王族の矜持(フランドール視点)
『私がハーティアで命を落としたら、母国キラウェアは黙っていません。貴国とは深刻な戦になるでしょう。私は王女として、両国の友好の継続を望みます。そのためには必ず、生きて帰らなくてはなりません』
王族は国のために生まれた存在だ。危機に陥ったからといって、軽々に死を選ぶことは許されていない。たったひとりで敵地に囚われ、不安でたまらないだろうに。それでも少女はまっすぐドローンに訴えかける。
『お願いします、ここから助け出してください』
彼女の姿は正しく、キラウェアの王族だった。
「もちお、シュゼットにメッセージを返すことはできるか?」
『申し訳ありません。こちらのドローンにスピーカー機能は搭載されていません』
「……そうか」
気丈にふるまう姫君のために、何か一言でも伝えて励ましてやりたいのだが。白猫は小首をかしげたあと、新たな手段を提案する。
『上部に小型ライトがあります。明滅させて、メッセージのかわりにするのはいかがでしょうか?』
「何もリアクションがないよりはいいだろう。やってくれ」
パソコン上でピピッと耳慣れない音がして、ドローンのライトが明滅した。瞬間、シュゼットの顔がはっとしたものになった。ライトの光に気が付いたのだろう。
『それは、お返事……ですか?』
シュゼットは一瞬目を伏せて考えこむ。それから恐る恐る、こちらをうかがうようにカメラを見上げてきた。
『はい、なら一度、いいえなら二度、光をください』
「もちお、イエスで答えてくれ」
ピッ、と音がしてまたライトが光る。それを見てシュゼットの瞳が瞬いた。ドローン越しにこちらと意思疎通ができたことに、顔を輝かせる。
『助けて、くれますか』
「イエスだ」
ピッ、とまた音と共にライトが光る。
『……っ!』
答えを返されて、安心したのだろう。シュゼットはやっと年相応の少女のように顔をほころばせた。
「何がなんでも、救い出さねばならんな」
俺の言葉に、その場にいた全員がうなずく。ひとり閉じ込められる恐怖など、いたいけな少女が体験していいものじゃない。一刻も早くあの部屋から救出しなければ。
「もちお、もう一度城内を周って……」
追加の指示を出そうとした瞬間、映像が途切れた。
「な……」
「もちお、姿勢制御!」
『はい!』
ジェイドがとっさに指示を飛ばす。映像はガタガタと激しく揺れたあと、不意に安定した。映し出されているのは、先ほどよりずっと低い中庭だ。映像が乱れている間に、かなり下へと落ちてきたらしい。
「どうして……?」
周囲を見回すように、ドローンがその場で旋回する。
カメラが城壁に向けられた瞬間、異様な光景が映し出された。
「……!」
アルヴィンが思わず息をのむ。彼がそうしたくなる気持ちはよくわかる。俺も以前に似たようなものを見ていなかったら、声をあげていただろう。
壁には何人もの人間が、蜘蛛のように貼り付いていた。
手と足だけで壁を登るという異常行動をしているというのに、彼らの顔に表情はない。ただただ、うつろな瞳をこちらに向け続けている。その肌は一様に血の気がうせて青白かった。
【クソゲー悪役令嬢コミカライズ】
2025年12月25日、マイクロマガジンより①巻発売!
【クソゲー悪役令嬢書籍】
2025年12月末 ナンバリング⑦巻発売!
詳しい情報は活動報告をチェック!!
小説版もコミック版も、どちらもよろしくお願いします!!
読んでくださってありがとうございます!
もしよろしければ、広告の下↓↓↓までずずいっとスクロールしていただき、「☆☆☆☆☆」評価お願いします!
作者の励みになります~!
もちろん、お気軽な感想、ブクマ、レビューなど大歓迎ですので、よろしくお願いします!!






