作戦会議(フランドール視点)
「フランドール様、マッピングが完了しました」
「ご苦労」
報告を受けて、俺は顔をあげた。
ジェイドがノートパソコンを片手に立っている。
「グラストン、お前も一緒に見て意見をくれ」
「はい」
テントの中で作業をしていたグラストンも手をとめてこちらにやってくる。俺は彼とともに、ジェイドの示すモニターを覗き込んだ。
作戦司令部であるこの野営テントに詰めているのは、俺たち三人だけだ。ツヴァイは情報収集のために外に出ているのだが、アルヴィンはすでにランス領にない。先にハルバードに帰してしまった。
彼が不要だったからではない。
彼が有能だからこそ、帰すべきだと判断したのだ。
ランス城の住民のほとんどは、アンデッドだ。生ける屍は、物理的に粉々にするか、浄化の魔法で呪いから解放しない限り、止まらない。
最強騎士と名高いハルバード侯が、魔の森の戦闘に事実上勝利しているにも関わらず、いまだ足止めされてしまっている原因は、この異常なしぶとさにある。
ハルバード侯爵でも手を焼いているのだ。
指揮経験の少ない自分が、短期決戦などできるわけがない。
この戦は間違いなく、長期戦になる。
ユラのことだ。先の見えない戦いに、優秀な領主代理を巻き込もうものなら、手薄になったハルバード領に、狂暴なモンスターを嬉々として送り込んでくるだろう。
味方が減るのは惜しいが、二次被害を防ぐ大事な一手だ。
幸い戦力が全く足りてないわけではない。
うまく立ち回る方法が、必ずあるはずだ。
「こちらが、現在のランス城になります」
ジェイドがノートパソコンを操作すると、モニターにランス城の見取り図が表示された。最初は平面的な図だったが、その上に建物の映像が立体的に積み重なっていく。
精巧に再現される城を見てグラストンが、こちらに来て何度目かの感嘆のため息をもらした。
「まるで、ランス城の姿が映し取られたようですね」
ひょこ、と白猫が城の横に姿をあらわす。
『先日グラストン様から提出いただいた、城内の見取り図をベースに、監視衛星とドローンの遠距離撮影画像を組み合わせて作った立体地図です。ランス城の模型のようなものと思っていただければ、よろしいかと』
模型のランス城は、画面の中でゆっくり回転し始める。
「上下左右どの方向からでも観察できるのか、これは便利だな」
城塞は敵を迎え撃つために城壁や通路が立体的に交差している。ただ見取り図を見るだけでは、なかなか構造を把握できないから、模型の存在は非常に助かる。
『ただし、あくまで模型であることを御留意ください』
白猫は褒められたにも関わらず、なぜか残念そうな表情で忠告してくる。
「何か問題でも?」
こっくり、と白くて丸い頭が上下した。
『観測がすべて遠隔地からのため、内部構造をほとんど把握できていません。外見は再現できましたが、内部はほぼ『ハリボテ』と言っていいでしょう』
「吸血鬼のせいだな」
彼らは長距離攻撃可能な触手を持っている。城壁に近づくものは、鳥でもなんでも撃ち落としてしまうだろう。壊されるとわかっていて、貴重なドローンを投入するわけにはいかなかった。
白猫はくやしそうにしっぽで床らしき場所を叩く。
『空中母艦『乙女の心臓』が稼働していれば、ミューオンを観測して、内部構造を把握できたのですが……』
「気にするな。できないこと悔やんでもしょうがない」
手札に限りがあるのはいつものことだ。
今あるカードでやりくりする方法を考えたほうが建設的だ。ただの平面地図よりずっとわかりやすいのには変わりない。
「内部情報は私にまかせてください」
グラストンが白猫に声をかけた。幸い、こちらにはランス城で生まれ育ったグラストンがいる。次期城主として、城の情報を叩き込まれているはずだ。
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