奇跡の子
私は医療魔法使いでもある従者の言葉を思い返す。
「寝てるだけで、健康上の問題はないみたい。血色もいいし、呼吸も安定してるって。脱水で肌がカサカサになることも、寝たきりで筋肉が衰えることもないそうよ」
長く寝返りを打たないことでできる褥瘡も、一切できる気配がないそうだ。
なんてうらやましい。
「ええ……?」
「寝ている間は、飲まず食わずのはずだよな?」
トンデモ話に慣れてきたシュゼットも、さすがに困惑顔だ。クリスは首をひねる。
「東の賢者、ディッツの見立てによるとセシリアの持つ膨大な魔力が、生きるために必要な要素……この場合は、水分とか栄養素ね、これらを周囲から集めて体に循環させてるんだって」
「魔力ってすごいんだなあ」
戦闘は物理派の姫君がふむふむとうなずいている。横でシュゼットが額に手を当てた。
「すごいどころの話じゃありませんわ。私も王女として、魔法はひととおり学びましたけど、いくら魔力があるからって、何日も寝たままでいられる術なんて聞いたこともありませんもの」
「セシリアには可能なのよ」
私はセシリアが奇跡を起こすことに驚かない。
「あの子は特別だから」
血統の意味でも、役割の意味でも。
彼女は世界の命運を握る鍵だ。
きっと運命の女神が彼女を見放すことはない。
「生きてるぶんには一安心、と言いたいところだけど……目を覚まさないのはやっぱり心配ね」
倒れる直前、セシリアには強いストレスがかかっていた。
女神のダンジョン内で邪神に絡まれ続け、脱出したと思ったら翌朝には王都が燃えていた。実は王女、という素性を暴露され、王族としての責任をつきつけられた直後に、あの光景を見るのはキツい。
私たちがそばにいる、と励ましたくても相手は夢の中だ。
眠ったままでは何の手助けもしてあげられない。
「王都がもう少し落ち着いたら、一度屋敷に帰って直接セシリアの容態を見てこようと思う。それまでは引き続き、ディッツに看病させるわ」
「そうする他、ないか」
「問題はそれがいつかってことよね」
「復興のめどは、まだ立ちそうにありませんか」
シュゼットは窓の外を見た。
堀と塀に囲まれている離宮からでは、その先の市街地の様子を見通すことはできない。
時々スマホごしに伝えられる情報によると、がれきの撤去や避難場所の整備は進んでるみたいだけど、完全復活には程遠いようだ。さらに、東西同時防衛に、魔物の出現。事態は良くなってない。なんとか悪くなる前で踏みとどまってるだけだ。
「ごめんね。今日みたいなことになる前に、どうにかしたかったんだけど」
「あなたが謝る必要はありませんわ。悪いのはユラですもの」
話していると、ちょうどタニアがやってきて来客を告げた。
私たちはそろって立ち上がる。
「危機的状況で外国人留学生を留めおくことはできない。大人の判断はおおむね正しいと思います」
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