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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は王妃を追及したい

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グラストン・ランス

「グラストン・ランスと申します。リリアーナ・ハルバード嬢にお目通りいただきたく」


 名前を聞いて、私たちはお互いに視線を交わし合った。


「敵意はなさそうです。武装も警備の兵に預けたようですね」


 ぴくぴく、とフィーアが耳をゆらした。

 鋭い聴覚で、部屋の外のやりとりをうかがっていたらしい。


「お通しして」


 私がそう言うと、フィーアが部屋のドアをあけにいった。

 ややあって、アッシュグレイの髪の青年が部屋の中に入ってくる。


「ありがとうございます……と、お食事中でしたか。出直したほうが……」

「構いません。お忙しい方に何度も足を運ばせるわけに、いきませんから」


 私は首を振った。

 おそらく彼は今、弟の不祥事対応で走り回っている最中のはずだ。こんな時にわざわざ来てくれたのを、追い返せない。


「お気遣い、感謝します」


 グラストンはそこで膝を折り、大きく頭をさげた。


「ハルバード侯爵令嬢、リリアーナ様。あなたに深い感謝を。父の手当をしていただき、ありがとうございます」

「私は人として当然のことをしただけです。礼にはおよびませんわ」

「いいえ、あの時私の父に手を差し伸べてくださったのは、あなただけでした。そしてそれは……父の名誉も守ってくださった」

「名誉?」


 私の疑問に、グラストンはうなずく。


「お恥ずかしながら、父が倒れた時……自分も含め多くの者が『こんな時に高いびきだと?』と父の行動に疑問を持っていたのです。しかし、あなたが即座に飛び出し、手当をしてくださったことで深刻な病の症状であると示された。病に倒れたことにはなりますが、父は少なくとも、怠け者とそしられることはないでしょう」


 貴族は名誉を重んじる。

 息子が誘拐犯の反逆者となった上、さらに汚名を着せられてはたまったものじゃないだろう。


「……あなたの感謝を受け入れます」

「ありがとうございます」


 もう一度深く頭を下げてから、グラストンは顔をあげた。

 初めてまともに見たランス家の跡取りは、目の下に濃いクマを作っていた。げっそりしていて、全体的に顔色が悪い。

 無理もないけど。


「お茶でも召し上がっていかれませんか」

「え、しかし……」

「事件の対応に追われて、食事もとれてないのではありませんか? 仕事に戻るのはほんの少し、何かを口にしてからでも遅くないはずですわ」

「いや……そうですね。ありがとうございます、お言葉に甘えます」


 グラストンは大きく息を吐くと、ソファに座った。

 すぐにフィーアがお茶と食事をグラストンの前に運ぶ。彼は丁寧な手つきで、少しずつ料理を口に運び始めた。


「東の賢者殿から、父の病状について説明を受けました」


 ぽつぽつとグラストンが話し始めた。

 私も顔をあげる。ディッツにバトンタッチしたあとの、最終的な状態までは確認してなかったからだ。


「ノウコウソク……脳の血管が詰まったことで、脳がうまく働かなくなってしまったそうです。リリアーナ嬢の適切な処置のおかげで即死は免れましたが、目覚めるかどうかは五分五分。そして、意識が戻ったとしても体の麻痺など重い後遺症が残る可能性が高いと」

「……そうでしょうね」

「脳への治癒魔法が試みられていますが、もともと頭蓋の内は自身の魔力で強く守られている場所です。魔法が通りにくく、治療が難しいと言われました」

「物理的な治療も、難しいでしょうしね」


 なにしろ、MRIも内視鏡もない世界だ。

 脳に問題があるとわかっていても、おいそれと手が出せない。

 呪いを併用した強力な麻酔薬が存在するから、開頭手術くらいはできるかもしれない。でも、そもそもどこに血栓ができてるかわかってないのに、頭を開けても意味はないだろう。

 私たちにできるのは現状維持と、本人の自発的な目覚めを祈ることくらいだ。

 でもなあ……ランス伯爵って、もとからヒ素中毒で体を悪くしてたっぽいんだよね。

 持ち直すだけの体力があるかどうかは、ちょっとわからない。


「ランス家は、どうされるおつもりです?」

「当主急病のため、私が代理の任につきました」


 グラストンは、トン、と自分の胸元を示した。

 そこにはヴァンやケヴィンがつけていたのと同じ、家紋をあしらった大振りのブローチがある。


「正式な継承は、父の病状回復を待ってからとなります。ですが、おそらくすぐ承認されるでしょう」

「責任重大ですね」


 通常であれば、他の兄弟や親戚に継承候補がいないか確認がとられる。しかし、現在のランス家は身内から反逆者を出した不祥事貴族だ。背負って立ちたいと希望する者はいないだろう。

 産まれながらにランス家跡取りとして育てられた、グラストン以外には。

 お茶のカップに手を延ばそうとして、グラストンは途中で手を握りしめる。


「弟は……どうでしたか?」


 質問の意図がわからず、私は首をかしげた。


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