断固拒否
「お、王子っ!」
門の内側にいた騎士科生徒たちが、フランに投げられた王子を慌てて受け止めた。とっさの状況とはいえ、フランも一応生徒が反応できる場所に落としてたんだろう。彼は怪我もなく地面におろされる。
無事を確認して、もう一度門の上を見るとフランが避難民たちを見据えるところだった。
「静まれ」
ただの一言。
しかし、その強い言葉に圧倒されて、しんとあたりが静まり返る。
「ここからは、王子にかわって俺が対応する」
「あ、あんたが? 何者なんだ」
「ミセリコルデ宰相家子息、フランドールだ」
「……宰相家の」
王族ではないものの、勇士七家に連なる者と聞いて避難民たちはさらに怯んだ。いや、数名反発する者が残っていた。
「門を開けないってのはどういうことだ! やっぱりあんたも火事にあった市民を助けないっていうんだな?」
「いいや」
フランは冷静に否定した。
「だったらなんで……」
「そもそも、お前たちは何を勘違いしている?」
「か、勘違い?」
「そこに掲げられている看板の通り、ここは『王立学園』。優秀な貴族の子供たちを教育するための機関だ。市民の保護施設ではない」
そうなんだよね。
現代日本だと、当たり前のように避難場所に指定されている学校だけど、こっちじゃ学校の扱いそのものが違う。災害が起きたからって市民を収容する機能も支援する機能もない。
「王立学園に所属する大人たちは、まず第一に学園内の子供たちを保護する責を負う。学園は、彼らの身を守るため、部外者の立ち入りを拒否する」
「貴族の子供と庶民の子供は違うっていうのか?」
「ああ。学園は在学生とその他を明確に区別する」
断言、だった。
きっぱり言い切られて、相手も一瞬絶句する。
「だ、だったら、私の子はどうすればいいんですか。火に追われてここまで逃げてきて……もう歩くこともできません」
「貴族じゃないからって見殺しにするのか!」
「そうは言ってない」
すうっとフランは腕を上げた。
壁の外の一方向を指し示す。
「南にミセリコルデ家が設営した臨時避難所がある。そこまで行けば、安全な寝床が用意されているはずだ。食料も衣類もたっぷりある」
保護先があると聞いて、市民たちの反応が変わった。
「……なんだ、ちゃんと避難所があるんじゃないか」
「だったらそっちに行けば……」
「ま、待ってくれ!」
「何だ?」
「南に避難所があるっていっても、ここからまた移動しなくちゃいけなんだろ? 命からがら逃げてきて、怪我した奴も多いんだ。せめて中で少し休ませてくれないか?」
「駄目だ」
フランは折れない。断固拒否である。
「動けないというなら、そのあたりで座っていろ。水くらいは差しいれてやる」
「はぁ?」
「避難所の設営が完了したら、ミセリコルデの騎士が学園まで見回りに来る手筈になっている。避難民を収容するための荷馬車つきでな。動けない者は彼らが運ぶ」
「だけどもう、クタクタで……」
「先ほどから気になっていたんだが」
じろり、とフランが避難民たちを睨みつけた。
「災害から逃げてきたにしては、ずいぶんと元気な者がいるようだ。お前たちは門を開けろと何度も主張しているが、何が目的だ?」
「いや……それは、助けてもらいたくて」
「だったら、外の避難所を頼れ。必要な救済措置は全て用意されている」
「だけど」
「それとも何か? どうしても王立学園内に入らなければならない理由でもあるのか」
フランの言葉に、避難民たちはふたたびしんと沈黙する。
「もう一度言うぞ。王立学園は、部外者の立ち入りを禁ずる。もし、この言葉に反して学園に入り込もうとした場合は、それが何者であっても侵入者として排除する!」
びりびりとフランの声が響く。
避難民のみならず、その場にいた騎士科生徒たちも身をすくませた。
「行け! 避難所はお前たち全員を受け入れる!」
「は、はいっ!」
壁ごしに、人々が動く気配が伝わってきた。フランの指示に従って、臨時避難所に向かうのだろう。私たちは、ほっと安堵のため息をもらした。
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