悪意まみれ
「姫様方、リラックスできましたでしょうか」
お風呂から上がってくると、侍女たちが大きなタオルを持って待ち構えていた。その中心には相変わらずローゼリアがいる。
彼女は笑顔で私たちにドレスを差し出してきた。
「皆様とても仲がよろしいので、お揃いのドレスにしてみましたの」
「まあ……なんてきれいな緑」
体を拭かれながら、シュゼットが思わず目を見開く。
そう思うのも無理はない。ドレスはどれも、新緑を思わせる明るい緑に染められていたからだ。
現代日本ほど染色技術が発達していないこの世界で、明るい色を鮮やかに表現することは難しい。こんなにキレイな緑を出すのは至難の業だろう。
三つ子コーデ風に並べられた三枚のドレスは、どれも上質な絹地と、幾重にも重なるレースで彩られている。これらが最高級品であることは疑いようもなかった。
「素敵でしょう? きっと、シュゼット様のブロンズ色の髪と青緑の瞳によく合いますわ」
「クリスティーヌ様の銀の御髪と紫の瞳も映えると思います」
「リリアーナ様の黒髪には……その、意外性があってよいと思いますわ……ほほほ」
姫君たちを口々に褒めたたえていた女官たちは、最後のひとりを見て言葉を濁した。
自分にパステルカラーが似合わないのはわかってるよ!
王宮勤めの女官なら、うまくごまかすくらいの語彙は持ってて!
だけど、私の顔が引きつってる理由はそこじゃない。
ドレスの緑に見覚えがあったからだ。
(よりにもよって、コレを持ってくる?)
あまりの状況に言葉が出ない。
私が黙っていると、ローゼリアたちはさらに小さな容器をテーブルに並べ始めた。
「お化粧品も、王都で人気の最高級品をご用意しました。花の香りの美顔水に、クリーム。それから、こちらが白粉になります」
ぱかりと蓋をあけたそのケースには、少女に似合いそうな優しい色合いの真っ白な粉が詰まっている。その美しい粉にも見覚えがあった。
「口紅はこちらを」
手の先に乗るほどの小さな容器が示される。
中には明るい朱色の軟膏のようなものが入っていた。
「緑のドレスには、少し黄みが勝った赤が合いますわ」
ローゼリアは翡翠の瞳を細めてにっこり笑う。
「……!」
王妃の思惑は、殺意だ。
嫌がらせとか、陰謀とか、計略とか、そんなちゃちなものじゃない。
ストレートに、私たちに殺害の意志を向けている。
彼女たちの接待をそのまま受けたらダメだ。
全部拒否しなくちゃ命にかかわる。
私は深呼吸して息を整えると、腹の底から声を出した。
「ばっ……かじゃないの?!」
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