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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は婚約を破棄したい

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加護を得る条件(フランドール視点)

「これは……フランドール先輩たちが使っている通信機じゃないですか」

「今作戦実行にあたり、父経由で使用許可をとった。スマホだけでなく、イヤホン、スマートグラスなど、一通りの装備をそろえてある。持っていけ」

「いいんですか、俺なんかに渡して」


 呆然とするグラストンを見て、ため息が出る。


「潜入作戦には、密な連絡が必要不可欠だからな」

「なるほど、城の中と外で意思疎通できたら、かなり楽になりますね」

「……というのは建前で」

「はい?」


 最後に加わった言葉に、グラストンがきょとんとした顔になった。


「俺だって冷徹な指揮官というわけじゃない。危険な任務に飛び込む後輩を死なせないよう、できる限りのものを持たせたいんだ」

「先輩……ありがとうございます」


 グラストンは受け取った箱をぎゅうっと握りしめた。その指先はふるえている。


「今から少し、夢見がちなことを語るぞ」

「夢、ですか?」


 グラストンが怪訝そうに首をかしげる。無理もない、リリィ相手ならともかく、後輩の間で夢だのなんだの、甘ったるい言葉を吐いたことはなかったからだ。

 だが、伝えるべき話だ。


「建国神話がほぼ事実であることは、お前も聞いているだろう」

「ええ、邪神の暗躍にモンスターの出現と、実際に神話通りのことが起きていますからね」

「神話では聖女だけでなく、彼女に協力した勇士七家にも、運命の女神の加護が与えられている。邪神が人知を超えた力を持つにも関わらず、今ここで俺たちを殺しにこないのは、女神の加護のおかげだ」


『負け邪神』の烙印を押されたユラは、女神の加護を越えて勇士七家の末裔を害することはできない。それは絶対の仕様だ。


「だが、そのルールにも、例外がある」


 前々から感じていた矛盾を俺は口にした。


「ヘルムート、前カトラス侯、故ダガー伯。彼らはいずれも勇士七家の血を濃く受け継ぎながらも、邪神の誘惑によって堕落させられている」

「言われてみれば確かに……運命の女神の加護があるなら、その誘惑からも守られるはずですよね」

「俺たちと、彼らの違いは何だと思う?」

「……わかりません」


 グラストンは首を振った。当然の反応だ。神の意志、などという途方もないものに疑問を持ったのは自分くらいだろうから。


「善人であること。おそらくそれが最大の違いであり、加護を得る絶対条件だ」

「善人、ですか?」


 俄かには信じられないのだろう。困惑しているグラストンの姿に、我ながら苦笑してしまう。


「善き心を持つ者に、善き運命を。運命の女神の権能は、子供のころから繰り返し聞かされてきただろう」

「それは、子供に語って聞かせるおとぎ話の類で……え? まさか、いや……建国神話が真実だとしたら、運命の女神の逸話も……?」

「おおかたは真実なのだろう。女神は、善き心を持つ者にしか味方しない」


 女神と邪神の関わりを知ってから、ずっと考えていたことだ。運命の女神は絶大な力を持っている。だが、その力を得られる者にはばらつきがある。守られた者と守られなかった者、両者を比較して出た結論がこれだった。


「完全無欠の聖者にまでなる必要はないんだろう。俺は何度か邪神と直接戦い、そのたびに運命の女神の加護を得た自覚はあるが、根っからの善人というわけではないからな。家族や友人に健やかであってほしいと思う程度だ」


 逆に言えば、そのくらいの善良さがあればよいのだ。

 人知を超越した神々は、その神聖性ゆえに理不尽な逸話を持つことが多い。運命の女神はその中では比較的慈悲深いほうと言えるだろう。


「おそらく、ヘルムートは従順にふるまいながらも誠実な側近にはなり切れなかったんだろうな」


 彼が大事なのは、君主ではない。

 君主に仕える騎士たる自分だ。

 姫君を幽閉し騎士ごっこに耽るための舞台と化したランス城が、そのいびつな願いを象徴している。


「ランス城は邪神の支配下だ。必ず運命の女神の加護が必要になる」


 俺はグラストンを見つめた。


「これから始まるのは戦争だが、情は捨てるな。正道を選べ。お前が善良さを失わない限り、女神はお前の味方をする」

「肝に銘じます」


 俺たちは頷き合ったあと、それぞれの戦場へと向かった。

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