死闘
ざばっ、と音をたててローゼリアは頭から水をかぶった。
「なっ……この程度!」
一瞬視界を奪われたものの、すぐに顔をぬぐって前を向く。
でも私にはその一瞬で十分だった。
地下に出現した水たまりに手をあてて、フルパワーで雷魔法を実行した。
「ぎゃあああああああっ!」
突然体に大電流を流されて、ローゼリアが絶叫する。
こわばった手から、剣が落ちた。
私はすかさずそれを通路の奥へと蹴りこんだ。
「ぐ……っ!」
電撃のショックから立ち直ったローゼリアが私を睨む。剣を追おうと背後をふりかぶり、結局私に向き直った。
毒の剣は真っ暗な通路の先だ。拾うためには闇の中を手探りで探さなくちゃいけない。
でも背中を見せたら最後、私に何されるかわかんないもんね。
追撃を用意していた私は、ローゼリアの賢明すぎる判断のせいでたたらを踏む。
「あの距離で……どうやって雷魔法を」
「ごめんなさい、手品の種は明かさない主義なの」
水の通電性を語ったところで、どうせ聞いちゃいないだろうしね。
「リリアーナ・ハルバード! 殺す! お前だけは殺す!」
武器を失ったローゼリアは、体ひとつでつかみかかってきた。
暗い通路は狭くて逃げ場がない。私は彼女に押し倒されるようにして、床に転がった。
必死に雷魔法を発動させるけど、興奮した彼女は痛みを無視してぐいぐいと首をつかんでくる。
まずい。
水魔法、フルパワー雷魔法、と魔法を連続発動させたせいで魔力が残り少ない。
どうがんばっても、出力が上がらなかった。
酸欠と、首に食いこむ指の痛みで、意識がとびそうだ。
「死ね! 死ねえええええ!」
視界がかすむ。
ローゼリアの叫びだけが妙に耳に響いた。
嫌だ。
死ねない。
私は生きるって決めたんだ。
絶対生き延びて、あの人と一緒に暮らすんだ。
だから、こんなところで、こんなやつに殺されてられない。
私は生きるんだ。
「ぐっ……うぅ……っ!」
ローゼリアの腕をつかむ。
どうにかして押し返そうとした瞬間……ごんっ! とすさまじい音がして、ローゼリアの体が崩れ落ちた。
「……ぁ?」
首を解放されて、口から吐息と一緒に声が出た。
倒れたローゼリアの体の先に見えたのは、眼鏡をかけた青い瞳の青年だった。相手が誰なのか認識する間もなく、ローゼリアの下から引っ張り出され、抱きしめられる。
彼は震える声で私の名前を呼んだ。
「リリアーナ……生きてるな?」
「ん……うん」
喉が痛くて、まだまともにしゃべれない。
こくりとうなずいたら、フランもほっと息を吐いた。
抜け道を通ってきたフランが、ローゼリアを背後から攻撃して助けてくれたらしい。どうやら。
「よかった……間に合った」
「ど、う……して。ここに?」
抜け道の入り口は、王家専用エリアにあった。フランが簡単に入ってこれるような場所じゃない。宰相家の権力を使ったとしても、到着するのが早すぎる。
「それは、俺が案内してきたからだね」
ひょこ、とフランの肩ごしに金髪の王子様が顔を出した。
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