最終目標
「叔母様は……何を考えているのかしら」
毒だらけの小物を見つめながら、つぶやいた。クリスは不思議そうに首をかしげる
「毒だし、私たちを殺したいんじゃないのか」
「それだけではない気がするのです。リリィも言ってたじゃありませんの。ここで起きたことは、すべて叔母様のせいになると。今ここで私たちが死んだら、叔母様は確実に責任をとらされますわ」
祖国に会いたい人がいる王妃は、己の命に固執している。自分が処罰される危険は冒さないだろう。どんなに悪意ある陰謀であっても、逃げ道を確保したうえで実行する。そんな彼女が直接殺しに来るのは不自然だ。
「目的は別にある? ……でも、毒は毒だし」
害意があるのはわかる。
でもその結果、彼女は何を成し遂げたいのだろうか。
考えろ。
王妃は頭のいい女性だ。
思いつきで行動したりしない。
その裏には必ず論理的な思考が存在する。
「多分……彼女の望みは、この場での殺害じゃない」
しばらく考えて出した私の結論に、シュゼットが顔をあげた。
「理由は?」
「即効性がない。この場にある毒はすべて、常用することでじわじわ体をむしばんでいくタイプだわ」
だからこそ、規制されず市場に出回ってるんだけど。
「なるほど。では、私たちが何も気づかずドレスを着て接待を受けたとして……その後どうなると思います?」
「少しずつ体調不良を訴えるようになるだろうね。でも、災害で疲れ切ってるから、ただの病気か、王妃の接待のせいなのか、区別がつかない」
「じわじわ弱らせてから、殺す?」
話を聞いていたクリスの出した結論を、私は首を振って否定する。
「それも違う気がする」
「……むう。それにも理由があるんだろうな?」
「もちろんよ。出発する前に宰相閣下が言ってたじゃない、マリィお姉さまが新しい女官と住居を用意してるって。微毒でじわじわ殺すには時間が足りないの」
宰相家は私たちを放置しない。それは王妃だってわかってるはずだ。
「回りくどい……! 殺したいならいっそ目の前で斬りつけてくれば楽なのに!」
「それやったら、自分の身が危うくなるからねー。王妃としては自分の管理下にないところで、ひっそり死んでくれるのが一番なんじゃない」
「……そうですわ、それですわよ!」
シュゼットが突然声をあげた。
いつもおしとやかな彼女らしくない言動に、私もクリスも目を丸くしてしまう。
「な、なにごと?」
「それですわよ! 叔母様は、自分の責任の外で私に死んでほしいのですわ」
「ごめん、私もちょっと何がなんだか」
「リリィが言ったんじゃありませんの。数日後には移動が決まっていると。そこが大事なのですわ!」
王妃の手から逃げ出すことが大事とは、これいかに。
だめだ、まだよくわかんない。
「いいです? もし、叔母様の手を離れたあと、宰相閣下のもとに移動した直後に私が毒の症状で死んだら、みなさんどう思われますか?」
「宰相が殺したと思うわね……」
私はドレスと化粧品を見る。
これらはレンタル品じゃない。
日用品を丸ごと失ったかわいそうな少女のために、用意されたプレゼントだ。もし悪意にも毒にも気づいてなければ、移動先でも使い続けただろう
その先でシュゼットが中毒死したとして。
まず犯人として注目されるのは死亡時の管理責任者。つまりマリィお姉さまと宰相閣下だ。
「キラウェアの末姫が、留学中のハーティアで宰相に殺された。そうなったら、叔母様はお父様……国王陛下に嬉々として進言するでしょうね。『娘を殺したハーティアに正義の鉄槌を!』と」
シュゼットの父親は先代国王と違って穏健派だと聞いている。実際、ハーティアから技術提供が始まって以降は、外交に力を入れているから、利のない戦争は仕掛けない主義なのだろう。
しかし、彼はゲーム内の歴史でハーティアに攻め込んでいた。おそらく利があれば戦争をしかけるタイプなのだ。
そんな人物が娘を殺されて黙っているとは思えない。
大規模地震で不安定になっているハーティアに、怒りに燃えるキラウェア軍が攻め込んできたらどうなるか。考えるだけでも恐ろしい。
「ますます、のんびりしてられないわね」
王妃の目的は間接的な殺人だ。
早々にフィーアと合流して逃げ出さなくては。
逃げ道を探して、部屋を見回していると、脱衣所のドアがノックされた。
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