少女たちの証言
「離宮から火が出た時のことをお教えください」
どちらが、とは指定せずに質問が投げかけられた。
現代日本の裁判とは違い、一度にひとりしか発言しちゃいけない、っていうルールはないらしい。クリスは無言で私に視線を送ってきた。
説明はお願い! ということらしい。
ここは行動型のクリスより、私が担当したほうがいいだろう。
私は軽く深呼吸してから、口を開いた。
「その日はシュゼットと、キラウェアの留学生と一緒に離宮のリビングでお茶を飲んでいました。王宮のあちこちで火災が起きたと知らせが入って、警戒していたら突然リビングからも火柱があがったのです」
「その火はどこから?」
「留学生の荷物からだったように思います」
出火場所はすでに特定されているんだろう。それ以上は深くつっこまれず、続きをうながされる。
「侍女のフィーアに先導させて、その場にいた全員を避難させました。私とクリス殿下は、彼女たちの最後尾を走っていたのですが、途中でクリス殿下の侍女、タニアがいないことに気づきました」
「それでどうされました?」
「タニアを連れに戻ろうと、離宮の橋のたもとで引き返したんです。次の瞬間、橋が壊れました」
「橋が爆破されたのでしたね……」
私は火事の状況を思い返す。
「とにかく、タニアを助けようと離宮の中を探しました。彼女を発見したのは、厨房でした。意識をなくして床に倒れていました」
そこでクリスに目を向ける。彼女は包帯で吊っている右腕を観客に示した。
「私が右腕に怪我をしたのは、タニアを厨房から連れ出そうとした時だな。燃える瓦礫からタニアをかばったら、骨にヒビが入って火傷した」
観客たちの間からどよめきが起きる。貴族の感覚だと、深窓の姫君が侍女をかばって怪我するなんて、前代未聞だからね。
「クリスの応急処置をしたあと、意識のないタニアをふたりで抱えて厨房から出ました。逃げ場をなくした私たちに、クリス殿下が『抜け道を使って逃げよう』と提案してくださって……」
「え? あれはリリィが……ぐはっ」
私とヴァン、両方から脇腹に一撃をいれられ、クリスは言葉をきった。
「クリス? 混乱して記憶があやふやになってるみたいね。王家の抜け道を知ってるのは、王家の誰だったかしら?」
「あ、あーそうだったな! そうそう、提案したのは私だった。王家の秘密を知ってるのは私だけだから」
しらじらしいにもほどがある大根演技だけど、突っ込まないことにする。
表向き王族ということになってるけど、クリスの育ちはクレイモアだ。本当は王家の抜け道なんて知らない。道がわかったのは、私が女神の超アイテムを使って王宮の地図を手に入れていたからだ。
とはいえ、そんなことを馬鹿正直に説明したら困るのは私たちだ。
抜け道がわかったのはクリスのおかげ! ということでゴリ押しさせてもらおう。
他に説明の仕方なんてないし。
「抜け道に設置された昇降機を使って地下に降り、通路を使って外を目指していたら突然襲い掛かられたのです」
襲い掛かられた、ときいて広間がしんと静まり返った。






