勝負の場へ
何日かぶりに訪れた王宮は、以前より少し騒がしくなっていた。
火事の後始末をするためだろう、資材を積んだ馬車や荷車が何台も大門を行ったりきたりしている。建築職人の姿も多い。
つい何か月か前、大地震にあったところだというのに、ハーティア王宮は災難続きだ。
負の連鎖を断ち切るためには、災いを引き起こす者、原因そのものを止めなくてはならない。今日の裁判はそのためのものだ。
「王宮って、こんな風になってたんですね……」
私と一緒に馬車を降りたセシリアが、物珍しそうにあたりを見回した。
「登城したこと、なかったんだっけ?」
セシリアは表向きの身分も子爵令嬢で、カトラス侯爵家の身内だ。ダリオに連れられて王宮のパーティーに出席しててもおかしくはない。
セシリアは苦笑した。
「私が社交に不向きなのは、ダリ兄もわかっていますから。カトラス家を介しても王宮に呼ばれたことはありません」
「あいかわらず、そういうところは真っ当なのよね」
見た目は濃いめ俺様イケメンなのに。妙なところで律儀な青年を思い出して、私たちは笑いあう。
「王宮に来たのは一度だけです。王立学園入学者の歓迎パーティーの時ですね」
「……あったわね、そんなイベント」
ハーティアの上流階級子女がいっせいに社交界デビューする華々しいパーティーだ。そして、私が王子から公開プロポーズされて、フランとの縁談がブチ壊しになったイベントでもある。
そうだったそうだった。
ハーティアで社交界入りする女子は歓迎パーティーに出るのが慣例だから、みんな必ず一度は王宮にあがるんだった。
黒歴史すぎて、イベントの存在そのものを記憶から抹消していたようだ。
「あ、あの、リリィ様……申し訳ありませんっ! 私が不用意なことを言ったばっかりに」
私の不機嫌を感じ取ったセシリアが、あわあわと顔を真っ青にする。
おっと、腹が立ったからって、友達を不安にさせちゃダメだろ。
私はあわてて淑女の顔を作り直すと、セシリアに笑いかけた。
「ごめんなさい。あなたが悪いわけじゃないから、謝らないで」
「でも……」
「それに、今日こそ黒歴史の諸悪の根源を追い詰められるんだもの。明日には、いい思い出に変わってるに違いないわ」
そう。
私がここに来たのは、社交界デビューと同時に王子との婚約を強制し、人の青春を不幸のどん底に突き落とした王妃と対決するためである。
王妃さえ失脚させれば、あとはどうにでもなる。
後ろ盾のなくなった王子と婚約を破棄して、フランと結婚する未来が掴めるはずだ。
「ご主人様……」
護衛兼侍女として連れてきた、フィーアがためらいがちに声をかけてきた。彼女には、ここから控えの間までの先導をお願いするつもりだったんだけど。
彼女の示すほうを見ると、キラキラした金髪の美青年がこっちに歩いてくるところだった。騎士も侍女も、建物の修繕にあたっている職人たちも、彼を見るなりさっと居住まいを正して頭を下げる。
国王唯一の子であり、第一王位継承者オリヴァーだ。
「リリアーナ嬢」
オリヴァーは柔らかく笑うと、こちらに手を差し伸べてくる。
エスコート?!
オリヴァーの!?






