発掘現場(フランドール視点)
「ありました、目印です!」
グラストンの案内でランス城の裏手に向かった俺たちは、城内へと通じる抜け道への入り口を発見した。元は枯れ井戸に見せかけていたのだろう、朽ちた木材と苔むした石材が折り重なっている。
護衛としてついてきたツヴァイが石材のそばに膝をつく。いつも深くかぶっているフードをとると、露わになった黒いネコミミをぴくぴくと動かした。
「……風が通る音がします。奥に空洞がありますね」
「当たりだな、掘りだそう」
「はい!」
グラストンが持ってきたシャベルで土を掘り起こし始める。俺もツルハシを使って転がった石材をどかした。それを見てグラストンは困り顔になる。
「フランドール先輩の手を煩わせるわけには……」
「人手が足りない時に変な遠慮をするな。作戦を極秘としたせいで、ここには俺とお前しかいないのだから。一応野営地にはジェイドを残してきたが、不測の事態が起こらないとも限らん」
大人数で移動すれば、それだけ敵に動きを察知される。邪神の介入を警戒して、俺たちは三人だけで野営地を抜け出して、この場所を訪れていた。
周囲を警戒する役割を担っているツヴァイは、作業員としてカウントできない。秘密を知る自分たちだけで、道を開かなくてはならないのだ。
「この石を……どければ……」
大きな石をグラストンがどける。その下には、暗く深い穴ががぽっかりと口をあけていた。
ツヴァイが注意深く中を覗き込んだ。ぴくぴく、とネコミミを震わせたあと、顔をあげてこちらを見る。
「深いですね……。主、光をいただけますか?」
ツヴァイの依頼に応じて、俺は光魔法で作り出したあかりを通路の中に放り込んだ。光はすうっと下に落ちたかと思うと、奥へと転がっていく。向かった先はランス城の方向だ。
ツヴァイは通路を見つめながら、手近にあった石を通路に投げる。石はコーン、と澄んだ音を立ててまた転がっていった。
耳をぴんと立て、じっと穴の様子をうかがっていたツヴァイは、しばらくしてやっと顔をあげた。
「かなり先まで空洞が続いています。ランス城の下まで到達できる可能性は高いでしょう」
「いけそうですね」
グラストンがぱっと顔を輝かせた。
自分の提案が採用されることが、ほぼ確定したからだろう。だが、それは彼の命をかけることで成り立っている。
指揮官として彼に功績をあげさせたやりたいとは思うものの、死と隣あわせの命令を下すのは、心が痛む。
とはいえ、他に手段もない。
「……グラストン、お前にシュゼット姫救出の任を与える」
「はいっ!」
「二時間後の十時より、俺たち本隊はランス城に攻勢をかける。俺たちが表門に攻撃を集中し、ヘルムートの注意を惹きつける間に、お前が裏からシュゼット姫に接触するんだ」
「わかりました」
「お前が連れてきたランス家の直属部隊は本隊とともに行動。シュゼット姫救出作戦には参加させないものとする」
「この細い抜け道を、大人数で通るわけにはいきませんからね」
少人数で行動することは、もとから覚悟していたのだろう。グラストンは落ち着いた様子で頷いた。俺は後ろに控えるツヴァイを見る。
「……代わりのサポートとして、ツヴァイをつける。獣人の鋭い感覚は、隠密作戦において必ず役に立つ」
「ありがとうございます」
「ツヴァイ、グラストンたちの護衛につけ。優先順は一番がシュゼット姫、二番がグラストンだ」
「かしこまりました」
ツヴァイも静かにうなずく。
「それと、これを」
俺は持ってきた荷物の中から、紙製の箱を取り出した。
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