王家の秘密
「当代の王女は、セシリア様ではないのですか?」
話を聞いていた、ナビゲーションAIもちおが首をかしげた。
「もちおは王室の現状を把握してないんだっけ」
「私は昨日まで休眠状態でしたから。血統の記録も、王宮の水盤から送られてきた遺伝子情報を参照しているだけですし」
「なるほど、データはともかく詳しい人間関係はほとんどわからないのね」
こくこく、と白猫がうなずく。こういうしぐさはただの猫っぽくてかわいい。
「今、王宮で王様だって言われてる人は、全くの偽物なのよね」
「なりかわり、ということですか?」
「本人もなりたくてなったわけじゃ、ないみたいだけどね」
私は、女神の攻略本をアイテムとして取り出す。ページをめくると、そこには王室の血統に関わる秘密がびっしりと書かれていた。
「ことの始まりは、四十年以上前に起きた襲撃事件よ。産まれたばかりの王子を殺そうと、アギト国から王宮に何人もの刺客が送り込まれてきたの。このままでは王子が殺されてしまう、と思った乳母のひとりが、よく似た赤ちゃんを連れてきて、すり替えた」
「味方側の起こしたすり替えだったのですか」
「そう。もちろん、事件がおさまったら元に戻すつもりだったんだけど、乳母は襲撃に巻き込まれて死んじゃって……味方の誰もすり替えに気づけなかったのよ」
「誰かひとりくらいには、共有しとけって話だけどなー」
「厳重に警備されているはずの王宮で、王子が殺されかかってるんだ。内通者を恐れて、秘密を洩らせなかったんだろう」
フランが当時の状況を推察する。女神の攻略本に書かれた筋書きも似たようなものだ。
「襲撃がおさまって、表向き平和になった王宮で、すり替えられた偽物はそのまま王子として育てられていったの」
「……それはおかしくはないですか? すり替えられた王子……現国王は、二十五年前に正当な王として継承の儀を行い、遺伝子サンプルを水盤に提出しています。データに矛盾はありませんでした」
もちおはまた不思議そうに首をかしげた。
話している裏で、継承時のデータを再検証しているのかもしれない。
「あなたがチェックしたのは、血の遺伝子だけでしょ」
あの認証システムには、明確なセキュリティホールがある。血さえ本物であれば、『誰が水盤に投入したか』なんて、チェックしないのだ。
「だとすれば、儀式で使われた本物の血はどこから出てきたんですか」
「それも、殺された乳母ね」
私はさらに攻略本のページをめくる。
「優秀な魔女でもあった乳母は、本物の存在を示す証拠として、王子の血を魔法で冷凍保存していたの。自分のやったことを詳しく書いた手紙とともにね」
「証拠が残っていたんですね。であればますます、発覚しなかった理由がわかりません」
「それらを見つけたのが、王位継承の儀式を明日に控えた偽王子だったからよ」
ヴァンが肩をすくめる。
「まあ隠すよな。偽物にとっちゃ、自分の地位を脅かす証拠そのものなんだから」
「彼は事実を公表せず、乳母の手紙を焼き捨てた。自分が偽物と知りながら、本物の血を利用して王位を継いだのよ」
「……やはり、理解できません。当代の継承の儀をごまかしたとしても、次代の継承時に必ず発覚するのに」
「だが、今の平穏は得られる」
フランが眉をひそめながら言った。
「継承当時、国王にはまだ子供がいなかった。継承の嘘がばれるのは二十年以上先の話だ。今まで王族としてぬくぬくと育てられてきた国王に、事実を公表して野に下る決断はできなかったんだろう」
「でも、知ってしまった事実と、自分がやった継承の不正は国王の中に残り続けたの。本物の王でない自分が、政治に関わってもいいのか? そう迷って決断できなくなった彼は、誰の提案にも逆らわない『置物国王』になってしまったのよ」
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