寮母は心配性
「リリアーナ、クリス! おかえりなさい!」
避難所に戻ってくると、頭に包帯を巻いたままのミセス・メイプルが出迎えてくれた。福々しいぷくぷくの手で、ふたりまとめてぎゅうっと抱きしめてくれる。
「門前で何かあったと聞いて、もう心配で心配で……」
「避難民の一部が騒いでいただけです。他の避難所に移動したので、もう大丈夫ですよ」
「そう……よかった。あなたたちに怪我はないのね」
「ああ、全員かすり傷ひとつないよ」
クリスがにこりとほほ笑みかけると、やっと安心したのか、ミセス・メイプルがほっと手をはなした。
「あまり無茶をしてはダメよ、あなたたちは女の子なのですから」
「はは……」
私はあいまいに笑い返した。
無茶しないでいたいのはやまやまだけど、女子だからと奥にひっこんでいたところで勝手に問題が解決するわけじゃないからなー。また言いつけを破って叱られる未来しか見えない。
「あなたたちと一緒にいた男の子たちは?」
「ヴァンとケヴィンと、それからフランは騎士科の詰め所に行きました。また難民を装った火事場泥棒が来るかもしれないから、歩哨を強化するそうです」
「避難と怪我人の手当てだけでも忙しいのに……大変ね」
ミセス・メイプルはほう、とため息をつく。
子供を預かる寮母としては生徒全員が心配なんだろう。
「女子寮の生徒たちは今どうしてますか? 体調を崩している子はいませんか」
「ええ、あの子たちなら……」
彼女が説明しようとした時だった。
「ミセス・メイプル」
見慣れたちょい悪イケメン魔法使いが声をかけてきた。彼もまた弟子同様、医療関係者であることを示す白いマントを羽織っている。
そういえば、彼も怪我人の治療にあたっていたんだった。
ディッツは私たちの姿を認めて、いつものようにへらりと笑う。
「お嬢たちも一緒か、ちょうどいい。全員に報告だ」
「怪我人の状況ね」
「救護室に担ぎ込まれた女子生徒のうち、打ち身だとか擦り傷だとか、軽いけがの生徒は手当が終わった。貧血を起こして倒れた生徒も何人かいたが、そいつらも目を覚ましてきてる。薬を飲ませたから、全員落ち着き次第他の生徒に合流できるだろう」
「それはいい知らせだ」
クリスもほっとした顔になった。
「寮がつぶれる前に、全員避難してるからな。大怪我した奴はいない。ただ……」
そこで、ディッツはぽりぽりと無精ひげの生えたあごをかいた。
「セシリアがちょっと良くねえな。あいつだけはいつまでも意識が戻らない。呼吸も脈拍も安定しているから、すぐにどうこうってことはないだろうが」
「まあ……」
ミセス・メイプルが心配そうに口に手をあてる。人一倍気弱な彼女のことは、寮母も常々気にかけていたからだ。
「セシリアは無理に女子寮に戻さず、ディッツが診ててくれないかしら。彼女はただびっくりして倒れたってだけじゃなさそうだから」
「わかった。ミセス・メイプルもそれでいいか?」
「ええ。お願いします」
医者に生徒を託し、寮母は丁寧にお辞儀した。こういう対応は慣れていないのか、ディッツは居心地悪そうに苦笑する。
「男子生徒の被害状況はどうなの?」
「こっちはそこそこ怪我人が出てるな」
ディッツはまたあごをさすりながら、顔をしかめた。
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