、彼もスマートグラスをかけている。
「まあ、パフォーマンス込みで準備はしてるけどね」
私は機材を予定した場所に置く。そのついでにずれてしまった眼鏡を指先で戻した。
「今日はリリィも眼鏡なんだね」
「もちおと連携する必要があるからね。途中で通信が途切れないよう、Wi-Fiルーターも設置したわ」
「わい?」
クリスがきょとんとした顔で首をかしげる。
「通信を中継する機械よ。ルーターに衛星との通信をさせることで、謁見の間内での通信を安定させるの」
「ん……通信の、通信?」
スマホの扱いに若干慣れているヴァンも首をかしげてしまった。今のは私の説明が悪かったかもしれない。
「ざっくり言えば、置いておくだけでスマホがつながりやすくなる機械よ。もちお、ヴァンとケヴィンのスマホも、Wi-Fiネットワークにつなげてあげて」
私がスマートグラス越しに命令すると、視界の端でもちおがこっくりうなずいた。ネットワークに追加されたことが、ふたりのスマホに通知される。
スマートグラス越しに状況を確認して、ヴァンがにやっと笑った。
「お、確かに接続が安定したな。これって、うちの家にも置けたりしねえ? 部屋で操作してると、結構途切れるんだよな」
携帯電話基地局のないこの世界だと、ネットはすべて通信衛星頼みだからなあ。部屋の奥とか、地下に入っちゃうと、通信できなくなっちゃうんだよね。
「それはまた今度ね。スマホに比べてWi-Fiルーターは数が少ないの。宰相閣下の部屋とか、フランの作戦室とか、通信が大事な場所が優先よ」
「ならしゃーないか」
神の超技術は数に限りがあることは理解してくれているんだろう。ヴァンはあっさりと引き下がった。
「リリィ様、国王陛下たちが入室されるそうです」
フィーアを連れたセシリアがやってきた。今回も彼女には、私の侍女役として出席してもらっている。真の王位継承者として、この裁判の行方は見届けるべきと思ったからだ。
「こっちの準備も終わったから、あとは始めるだけね」
見ると、宰相閣下とマリィお姉さまもすでに入室している。あとは国王一家がそろったら、審議開始だ。
奥の扉から、国王陛下とオリヴァー王子が姿を現した。
そして……。
「なぜこんな茶番劇を?」
王妃のヒステリックな声が謁見の間に響いた。
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