城主の提案(フランドール視点)
「何か手があるのか?」
「城の裏手に、抜け道があるんです」
グラストンがモニターをタップした。城壁と建物の影になっている空間が拡大される。
「堀の外からここ……そして、城主の居室へと通じています」
「王家の抜け道のようなものか」
城はただ侵入者を拒むために作られるのではない。いざという時の脱出口も必要だ。
だから、抜け道があることに驚きはしないが。
「なぜ今まで言わなかった?」
問うと、グラストンはへにゃりと眉を下げた。
「お恥ずかしい話ですが……ここ数代、ランス家は失策が続いていたでしょう?」
「……まあ、そうだな」
二百年前にランス家三男が、長男の婚約者だった王女と駆け落ちして以来、ランス家は不遇を強いられてきた。歴代当主は状況を打開しようと賭けに出ているが、そのほどんどは失敗している。先代ランス伯も、銅山で出る精錬廃棄物を使った染料事業を興そうとしたが、結局体を壊す結果に終わっていた。
ランス家の不幸をしょって立つ羽目になったグラストンに、面と向かって言うわけにもいかず、俺はぎこちなくうなずいた。
「騎士の名門と言いつつも家計は火の車で、誰も使わないカビた抜け道の整備なんて、何十年もやってないんですよ。おそらく若手は存在すら知らないでしょう」
「つまり、使用できる可能性が低い、と」
「はい。まず城外側の入り口を発掘しなくてはなりませんし、中に入れたとしても、途中のどこかで崩落している可能性があります」
人の手の入らない建造物はすぐに壊れててダメになる。いざという時に使えるよう、王家の抜け道も、近衛が秘密裏に整備しているはずだ。
「それに、ヘルムートに知られている可能性もありましたので」
はあ、とグラストンは息を吐く。
「ランス城には、古株の騎士が何人も仕えていました。彼らがヘルムート側についたのなら、当然抜け道のことも伝えているのだろう、と思っていました。しかし……」
グラストンの眉間にぎゅっと皺が寄る。
「彼らは全員すでに死んでいました。物言わぬ屍となった彼らから、情報を引き出すことはできないでしょう」
「騎士からヘルムートに抜け道が教えられた可能性は低い、と。ヘルムート自身が、もともと知っていた可能性は?」
「ありません。あいつは王都生まれで、五歳で王宮に召し上げられてから、一度もランス領に来ることはありませんでしたから」
先代ランス伯は、長男グラストンを跡取りとして厳しく躾けた一方で、次男のヘルムートにはほとんど興味を持たなかったと聞く。
城に関わる極秘情報をわざわざ教えたとは思えない。
「だめでもともとだ。一度賭けてみるか」
俺たちは抜け道を中心に、姫君奪還作戦をたてることにした。
【クソゲー悪役令嬢コミカライズ】
2025年12月25日、マイクロマガジンより①巻発売!
【クソゲー悪役令嬢書籍】
2025年12月19日、ナンバリング⑦巻発売!
詳細は活動報告を参照してください!
小説版もコミック版も、どちらもよろしくお願いします!!






