空飛ぶ使い魔(フランドール視点)
「フランドール様、準備ができました」
指揮者用の大型テントの中央で、ジェイドが報告してきた。彼の手元にはリリィに手配してもらったノートパソコンがある。締め切った薄暗いテントの中で、モニターは自ら発光して映像を映し出していた。
「何が始まるんです?」
アルヴィンが興味津々の顔でジェイドの手元を見る。
「リリィから報告を受けているだろう。空飛ぶ使い魔、ドローンにランス城の偵察をさせる」
「ああ、ハルバードにスマホを届けにきたアレですね。荷運び以外もできるんですか」
「むしろ、こちらが本来の機能だ」
「あの……フラン、先輩?」
グラストンが困惑顔で俺たちに声をかけてきた。その反応は当然だ。
このメンバーの中で彼だけが唯一、女神の超技術の恩恵に預かっていないからだ。
「その箱は何なのですか、それに、準備とは一体……」
俺はすぐ傍に置いてあったドローンの予備機を手にとった。スマートグラスごしに命令を出し、テントの中に浮かばせる。けたたましいローター音をたてて浮かぶ小さな黒い箱を、グラストンはじっと見つめる。
「これはドローンと呼ばれる使い魔だ。ツヴァイが同じものを持って、ランス城近くに待機している。ジェイドが命じれば、空を飛んで堀を渡り、塀の中の様子を伝えてくる手はずになっている」
「……そんなものが」
グラストンがごくりと喉を鳴らした。
「もちろん、通常の魔法研究で生まれたものではない。王立学園の地下で発見された五百年前の遺跡で発見されたものだ」
「それって、建国神話の時代じゃないですか」
ぎょっとするグラストンに、俺は静かな目を向ける。
「お前も、神話は事実だと教えられて育っただろう? 実際その通りだった、それだけのことだ」
「……」
「宰相派を中心とした高位貴族上層部は、すでにこれらの技術を利用して情報戦を行っている」
ぐ、とグラストンの唇が噛みしめられた。
「不満か? 今まで知らされなかったことが」
「いいえ。父が他国人の王妃擁護派なのは、王宮のほとんどの人間が知っていました。息子の俺が信用されないのは当然です」
俺同様、貴族の間で育ったグラストンも比較的聡くて周りの目に敏感だ。騎士修行のためにハルバード侯爵の下につけられた時点で、自分の置かれた状況は把握していたのだろう。
「ですが……秘密を明かしたということは、ある程度信用していただけた、と思ってよいですか」
後輩の問いに俺はうなずく。
「もともと学生時代からお前の真面目な人となりは把握していたからな。今回、家のために自ら重責を負った覚悟を評価し、情報公開の許可がおりた。城内の探索にはお前の協力が不可欠だ。力を貸してくれるな?」
「必ず、お役に立ってみせます」
こわばった顔のまま、グラストンが敬礼する。今にも責任に押しつぶされてしまいそうなのだろう。しかし瞳はまだ光を失ってはいなかった。
俺は心の中でだけほっと息をつく。
実を言えば、今回の出兵でグラストンの戦果を一番期待しているのは、宰相家だ。
隆盛、没落、それぞれたどった道はさまざまだが、やはり勇士七家は国内において聖女に次ぐ信仰を集めている。その一角が消えるとなれば、市民に大きな動揺を与えてしまうだろう。
国を預かる宰相家として、断絶だけは絶対に避けたい。
俺にとっても、グラストンは学生時代に二年も面倒を見た後輩だ。
こんなところで死なせたくはない。
(とはいえ、下手に助け船を出すわけにもいかないのが、難しいところだな)
過度な手助けは甘えにつながる。
彼には緊張したまま、冷静に戦果をあげてもらわなければならないのだ。
俺は無表情のままジェイドに視線を移した。
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