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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は領地で暗躍する

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素朴な疑問

「えっと……これがドクダミで……こっちは何だっけ」

「カタバミ、だよ」

「それも、薬の材料になるんだったよね。よし、摘んでいこう!」


 私とジェイドはお互いに相談し合いながら薬草の採取をした。魔法使いの薬というと、トカゲのしっぽとか、ヤモリの黒焼き、みたいなイメージがあるけど、ディッツが扱うのは普通の草ばっかりだ。その中には、現代日本で漢方薬として知られていた植物もたくさん含まれている。


「不思議な草でキラキラさせるのとかを期待してたんだけどなー」

「そういうのはもっと先だ。薬師の修行は3段階あってな。薬草で普通の薬を作るのが一番目、魔力を使って薬効を強めたり、特定の成分だけを抜き出すのが二番目、魔法と組み合わせて薬草の成分だけじゃ実現できない効果を作り出すのが三番目。全工程をマスターしているのが俺で、ジェイドが2番と3番の間、お嬢は最初の段階の入り口に来たとこ、って感じだな」

「うう……先は長そう」


 でも、現代日本の薬剤師だって大学で何年も修行してから新薬開発に関わることを考えると、ディッツの言い分は十分真っ当な話だ。いきなり変な薬を作らせないだけ、彼は誠実な教師なんだろう。


「まあがんばれ。知識さえちゃんと積み重ねれば、変身薬とまではいかなくても、効き目のいい薬くらいは作れるようになるからよ」

「はーい」


 私は素直に返事をして、薬草をちぎる。何事もコツコツ積み上げるのがお勉強だ。


「ねえ、ディッツの話を聞いてて思ったんだけど……その理屈でいくと、最高級の魔法薬以外は、普通に薬の成分だけで病気を治してるの? 治癒の魔法じゃなくて」

「人体に直接影響を与える魔法は、複雑で面倒だからな。修行を積んでない奴の下手な治癒術よりは、出来のいい薬のほうがよっぽど効果的だ」

「……そうなんだ?」

「んー、このあたり、感覚的にわかんねえか?」

「わかんない」


 ぷるぷる、と首を振ると、ディッツは無精ひげの生えたあごをかいた。


「そういえばお嬢は魔力感知系が苦手だったか。えーと、人間の体の周りには、卵の殻のように魔力の殻があるのは、もうわかってるよな?」

「……なんかそんな話だったわね」

「そこは覚えておけよ。まあ、生き物はだいたい何でも魔力の殻に守られている。だから、直接魔力をぶつけたところで、そう簡単に体が壊れるようなことはない」

「そういえば、属性魔法も魔力をそのままぶつけるというよりは、魔力で起こした現象をぶつけてるような感じね。火魔法で炙って熱で火傷させるとか」

「そう。だから、素人が喧嘩するなら魔法を使うより殴ったほうが早い。治癒はその逆だな。殻ごしに魔力を注ぎ込むようなもんだから、訓練不足な奴が治療すると、ただの薬より効率が悪くなる」

「ふむ……魔力より物理現象、化学反応のほうが、直接体に影響するのね」

「で、でも、魔法と薬がうまく組み合わさった時の効果はすごいんだよ!」

「それは実際にディッツが変身するのを見たからわかるわ」


 あれはただの薬効では実現しない。私はうんうん、と頷いた。


「いやー、やっと謎がとけてスッキリしたわ。風とか水とかを操れるなら、脳の血管に空気いれたり、ちょっと血液の水分濃度上げたら、人なんて簡単に暗殺できるよなー、って思ってたから」


 ちょっとダークめの異能バトルなら、時々見かける展開だ。

 物を動かせる程度の異能があるなら、殺人に大きな力は必要ない。重要器官をちょっといじれば済む話だ。魔法の利用が一般化しているこの世界で、大量殺戮が起きないのは、魔法を受ける側にも免疫があるから、らしい。


 うんうん、と納得していると、いつの間にかディッツとジェイドが青い顔で顔をひきつらせていた。


「何よ、ふたりとも」

「あ、あああ、あの、お嬢様……」

「お嬢、その話、絶対にヨソでやるなよ。嫁の貰い手どころか、令嬢生命も終わるからな?」

「えー、そんなに危険思想?!」


 ちょっとした素朴な疑問じゃーん!


「ふざけるな!!!」


「……え?」


 突然、思いもよらない方向から、ツッコミの声が聞こえて私はぎくりと体をこわばらせた。


「ジェイド、索敵」

「……あっち」


 師弟コンビは息の合ったやりとりで状況を把握する。ジェイドの指さす方向を見ると、崖の上に何人分かの人影が見えた。





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