ネコミミアサシンメイド
「はい、どなた?」
「失礼します」
ノックに返事すると、女官がひとり入ってきた。お仕着せのエプロンドレスを着ているから、ローゼリアより立場が下の一般女官だろう。
彼女は部屋の中を見回して、ちょっと驚いた顔になった。
「何か?」
「い、いえ! 何でもありません! さきほどは失礼いたしました。その……いつまでも脱衣所にいてはお寒いでしょう。お部屋に移動されてはいかがでしょうか」
どうやら、案内係として差し向けられたらしい。
確かに、こんなところで毒に囲まれていてもしょうがない。
シュゼットとクリス、そして女官の視線が私に集まる。その場の判断をゆだねられた私はこくりとうなずいた。
「わかったわ、案内してちょうだい」
「はい、こちらになります」
女官の後を追って、私たちは廊下を歩きだした。しずしずと美しい脚運びで歩く女官の背中に声をかける。
「私の侍女にもお風呂を使わせていたはずだけど、今どうしてるの?」
「そ、それは……! あの、機材へのユーザ登録に手間取っておりまして」
「手際が悪いわね」
「……申し訳のほども、ありません」
少し意地悪してみたら、ぴんと伸びていた女官の背筋がみるみる丸くなっていってしまった。
ちょっといじめすぎたかもしれない。
女官に聞こえないよう、こそっとシュゼットが話しかけてくる。
「リリィ? フィーアは大丈夫ですの?」
「女官たちのところから逃げ出したみたい」
「逃げ……?!」
「さっき女官が部屋に入ってきたときに変な顔をしてたでしょ。姿が見えないから私たちのところだろうと思って来たのに、脱衣所にもいなかったから驚いてたのよ」
ローゼリアたちを追い出す直前、私は『私の侍女を返して!』と主張していた。
侯爵令嬢の侍女を見失っておいて、そのまま報告するわけにもいかず、とっさに『ユーザ登録に時間がかかっている』と言い訳したようだ。
「それはそれで心配じゃありません……?」
「むしろ、安心したわ。あの子はひとりで行動してる時が一番強いの」
フィーアは護衛だけど、スキルセットは隠密特化型のネコミミアサシンメイドだ。単独で逃げ隠れしてこそ本領が発揮される。王宮の女官程度では彼女を見つけられないだろう。
今頃必死にフィーアを探し回っている女官たちには悪いけど、この状況でジョーカーが一枚増えるのは正直助かる。
しかし、ちょっと浮上した気分は、案内された部屋を見てふたたび急降下した。
「こちら、王宮で一番美しい『緑の間』にございます」
「うぇ……」
ベッドもソファもカーペットも、ついでに壁紙まで緑の部屋ってどうなのかなあ?!
緑が鮮やかすぎて目に痛いよ!
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