考察と検討(フランドール視点)
「まずは人の配置が知りたいな」
俺はモニターを指先でつついた。ランス城の中庭が拡大される。そこに、青い棒のようなものがいくつも現れた。よく見ると、丸い頭と手足がついている。どうやら、人間を簡略化して表したものらしい。それらは、城内をゆっくり行き来し始める。
『遠距離から確認できた人影の記録です。分析したところ、千五百名ほどのアンデッド兵が配置されているようです。彼らのうち、何名が吸血鬼化しているかは不明です』
「兵の数が予想より少ないな」
ランス城には最大二千人ほどが収容できるとの話だったが。グラストンが首をかしげる。
「表に出てきてないだけかもしれません。アンデッドは食事も運動も必要としないんですよね? 倉庫や宿舎の中にひそんでじっとしていたら、外から見えませんよ」
「安易に評価すべきではなさそうだな」
学園や騎士団で学んできた兵法は、あくまで『生きた人間』相手のものだ。人間のライフサイクルに沿わない敵がこれほど厄介だとは思わなかった。
「逆に、生きた人間はどれくらいいるんだろうな?」
『そちらは、特定可能です』
白猫が宣言すると同時に、赤い点がランス城に出現した。
王の居室にひとつ、作戦室にひとつ。そして裏庭に十数個。
「これは?」
『城内の熱源を観測したものになります。生きた人間は必ず熱を持ちますので』
「なるほど、居室にいるのはシュゼット姫として、裏庭に集まっているのは何なんだ?」
『ウシやブタなどの家畜ですね』
「となると……作戦室にいるのは」
グラストンがごくりと喉を鳴らす。
『ヘルムートと推測されます』
はあ、とグラストンと俺どちらともなくため息がもれる。
「弟の生を喜べない日が来るとは」
「生ける屍になっていても、やることは同じだがな」
俺たちの仕事は、乱心者を討伐し姫君を救うことだ。
「どう攻めましょうか」
グラストンの問いに、俺は首を振る。
「難しいな。ただ死者が集まっているだけの城なら、どうとでもなるが」
魔法でも攻城兵器でも使って火を放ち、すべてを焼き払ってしまえばいい。主だったアンデッドを炎で灰塵に帰したあと、残存する屍を『掃除』すればいい。
だが、そうもいかない事情がある。姫君だ。
彼女だけは生きて救い出さなくてはならない。
「火矢や投石器は使えないな。巻き込こんで死なせてしまう可能性がある」
「となると、正面からの攻略ですが……非常に難しいですね」
「ああ、さすが騎士の名門ランス伯爵家の城塞だ。隙がない」
何百年と西の国境を守ってきた騎士の城は、基礎からよく考えて設計されている。攻城兵器を使わずに、しかもゾンビ兵を相手に攻め落とす方法など、簡単には思いつかなかった。
「シュゼット様だけ、こっそり助け出すのはダメでしょうか?」
じっと黙って成り行きを見守っていたジェイドが小さく意見した。
「ボクたちは、そもそも姫君を助けるために来たんですよね。城を落とすのが一番の目的ではないはずです」
一理ある意見だ。しかし、俺は眉をひそめて首を振る。
「少人数の潜入も難しいな。空を飛べるドローンでさえ、壁伝いに移動する吸血鬼に発見されて破壊されている。この状況で人を送り込んで成果が出るとは思えない」
「……俺ひとりなら、なんとかなるかもしれません」
グラストンがぽつりと言った。
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