最新スイーツ
「お茶会の会場はこっちよ」
私は、クリスとヴァンを連れて階段を上がり、奥へと進む。フィーアが扉を開けるとそこは広々としたバルコニーになっていた。大きなテーブルを置いて、椅子を並べてもまだ余裕がある。ちょっとしたお屋敷のリビングくらいのサイズ感だ。
「いい眺めだな!」
バルコニーの先に広がる田園風景を見て、クリスが目を輝かせた。
「このロケーション目当てで、別荘を借りたからね」
丘の下には王都と西部地域を結ぶ大きな街道が横たわっている。バルコニーからは人や馬車が行き交う様子が、一望できた。
「やあ、ひさしぶり」
椅子に座って景色を眺めていた先客が、立ち上がって私たちを振り返った。
「ケヴィン、お前も来てたのか」
「せっかくのリリィのお誘いだからね。外に出られなくて退屈してたし」
ヴァンたちと同じ銀髪の少年は、柔らかく笑う。モーニングスター侯爵家の跡取り息子である彼も、王都滞在組だ。他の地方と同様に北部のモーニングスター領も今は、異形のモンスターが何体も出現しており、危険を冒してまで帰省するよりは、多少治安が悪くても常に騎士が詰めている王都にいたほうが安全、と判断したとのことだ。
「みなさん、お揃いになりましたね」
新たな声がバルコニーに投げかけられた。振り返ると、かわいらしいエプロンドレス姿の少女が、フードワゴンを押して入ってくる。今日もふわふわのストロベリーブロンドが華やかだ。
「セシリアも招待されてたんだ?」
友達を見つけて顔をほころばせるクリスに、セシリアは苦笑する。
「私はほとんどホスト側ですね。国王陛下の御前裁判が中止になったあとも、ハルバード侯爵家のお世話になっていますから」
「カトラス候は、リヴァイアサン退治にかかりきりなんだっけか」
ヴァンがセシリアの後見人の名前を出す。私はうなずいた。
「海沿いの街を焼いて回ってるようなやばい化け物がいるところに、セシリアを送り出すわけにはいかないでしょ。ダリオからも保護しててくれって連絡がきたし」
セシリアをひとりにして、何かあったら大変だ。
彼女は表向きカトラス侯爵家傘下の、ラインヘルト子爵家令嬢ということになっている。しかし本当の立場はハーティア直系の王女であり、運命の女神から使命を託された聖女だ。
セシリアを失ったら、国どころかこの星そのものが滅亡してしまう。
そういう事情抜きでも、大事な友達は危ない目にあわせたくないし。
セシリアはおっとりとほほ笑む。
「いつもみなさんのお世話になってばかりなので、今日はおもてなしさせてください」
「そういえばエプロン姿だな?」
ヴァンも不思議そうな顔でセシリアを見た。フィーアのようなメイドのお仕着せじゃないけど、彼女が着ているのは真っ白なエプロンのついたドレスだ。フリルがついてるからかわいく見えるけど、この世界のファッションカテゴリだと仕事着に分類される。
「はい、実は今日のお菓子をご用意させていただきました」
「セシリアの手作りスイーツよ!」
「それでなんでリリィが得意満面なんだよ」
私が胸をはると、ヴァンが間髪いれずにつっこみをいれてきた。セシリアはくすくす笑う。
「レシピの発案者はリリィ様ですので」
言いながらフードワゴンに載せられた蓋を開けた。キンキンに冷えた金属製のトレイの上には、白い雪玉のようなお菓子が並んでいる。
「新作氷菓子『アイスクリーム』です」
北部出身のケヴィンが、まじまじとアイスクリームを見つめた。
「モーニングスターの氷室で作られた氷菓子は食べたことがあるけど、これは初めて見るタイプだね。すごく柔らかそうだ」
「カトラスとハルバードで共同開発した保冷庫を使って作ったスイーツよ。撹拌しながら冷やして空気を含ませることで、なめらかな口当たりにしてるの」
「なるほど。撹拌製法の発案者がリリィで、細かいレシピがセシリアなんだ」
「氷菓子にわざわざ空気いれようなんて言い出すのはリリィくらいしかいねーよな」
納得していたヴァンの動きが途中で止まる。
「……つーか、リリィの発想にセシリアの技術が加わるのって、実はやばくないか?」
「なんのことかな?」
私はそらっとぼけて目をそらした。
セシリアとはすでに共同開発してアイテムを完成させてしまっている。それも複数。やばいかやばくないかといえば、当然やばい。チート技術にもほどがある。だがそもそも、ハーティア中枢は大災害をきっかけにスマホとかドローンとか神の技術を乱用しまくっているのだ。そこに1個や2個新技術が加わったところでいまさらである。
「細かい話はいいから、早く食べさせてくれ。リリィが自信満々に出してくるってことは、絶対美味いんだろ?」
クリスが目をきらきらさせながらこっちを見てくる。運動が好きなのと同時に食べることも大好きな彼女だ。待ちきれないんだろう。
「どうぞ食べて。すっ……ごくおいしいわよ」
「いただきます! ん~冷えてて甘ぁい……」
クリスの嬉しそうな様子につられて、ヴァンとケヴィンもアイスクリームの器を手に取る。ホストの私もお皿を取って、スプーンで一口すくう。
全員でなめらかな甘さを堪能していると、すっとフィーアが前に出てきた。
「ご主人様、来ました」
「あ……」
私はお皿を置いてバルコニーの手すりに向かった。
田園風景を横切る街道に、王都から西に向かう騎士の隊列が現れていた。
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