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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は王宮で過ごしたい

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ナイトコール

「ああああ~久しぶりのベッド~!」


 私はぼすっと顔からベッドにダイブした。

 ライラが布団を持ち込んで、タニアが整えたベッドはこれ以上ないくらいふかふかだった。シーツの手触りがいいし、いいにおいがする。

 呼吸するだけで毒に侵されそうだった王妃の客間とは雲泥の差だ。


「しかも全員ひとり部屋……天国すぎる」


 部屋の中にシュゼットたちの姿はなかった。人の多い場所で寝泊りして疲れたでしょう、とタニアがそれぞれの部屋を用意してくれたのだ。信頼できる仲間が警備している場所なら、三人ひと塊でいる必要はない。私たちは久しぶりに個人の自由時間を堪能していた。


「タニアさんのごはんもおいしかったし……はあ……やっとリラックスできるうぅぅ……」


 もうこのまま寝てしまおうか。

 今日はこれ以上何もできる気がしないし。

 そう思っていると、わずかな振動が伝わってきた。顔をあげると、枕元に放り出したスマホがヴー……と震えている。


「今ごろ着信? 誰からだろ」


 画面を見たら、フランの名前が表示されていた。

 私はあわてて通話ボタンを押す。


「はい、もしもし?」

『……俺だ。今話して平気か?』

「うん。ちょうどそれぞれ部屋に引きあげた後だから」


 男性のフランとジェイドは、夕食をとった後すぐに離宮から出て行っていた。女ばかりの宮殿に、未婚の男が残るのは外聞が悪い、という判断らしい。

 もうちょっと一緒にいられると思ったのに、残念。


「何かあった?」


 スマホに映し出されたフランの背景は、どこかの個室のようだった。

 ふたりも今日は王宮のどこかに泊まると言っていた。客間で何か問題でも起きたんだろうか?


『いや、何もない』


 しかし、青年は軽く首を振った。


『強いて言うなら、そうだな……通話機能を使いたかったから、だな』

「何それ。ただ呼んだだけーみたいな通話」

『ダメか?』

「いやだってそんな意味のな……」


 画面越しのフランが、少し残念そうな顔になったのを見て、私はやっと彼の意図を悟った。


「ない、ことはないね……」


 恋人の声が聴きたい、なんてこの世で一番大事な用じゃないか!

 つまりこれはアレですか!

 お休みコールってやつですか!

 前世の自分が甘いイベントに縁がなかったせいで、気づくのが遅れちゃったよ!


「声が聴けて……うれしい……デス」

『俺もだ』


 美しい青年の表情がふっとやわらぐ。

 私の好きな顔だ。


「あ……あのね、フラン。さっきは助けに来てくれて、ありがとう。王様から許可をもらってくるなんて、大変だったでしょ」

『この程度、どうということもない』


 嘘だ。

 私が見ていない間、必死に走り回っていたに違いない。


『お前を守れたのなら、それで』


 甘い言葉を聞くたび胸が苦しくなる。

 この青年はもともと、常識的な羞恥心を持っていた。むしろ恋愛感情を表に出さない、恥ずかしがりやの部類に入っていたと思う。

 こんな風に、あからさまに好意を口にするようになったのは、私が王子様と婚約してからだ。

 正式な婚約者がありながら、想いを通わせる私たちは、世間一般でいえば不貞を働いている状態だ。

 どんなに愛し合っていたところで、神の前で将来を誓うことも、互いを縛る契約を結ぶこともできない。

 私たちの間にあるのは、いつか一緒に暮らそうっていう口約束だけだ。

 人目のある場所では、知人以上の距離に立つことさえできない私たちの間柄は、ひどく脆い。ただ愛という薄氷の上に成り立っている関係だ。

 このつながりは、お互いの気持ちを疑った瞬間、きっと壊れてしまう。

 だから彼はことさらに愛を口にするのだ。

 私が疑わないように。

 不安で壊れてしまわないように。


(結局、優しいんだよね、フランは)


 真面目だった青年は、私のためにどこまでも変質していく。彼の愛情に報いるために、私にできることはひとつだ。


「来てくれて、うれしかった。大好きだよフラン」


 私もまた、恋人に愛情を返す。

 彼が揺らがないように。

 張りつめた心が壊れないように。


『……ああ、悪くないなこれは』


 それを聞いて、フランが不自然な笑みをうかべた。


書籍⑤巻発売まであと3日!

詳しい情報は活動報告とXにて!

@takaba_batake



読んでくださってありがとうございます!

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