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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は王妃を追及したい

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おまじない

 私は刺繍していた布をセシリアの前に広げてみせた。藍の生地に、さらにほとんど同じ藍の糸がぐるりと張り巡らされている。


「とても個性的なデザインですね。あれ……? でも、これって……」


 藍の糸を目で追うセシリアの顔がどんどん怪訝なものになっていく。


「おしゃれというよりは……魔法陣……護符のように見えるのですが?」

「正解! それは、魔力を通すと同時に、詠唱や集中抜きで保護障壁が張れる魔法陣なの!」

「えええ……」

「小夜子の国にはよくある文化みたいよ? 厄除けのまじないを、衣装デザインに取り入れるのって」


 子供が麻の葉や矢絣模様の着物を着せられるのは、縁起担ぎがルーツだ。虚弱体質な小夜子も、初めて作ってもらった浴衣は麻の葉模様だった。どうしてお花じゃないの、と親に質問して教えてもらった覚えがある。

 そこで考えついたのが、この魔法陣刺繍である。

 普段魔法陣を描くのに使っている染料で糸を染め、布地に刺す。魔力を通せばすぐに動作可能。さりげなく持ち運べる魔法陣衣装のできあがりだ。


「素敵なアイデアだと思いますけど、今のハーティア文化で受け入れられるでしょうか?」


 セシリアは遠慮がちに眉をひそめる。

 今のハーティアでは花や生き物など、自然をモチーフにした刺繍が主流だ。そこに魔法陣なんて異質なデザインを突っ込んだら、浮きまくることうけあいである。


「そこはさすがにムリだと思ったから、生地とほとんど同じ色で刺してるの。目立たない色で魔法陣だけ仕込んで、その上から魔力加工してない糸でそれっぽいデザインを重ねればわかりにくくなるでしょ」

「なるほど、隠しデザインなんですね」

「布地をつける場所も、表は避けるわ。マントとか、上着の裏地なら少し模様が入っていても、外からはわからないでしょ」

「上着なら、常に広げた状態で身に着けますから、布に皺が寄ったことで起きる誤作動も防げますね……」


 聞いているうちに、セシリアの目も輝きだす。


「表に出さない、内緒のワンポイントファッション、って言えば通ると思わない?」

「いいアイデアだと思います!」


 こくこく、とセシリアがうなずいた。


「でもこの隠れ魔法陣、ひとつだけ欠点があるのよね」

「なんですか?」

「元が紙に使うインクなせいか、魔法陣用染料が糸にうまく定着しないの。縫ってると、染料が手についちゃったりするし」


 私はセシリアの前でひらひらと手を振った。

 その指先は、ほんのり藍に染まっている。


「縫う手につくのなら、上着の下に着るシャツにも色移りするでしょうね」

「今度は服として問題になっちゃうわ。かといって、インクを薄めたら魔力の通りが悪くなるし」

「だとしたら……」


 言葉が途切れるのと同時に、すうっとセシリアの緑の目が深くなる。


「何か思いついた?」

「色落ちせず、インクの魔力伝達効率を保持する定着液なら……多分……作れる……と思います」


 セシリアは軽くこめかみに手をあてながら、首をかしげる。

 頭の中では薬品候補や計算式が高速で駆け巡っているのだろう。そう仕向けたのは自分だけど。


「実はセシリアなら作れるかも、ってちょっとアテにしてたの。定着液づくり、手伝ってくれない?」


 そう言うと、セシリアはぷっと噴き出した。


「それならお安い御用です、まかせてください。新しいアイデアを出すのは苦手ですけど、もともとあるものを改善するのは得意です!」


 持つべきものは天才少女な友人である。

 よし、これで完成のメドがたったぞー!!


「この後早速……」


 薬品づくりの相談を進めようとした時だった。

 ヴヴヴヴ……と異質なバイブレーション音がガゼボに響く。私のドレスのポケットが、小刻みに振動していた。


「誰かしら?」


 この世界でスマホに連絡をいれてくる人間は限られている。

 オーバーテクノロジーな通信機をテーブルに出すと、そこにはフランドールの名前が表示されていた。


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