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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は女神のダンジョンから脱出したい

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「ユラ、待ちなさい!」


 セシリアは鏡に駆け寄ると、ユラがやっていたように鏡面に手を当てた。黒かった鏡はセシリアに呼応するかのように金色に輝く。


「入れて!」

『遺伝子を確認。当代聖女であることを認証。ログインを許可します』

「ちょ、待って。セシリア!」


 私が止める間もなく、セシリアの姿も消える。


「追います」


 黒い影が動いた、と思ったら今度はフィーアが鏡に手を当てていた。鏡は金から元の銀色に戻る。


『認証エラー。遺伝子を確認できません』

「ぎゃんっ!」


 宣言と同時に、フィーアが鏡から弾き飛ばされた。


「フィーア!」


 床に転がったフィーアをジェイドが助け起こした。大きな怪我はなかったみたいで、フィーアはすぐに立ち上がる。


「どうして……?」

「認証、って言ってたでしょ。ある一定の条件をクリアしないと、この鏡の先には行けないの」

「解せません……ユラは入れたのに」

「さっきの黒い何かのせいね。システムに悪さをして無理矢理中に入っていったのよ」


 私は血に汚れた床を踏み越え、鏡に近づく。ユラが無茶をしたせいで、レリーフは一部が黒く焼け落ちていた。今度は私が鏡面に手をあててみる。


「ご主人様、危ない!」

「お嬢様っ!」


 従者たちが慌てるけど、フィーアの時のような反発はない。セシリアと同じ淡い金に光る。


『遺伝子を確認。ハルバード侯爵の子であることを認証』

「セシリア以外も行けるのか?」


 ヴァンが声をあげる。私は手をあてたまま、彼らを振り返った。


「ここは『乙女の心臓』を支援する管制施設の入り口なの。だから、聖女と王族、それから勇士の末裔であれば入室できるわ」

「なるほど、だからセシリアとお前はオッケーで、フィーアは弾かれたわけだ」

「となると、このメンバーで中に入れるのは……」


 ケヴィンが私たちを見回す。


「ハルバードのリリィ、モーニングスターの俺、それからクレイモアのヴァンに王族のクリス、かな?」

「フィーアとジェイドはここでお留守番ね」

「しかし……!」

「あなたたちが必要ないってわけじゃないの。これ以上誰も来ないように見張っていて。セシリアが中に入った以上、開かずの扉の仕掛けはもうオフにできない。ヘルムートや王子が入ってきたら大変だわ」

「それは、わかりますが」


 フィーアとジェイドは不服そうだ。こんな異常な状況で私から目を離すわけにはいかない、という彼らの気持ちはわかる。でもシステムはそんな事情考慮してくれない。


「セシリアをひとりにできないもの。行くしかないわ」

「それはそうなんだが……リリィ? このイデンシってなんなんだよ」


 ヴァンが嫌そうな顔で鏡を睨んだ。


「どうしてこの鏡がお前の親を知ってるんだ?」

「そうね……ディッツの医療魔法にも使われてる技術なんだけど、生き物の血肉にはどんな風に体を作るか、その設計図となる情報があるの。それが遺伝情報」

「……その話は知ってる」


 ヴァンもクリスも、血肉の情報を使って性別を変える薬を作ってもらったことがあるもんね。


「その設計図の大元の情報って、どこから来ると思う?」


 私の問いかけに、うーんとケヴィンが首をかしげる。


「親……かなあ?」

「正解。子の設計図は、母親のお腹の中で父母両方の設計図を混ぜて作られるの。同じ両親でも似てない兄弟がいるのは、設計図の混ぜ方が違うせいね」

「だから、設計図同士を比較すると、誰が誰の子かわかる……ってこと?」


 そうそう。理解の早い友達で助かる。


「この管制システムは遺伝子を調べることで、有資格者を正確に判断してるの」

「いや……にしたって、そもそもどうして王家や勇士の遺伝子? 情報をこいつが知ってんだ」


 なぜかヴァンは遺伝子話に食い下がる。


「王族と勇士七家は継承のときに王宮の水盤に血を捧げる儀式をするでしょ? 実はあれってこことか『乙女の心臓』と繋がってて、歴代王位継承者と勇士七家の遺伝情報を全部記録してるのよ」

「あー……じゃあもしかして、偽王が玉座に登らんとするとき、水盤が赤く染まるっていう伝説は……」

「ここと同じ、認証エラーね」

「エラーね、じゃねえだろーが!」


 ヴァンが派手につっこみをいれた。

 あれ? そんなにびっくりすること?


「お前、俺とクリスの本当の素性を知ってて、何のんきなこと言ってんだよ! 遺伝情報を直接確認されるってことは、今ここで認証するのもヤバいし、継承の儀式だってパスできねえんじゃねえか!」

「あー、継承の儀式には抜け穴があるからそこは平気。ヴァンとクリスなら問題ないわ」

「マジなんだろうな?」

「うん、そこはマジ。っていうか、マジじゃなかったらあんなこと提案してない」

「ヴァン……? クリス……?」


 ケヴィンが不思議そうにヴァンとクリスを交互に見た。嘘が下手なクリスはさっと目をそらす。


「管制システムに関しては、もうしょうがないんじゃない? 中に入った時点でアイコンに継承してる家のロゴが入るもん。でもこれは外部に漏れる情報じゃないし。……ケヴィンには事情を話すことになるけどさ」

「いつかは話そうと思ってたけど……ここで覚悟を決めることになるとは思わなかった!」


 いきなり腹をくくる羽目になったヴァンと、突然の告白に驚くケヴィンと、ケヴィンなら大丈夫だろうと楽観的なクリスを連れて、私は銀の鏡の中へとログインした。


読んでくださってありがとうございます!


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