乱心者討伐戦
「……やっぱり、彼も従軍してるんだね」
ケヴィンが隊列を見つめながらそう言った。彼の視線は、フランたちがいるのとは別の部隊に注がれている。彼らは皆一様にランス家を象徴する黄色のマントを羽織っていた。彼らを率いるのは、乱心したヘルムートの兄、グラストンだ。
もともと硬い表情の騎士たちの中、彼らはひときわ表情が暗い。
「こればっかりはしょうがないみたいね。身内から反逆者を出してしまった以上、自らの手で断罪すると宣言しなければ、家ごと処分されてしまうもの」
「責任の順番で言えば、父親にやらせるとこなんだけどな」
ヴァンも顔をしかめてグラストンを見る。彼の腕には、服喪を表す白い腕章がつけられていた。大裁判の場で脳梗塞を起こして倒れたグラストンの父は、手当の甲斐もなく意識不明のまま息を引き取ってしまった。
ランス伯爵位は簡易的な手続きを経てつい昨日、グラストンに継承されている。
「ヘルムート討伐についてはもう、俺たちにはどうしようもねえよ。討伐は時間の問題だろうしな」
「そうなんだ?」
私が問いかけると、ヴァンはフンと鼻を鳴らした。
「そもそも戦力差がありすぎだ。お姫様さらって城ひとつ占拠したっつっても、それだけだろ。国ひとつ相手どって独立するには全然足りねえよ」
それを聞いてケヴィンも軽く首をかしげる。
「彼に協力しようという貴族は皆無じゃないかな。宣戦布告を受けて、グラストン卿が即座にヘルムートの除籍を表明したから」
「つまり、もともと戦力が少ない上に、兵の増員もないってことね」
「物資補給もゼロなんじゃねえ? 国賊認定されてるヘルムートに物売ったりしたら即、反逆罪で手が後ろに回るぜ」
「それ、食事とかどうするの」
「食糧庫に貯めこんでたのを、切り崩して生活するとか? 知らねえけど」
「ええ……」
まさかの状況に顔が引きつってしまう。クリスがううんと首をかしげた。
「そう考えると、籠城戦自体まともに成立しなさそうだな。腹をすかした兵など、戦力とは言わない」
「食事はマジで士気に直結するからなー」
クレイモアで騎士教育を受けた銀髪夫婦は頷き合う。兵が人間という生き物である上、食糧は切っても切り離せない問題だ。
「ランス城の兵は二千程度って話だから……うん、包囲してるだけで勝手に飢えて自滅とかマジでありうるぞ」
指を折りながら、食糧の消費ペースを計算していたヴァンが苦笑する。倒すのは簡単、と聞いても私はすぐに安心できなかった。
「城内の人間すべてが飢えるのは困るわね」
「ランス城にはシュゼットが捕らえられてるからねえ」
ケヴィンもへにゃ、と苦笑する。
ヘルムートたちだけなら、勝手に飢えてどうぞって思っちゃうけど、シュゼットだけはそうはいかない。彼女は巻き込まれた被害者だ。フランたちも彼女の救出を第一に考えているだろう。
首をかしげたままケヴィンが思考を巡らせる。
「まずは大軍で城を包囲した上で、シュゼットを引き渡すよう交渉するんじゃないかなあ」
「ヘルムートが素直に応じると思う?」
彼の愛の千年王国は、シュゼットがいて初めて成立する。
籠城戦を始めた理由そのものを手放したりはしないだろう。
「そこはやり方次第だな。ヘルムート以外と交渉するっつー手もあるし」
「以外?」
私は思わず目を丸くしてしまう。ランス城をまとめているのはヘルムートだ。だから交渉するなら彼のはずだけど。
ヴァンはにやっと笑った。
「国に無謀な戦いを挑む主君に未来はない。お姫様を手土産に投降したら、命は助けてやるぞっつったら、話を聞く奴とかいそうじゃね?」
「あー、部下の反乱」
戦争史でたまにきく話だ。
所詮ヘルムートという人間はひとりきり。部下全員に裏切られたら、太刀打ちできないだろう。
クリスが苦笑した。
「なんか心配するだけ無駄な気がしてきたな。王国軍が包囲を始めたら、すぐに決着がついてしまいそうだ」
「……そうでしょうか」
今まで私たちを見守っていたセシリアが静かに告げる。
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