ランス城(フランドール視点)
「ジェイド、始めてくれ」
「はい」
スマートグラスをかけ直すと、ジェイドは空中で軽く指を振る仕草をした。ノートパソコンの表示が切り替わり、ランス城近くの風景が映し出される。景色はすぐに移動を始めた。
「これが、使い魔の見ている景色……」
興味深そうに、アルヴィンとグラストンがモニターを見つめた。
「あまり集中して見つめないほうがいい。気持ち悪くなるぞ」
「おっと、そうなんですね」
アルヴィンが軽く身を引く。
「体が動いてもいないのに、見ている景色だけ動くからな。馬車酔いと同じことが起きるらしい」
「ああ、確かにそういう感覚ですね」
しかも馬車と違って、ドローンは上下左右を滑らかに移動する。感覚の鋭いクリス殿下などは、一目見ただけでめまいを起こしたらしい。
アルヴィンたちにいきなりスマートグラスを配らず、わざわざモニターを使って見せたのも、画面酔いの適正を見るためだ。
今のところ、画面ごしに見るぶんには問題ないらしい。
ふたりともドローンが高度をあげて堀と塀を越えていく様子を、冷静に見つめている。
「このまま北東側から侵入します」
「あ、ちょっと待ってください」
ドローンが城内に入ろうとしたところで、グラストンがジェイドに声をかけた。
「見えにくいですが、城壁の内側に見張りが配置されているはずです。少し迂回して、やや北寄りで入ったほうが見つからないと思います」
「わかりました」
ジェイドがまた指を振るのにあわせて、ドローンが方向を変える。見張りを避けて、ドローンは無事城内に侵入した。見張りを避けながら、中庭を進んでいく。
「思ったより人影が少ないですね」
「千人以上の兵士が詰めているのだから、城内は活気づいていると思ったんだが」
城内を行き交う人間の姿はまばらだ。
籠城戦に参加した兵が想定より少なかった。それだけなら、ただの喜ばしい情報だが。
「それにしても静かすぎる。もちお、音声は拾えるか」
『かしこまりました』
ノートパソコンのモニターに、ひょこ、と丸々太った白猫が現れたかと思うと、うやうやしくお辞儀をした。
「ねこ……?」
もちおに一度も接したことがないグラストンが、怪訝そうに首をかしげた。無理もない。
殺伐とした戦場のど真ん中で、いきなり愛玩動物が現れるとは誰も思わない。
「あれは女神の超技術を管理するAI……まあ、操作をサポートする妖精のようなものだと思っておけばいい。従順で便利だ」
「女神様は、ずいぶんとかわいらしい妖精をお作りになったんですね」
実をいうと、あの猫のデザインを採用したのはリリィで、しかも前世で親族が飼っていた猫がモデルだったらしいのだが。ここでその説明をしても混乱するだけなので、俺は口をつぐむことにした。
あの猫が女神の産物であることに変わりはない。
『こちらでいかがでしょうか』
ノートパソコンからかすかな音が響いてきた。風の音らしい、サー……という音が続いている。
「音が小さいな」
『申し訳ありません。音の元データには、ローターの回転音が多く含まれています。現在のマシンスペックではノイズの除去処理を行っても、この程度が限界となります』
「そうか、実際にはマイクの傍で常にローターが回っている状況なのか」
白い猫は申し訳なさそうにうなずく。ずっと操作に集中していたジェイドが顔をあげた。
「位置的な問題もありますね。兵たちに気づかれないよう、少し距離をとって飛んでいますから」
「会話の音声を拾うのは難しそうだな」
「……でも」
グラストンがぽつりとつぶやく。
「それでも静かすぎます。いつもなら、この時間は多くの兵や使用人が立ち働いていて、それなりに騒がしいはずなんです。でも、そんな気配がいっさいない」
「異常事態ではあるのか」
【クソゲー悪役令嬢コミカライズ】
2025年12月25日、マイクロマガジンより①巻発売!
【クソゲー悪役令嬢書籍】
2025年12月末 ナンバリング⑦巻発売!
詳しい情報は活動報告をチェック!!
小説版もコミック版も、どちらもよろしくお願いします!!
読んでくださってありがとうございます!
もしよろしければ、広告の下↓↓↓までずずいっとスクロールしていただき、「☆☆☆☆☆」評価お願いします!
作者の励みになります~!
もちろん、お気軽な感想、ブクマ、レビューなど大歓迎ですので、よろしくお願いします!!






