決戦前夜
『では、裁判の流れはこの方向で。明日の大法廷ではよろしく』
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
スマホに向かって頭を下げると、宰相閣下とのビデオ通話が終了した。私は顔をあげてスマホを取り上げる。
「はあ~やっと準備が終わった~!」
「なんとか期限までにおさめられましたね」
ソファに並んで座りながら、私とセシリアは顔を見合わせる。
いやもう本当に忙しかった。王妃を断罪すると決めて二週間。再審議の調整やら、審議に必要な証拠集めやら、プレゼン資料づくりやらで、大忙しだったのだ。
「災害の影響でまだ王都は混乱してるし、準備だけしておいて審議自体はフランたち討伐隊が帰ってきてからすればいいと思ってたんだけど……」
「私たち、考えが甘かったですね」
セシリアはへにゃ、と眉を下げた。
短期間での再審議を決めたのは宰相閣下だ。
討伐隊が戦っている間は審議をしないと思っているのは、敵側も同じ。断罪までの猶予期間ができたと思い、裏で対策を練っていることだろう。彼らに考える時間を与えず、迅速に叩き潰す作戦らしい。
そのためには、多少味方の寝食が削られるのも致し方ない、という判断だ。
なんて無茶ぶりを、とは思ったが、決定者の宰相閣下が一番身を削って働いているものだから、嫌とは言えなかった。
なんてタチの悪いワーカーホリックだ。
やっぱりこの人はフランの父親なんだなあ、と妙なところで納得してしまった。
「ご主人様、セシリア様、こちらをどうぞ」
ふわりとお茶のいい香りが漂ってきた。フィーアがいれたてのお茶を並べてくれる。しかも、甘いお菓子のお茶請けつきだ。
「ありがとう、フィーア。ちょうど喉が渇いてたの」
主の疲労を察してサポートしてくれるメイド、心の底からありがたい。
セシリアも受け取ったお茶に口をつけると、ほう、と大きなため息をついた。
彼女には主に資料作りや、機材の設定などで協力してもらっていた。前世の記憶があるといっても私は所詮一般人。ひとりだけでは途中で行き詰っていただろう。
優秀な友達の手助けにも感謝だ。
「再審議が無事に終わったら、デザイナーを呼ぼうかな」
「新しいドレスをお作りになるんですか?」
ティーカップを持ったまま、セシリアがこてんと首をかしげた。
「女子寮倒壊のせいで、あっちに置いてた服は全部ダメになっちゃったからね。王都の経済を回すっていう意味でも、侯爵令嬢の発注は職人に喜ばれると思うし。それに……」
「それに?」
私に意味深な視線を向けられて、セシリアはますます首をかしげる。
「あなたのお披露目用の衣装も用意しなくちゃだし?」
「……!」
にやっと笑ってみせると、セシリアの顔がびきっ、とおもしろいくらいに引きつった。
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