大人たちの思惑
「王家の血がすり替えられている。この事実がわかったとして、今発表したら何が起きると思う?」
「置物王と腹黒王妃が追放されて、めでたしめでたし……ってわけにはいかないんだろうなあ」
「その通りだ」
フランが静かに肯定する。
「すり替え直後ならともかく、俺たち貴族はすでに何十年も置物国王を主君としてまつりあげてきた。いきなり偽物だったと言われても、はいそうですかと受け入れられる者は少数派だろう」
「役立たずだなんだと言いながらでも、貴族は結局王家を中心につながりあってるからなあ」
「遺伝子検査ができる超古代技術があるからいいものの、他の王室だったらアウトだったわね」
なにしろ先代国王もセシリアの父親もすでに死んでしまっている。当時の記録も焼かれているから、DNA以外の証拠はゼロだ。セシリアが血統を主張しても鼻で笑われて無視されるのがオチだろう。
「この問題の最も穏便な解決方法として、俺たちが目をつけたのがセシリアの婚姻だ」
「あ」
婚姻、と聞いてヴァンは、はっと顔をあげた。
「まさか……俺とクリスがやったことを、王子とセシリアにもやらせようとしてたのか?」
「逆だ。王子とセシリアを使って継承の歪みを隠蔽しようと計画していたから、お前たちが現れたときに、入れ替わりを提案できたんだ」
「ハ、いきなりとんでもないことを言い出すと思ってたら、しっかり前知識があったわけだ」
「女神の攻略本でも、その可能性は示されてたわ」
私はもう一度本を開く。王子ルートのページには、王室の存続方法が書かれていた。
「本来、オリヴァー王子が王位を継承する時に血統の嘘がバレる。でも王子とセシリアが結婚すれば話は別よ。継承の儀で王子がセシリアの血を捧げて、ふたりの間で子供を産めば、すり替えの事実を隠したまま血を繋いでいけるの」
「王宮の混乱を考えたら、それが一番平和か……」
逆に、私が王子と絶対結婚したくない理由はここにある。血統に嘘のある王子は、聖女と結婚しない限り、その地位を追われることが確定している。愛があれば一緒に失脚しても……という話もあるかもしれないけど、私はそこまで王子に思い入れはない。沈むとわかってる泥船にわざわざ乗り込みたいとは思わなかった。
「実際俺と父は去年までその方向で動いていた。宰相家がカトラスを支援したのはセシリアを保護させる意図もあったんだ」
フランは悩まし気なため息をつく。
「元が没落寸前の貧乏子爵家令嬢でも、カトラス侯爵家の後ろ盾があるなら王妃候補として推せる」
カトラスゆかりの優秀なお嬢様として王立学園に入学させ、そこで王子と関係を持たせるつもりだったらしい。ロマンスのシナリオとしては悪くない。
「問題は、セシリアが『恋する乙女心』を根源とする本物の聖女だってことよね」
「まさかオリヴァーが、聖女に一切興味を持たれないレベルのボンクラだとは……」
ぎぎぎ、とフランの眉間にそれはもう深い皺が寄る。
自分の結婚を邪魔されたあげくに、聖女まで取り逃がしてるんじゃなあ。王子に対する評価がダダ下がりになってもしょうがない。
「女神のゲームだと攻略対象、つまり恋に落ちる可能性が高い人物だったんだけどね」
実際、ゲーム内では周りのことをよく見ている、心優しい王子様だったんだけど。何がどうしてこうなった。いや、王妃が変に王子に構ってマザコンにしちゃったのが悪いのか。
「お前ら何言ってるんだ? 国の安定がかかってるんだから、恋だなんだって言ってないで、無理にでも結婚させればいいだろ」
貴族らしい価値観を持つヴァンが不思議そうな顔になる。そうもいかないのが、運命の女神の見守る世界の恐ろしいところだ。
「聖女の『恋する乙女心』っていうのは、誇張でも何でもないのよ。彼女が自然発生的に好意を持った時にしか、能力は開花しないの。政略結婚を強制したら、その時点で力が消えて、世界が滅ぶわ」
「女ひとりの気持ちが存亡を左右する世界って何なんだよ?!」
そのツッコミは正しいんだけどね!!
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