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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は領地で暗躍する

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アニマルセラピー

「ああああああああああもう!!」


 ディッツの離れから飛び出した私は、人気のない植え込みの隅っこでじたばたとのたうち回った。


 なんだよもう! 駄目ってなんだよ!

 ろくなこと言ってないじゃん!

 しかも、死んだら殺す、ってどんな捨て台詞だよ!

 あんた馬鹿でしょって……一番馬鹿なのは私じゃんかー!!!!


「駄目しか言えないって……子供かよ」


 いやまあ、見た目は11歳の子供だけどさー!

 小夜子がいる分大人だと思ってたんだよー!

 くっそう、何も言えなかった自分が悔しい。

 人間想定外のことが目の前にあると、ろくに行動できないっていうのは、王都の襲撃事件でわかってたけど、あんなに頭が真っ白になって、何も説得できないとは思えなかったよ!!


 ひとしきり暴れたあと、私は草の上に寝転がった。

 大きく深呼吸をして、息を整える。

 冷静になろうと集中し始めたところで、フランドールの青い瞳がフラッシュバックしてきて、またちょっとイラッとしてしまう。


 ……あの目は、苦手だ。


 小夜子として、入院していたころに何度も見た目だから。

 他にどんな手立ても残されてなくて、ただ死を受け入れるしかないと知って、諦めてしまった人たちの目。

 死ぬ直前の小夜子も、同じ目をしていたと思う。

 未練を残すようなことをすれば、これからも生きていく人たちの重荷になる。

 だから、何もかも諦めて、死を受け入れることが自分自身の願いだと言い聞かせる。

 他にどうしようもないから、諦めるしかなかったけどさ。


 でも、本当の本当の本音を言わせてもらえば、私は


「生きたかったよ、やっぱり」


 同じように思ってるかもしれない相手を、このまま見殺しにすることはできない。

 世界を救うためだとか、フランドールが攻略対象だとか、そんなこととは関係なしに、助けたいと思う。


 とはいえ、そのためにはまず冷静に会話しなくちゃなんだけどさー。


「腹たてて暴れてるうちは、駄目だよねえ……」

「にゃぁ」


 なんとなくつぶやいた言葉に、返事があった。

 びっくりして体をおこすと、すぐそばに小さな猫がいた。頭の先から手足の先まで真っ黒な毛並みで、瞳だけが輝くような金色だ。


「か、かわいい……!」


 まん丸なお目目も、短いお耳も、よちよちな手足も、全部がかわいい。

 かわいいオブかわいい!

 ブラボー! 世界かわいい大会猫部門優勝!!!


 あ、でも、下手に触ったらアレルギー反応が出て、呼吸困難になるよね……ちょっと離れて見るだけにしたほうが……。

 って。

 思わず猫から距離を取ろうとした私は、そこで気が付いた。


「今の自分にアレルギーないじゃん」


 さっきまで生き死にのことを考えてたせいで、小夜子の記憶に引っ張られてたけど、今の私は超健康優良児リリアーナちゃんだった。馬に乗せられてその辺の森を探索できる自分が、猫ちゃんに近づいたところで何の問題もない。


 と、いうことは……2つの人生初、小動物をなでなでできる……?!


 見ると、黒い子猫ちゃんはまだ私を見上げてちょこんと座っている。逃げ出したりはしなさそうだ。私は、昔ネットで読み漁った猫ちゃん漫画の記憶を総動員して、子猫とのファーストコンタクトに挑戦した。


 えーと、えーと、猫ちゃんには、急に近づいていかない。

 視線を低くして、そっと人差し指を差し出す……と……。


 くんくん。


 猫ちゃんは、私の差し出した指先に、鼻を近づけてにおいを嗅いでくれた。


 ふおおおおおおおおおお!

 挨拶成功ぉぉぉぉぉ!!


 勝利のダンスを全力で踊りたいところだけど、ぐっとこらえて我慢する。

 ここでいきなり立ち上がったら、猫ちゃんは絶対逃げる。


 じっと見ていると、猫ちゃんは私の手に額をすりすりとこすりつけてきた。


 おおう、めっちゃ柔らかい! あったかい!

 かーわーいーいぃー!!


「ねえ、ちょっとなでていい?」


 通じないだろうな、と思いつつ声をかけると、猫ちゃんは体を寄せてきてくれた。恐る恐る背中に手をやると、黒くてツヤツヤの毛並みをなでることができた。


「かわいい……最高……」


 よしよし、となでると子猫は気持ちよさそうに喉を鳴らした。

 子猫、なんて癒される生き物なの。今まで暴れるくらいに不機嫌だった気持ちがどこかに飛んでっちゃったよ。

 アニマルセラピーってすごいね!!


「ありがとう、ちょっと元気出たよ」


 お礼と一緒に自然な笑顔が出た。

 よし、なんとかなりそう。

 まだ何も問題は片付いてないけど、片付ける気力は出た。この先はもうなんとかするだけだ。

 気合をいれて、立ち上がる。

 フランドールともう一度話そう。彼はまだ説得の余地があるはずだ。


「あとで、ご飯持ってきてあげるね」


 なでなでのお礼にゆでた鶏肉でも持って来よう。そう思って振り返ったときには、子猫はどこかに行ってしまっていた。


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