姫君の行方(フランドール視点)
ただ城内を回っているだけでは、手がかりは得られないようだ。俺は偵察の方針を少し変えることにする。
「あてもなく城内を回るよりは、目標を決めてそちらに向かおう。グラストン、ランス城で貴人を幽閉するとしたら、どこを使う?」
「シュゼット姫の捜索ですね。なら……南の塔あたりが候補にあがりますが……いえ、城の中心部に向かいましょう」
途中で提案を変えたグラストンに、問いかける。
「理由は?」
「ヘルムートは、『シュゼット姫を女王として、千年王国を築く』と宣言していました。姫君はただの人質ではなく、国を統べる君主です。罪人のように塔に閉じ込めるのではなく、王として最も貴い部屋に据えるでしょう。まずは城主の寝室を目指すべきと思います」
「ジェイド、そうしてくれ」
「かしこまりました」
ジェイドは言葉に従いドローンの進路を変える。
「真正面から向かうのではなく、裏庭から城壁ぞいに上昇してください。そこからなら、寝室の窓を覗けると思います」
「こちらですね」
ドローンは、無骨な石造りの壁にそって上昇する。頑丈な鉄格子に囲まれた窓と同じ高さになったところで、動きを止めた。そのまま高度を維持しながらカメラでとらえた奥の様子を伝えてくる。
室内には、人影がひとつあるようだった。
大きく広がったスカートに長い髪、ドレスを着た小柄な少女に見える。しかし、部屋の中は暗く、髪色や顔立ちはうまくとらえられない。
「もちお、もっとよく見えるようにできないか」
『すでに最大限ズームしています。画像分析と鮮明化の加工を試みます』
すうっと画面が明るくなった。部屋の中に明かりを灯したような光景だ。しかし、それでもあと一歩、絵が不鮮明だ。
「シュゼット姫、のようには見えるが」
『画像解析の結果、99パーセントの確率でシュゼット姫と判断します』
それは、断定とほぼ同義だ。
「もちおの分析は信頼しているが……あと一押し、確証がほしいな」
カメラ越しに、少女の姿を見つめる。
その時ぱっと少女の顔がこちらに向けられた。少女はつかつかと、まっすぐ窓に向かって歩いてくる。
「見つかったようです。撤退しますか?」
「いや、待ってくれ。彼女の反応が見たい」
少女は窓際までくると、ぴたりと足を止めた。すぐ傍にまで来てくれたおかげで、鉄格子ごしでもはっきりと顔が確認できる。
ブロンズ色の髪に、大きな青緑の瞳。間違いない、王城からさらわれたシュゼット姫だ。
その顔を見てほう、とグラストンが大きく息を吐いた。
「姫君……よくご無事で」
「怪我などはなさそうだな」
攫われてから半月以上経つが、シュゼットに大きく荒れたところはなかった。以前会ったときよりかなり痩せてしまっていたが、上等なドレスを身に着けきちんと背筋を伸ばして立っている。
大きな負傷や、精神の深刻な不調は見られない。
俺もこっそり胸をなでおろす。
期待されるなかで、もっともよい状態だ。
すでに姫君が『壊されていた』可能性も十分あったからだ。
彼女が幽閉されつつも丁重に扱われているのは、ヘルムートから振られた役割が『仕えるべき主人』だからだろうか。
シュゼットは、まっすぐこちらを見つめてきた。ドローンのカメラ位置を意識した仕草だ。彼女は誘拐される直前まで、離宮でリリィと一緒に過ごしていた。操作する様子を見たことがあるのかもしれない。
視線を固定したまま、シュゼットが口を開く。
「もちお、声を拾えるか」
『音声データを補正し、字幕を付与します』
もちおが宣言すると同時に、雑音まじりの少女の声がスピーカーから響いてきた。画面下にも、発言を文字起こししたらしい、文章が表示される。
『あなた、女神の加護を受けた特別な使い魔ですわね? 離宮でリリアーナに見せていただいたことがありますわ』
シュゼットもまた、ドローンを見て安堵のため息をついた。
『女神の使い魔を操れる、ということはハーティア中枢部に信を置かれた方、とお見受けします』
囚われの姫君は、ぎゅっと自身の手を握りしめて懇願した。
『助けて、ください』
それは悲痛な訴えだった。
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