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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は王宮で過ごしたい

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手札の多いご令嬢たち

「父上」


 フランの低い声が会議室に響いた。

 宰相閣下はほとほと困り果てた、という風情で片手を額に当てる。


『言うな。お前の言いたいことはわかっている。これは悪手だ』


 ですよねー。

 この部屋にいる全員の政敵、王妃様が保護者ってどういうことなの。


『ただ、行政官も騎士も総出で災害対応に当たっているなか、他国の王女を接待できるほどの知識と力を持ち、かつ動けるだけの余裕のある人物となると王妃しかいないのだ』

「行政改革が進んだ現在、王宮の女官以外にあの方が干渉できる部署はありませんからね」


 つまり王宮で唯一暇なヒト、ということなのか。


『逆に王宮の女の仕事はいまだ王妃の手の内にある、とも言える』


 宰相閣下は苦い息を吐く。


『忙しく働いている殿方に代わり姪をお守りさせてください、と申し出られてどれだけ腹がたったか……』


 王妃お得意の、親切提案にみせかけた罠だ。

 あの悪意の化身のような女性が、このチャンスに何も企まないわけがない。


『本来なら、全員学園にとどめておきたいところなのだ』

「でも、肝心の女子寮が壊滅していますからね」


 私の言葉に、宰相閣下はうなずく。


『個室もベッドもないところに居させるわけにはいかない。かといって無事な王宮を差し置いて貴族家に招くわけにもいかない』

「ひ、避難所生活には慣れましたわ。あと少しくらいなら……」

「無理だ、シュゼット」


 学園にとどまろうとするシュゼットを、クリスが否定した。


「昨日に比べて、すごく顔色が悪い。ほとんど眠れなかったんだろう。君がこれ以上教室で寝るのに耐えられるとは思えない」

「う……」

「それにシュゼットが耐えたとしても、他の子たちが耐えられるかどうか」

「ほかの……子、ですか?」


 自分以外の話を持ち出されて、シュゼットはきょとんとした顔になった。


「私たちは姫君と高位貴族なの。キラウェアの留学生も含めて、下の家の子たちは私たちが避難しないことには、おいそれと王宮で保護してもらえないわ」


 これはこれで身分制度の難しいところである。

 私たちは上の者として、下位貴族女子の避難先を作ってあげなくちゃいけない。後始末に回っているヴァンたちとは別の、私たちの責任だ。


「でも……王宮で私たちの世話をするのは、叔母様なんですのよね」


 箱入り娘に避難生活は難しい、かといって王宮に行けば王妃の悪意が待ち受けている。

 まさに行くも地獄、戻るも地獄の状況だ。


『そこで、クリスティーヌ様とリリアーナ嬢だ』

「私たち?」


 いきなり名前を出されて、私とクリスはお互いに顔を見合わせてしまった。


『本来はクリスティーヌ姫様は輿入れ先のクレイモア家、リリアーナ嬢は実家のハルバード家にお連れするのが妥当だ。しかし、ふたりを保護対象にすればシュゼット姫とともに王宮で過ごさせることができる』

「それは、危険にさらされる令嬢が増えるだけではないのですか……?」


 シュゼットが困惑顔になるのを見て、宰相閣下は苦笑した。


『そのふたりは、普通の『ご令嬢』ではありませんので』

「あ。え、ええ、そうでしたわね」


 シュゼットが私たちを見る。クリスのかたわらには、使い込まれた無骨な剣があり、私の後ろには天才魔法使いジェイドと、最強護衛フィーアが控えている。

 とりつくろわず、この子らトンデモ令嬢だったわーって言っていいのよ?


『今までと同じように、フランをシュゼット姫の世話役としておつけしますが、王宮の奥向きは王妃が管理する女の園です。男では介入できない問題が起きる可能性が……いや、必ず起きる』


 敵を自分のテリトリーに引っ張り込み、罠にかける。腹黒な王妃たちの得意とする戦法だ。去年の王立学園では、王妃派女子アイリスとゾフィーが同じような手口をよく使っていた。


「私たちはシュゼットの護衛というわけだな。いいだろう、任された」


 クリスはスマホに笑顔を向ける。こういうときの彼女は頼もしい。


「私もシュゼットを守ります。腕力はないけど、罠に対抗する手札が多いもの」

『おふたりとも、助かります』


 画面越しに宰相閣下が頭を下げる。

 彼ほどの地位の大人が小娘に謝るってことはよっぽどの状況なんだろう。ここは腹をくくって引き受けるしかなさそうだ。


『現在、マリアンヌに指示して、王妃に影響されない女官と住居を用意させています。しかし、どんなに急いでも手配に数日かかります。その間だけ、なんとか持ちこたえてください』


 マリィお姉さまが動いているのなら、手配のメドはたっているのだろう。

 あてもなくただ我慢するだけでは、すぐに心が折れてしまう。しかし、期限があるのなら、いくらでも持ちこたえようがある。


「大丈夫、私たちに任せて」


 私とクリスは不安そうなシュゼットに笑いかけた。

 あの大地震を耐えたんだ、王妃の罠だって乗り越えて生き残ってやろうじゃないの。


読んでくださってありがとうございます!

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