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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は学園生活を謳歌したい

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エピローグ(オリヴァー視点)

「王子……やっぱり引き返しましょう。こんなのマズいです」

「うるさい。俺は何としても、母様に会いたいんだ!」


 学年演劇を上演した日の夜、俺は王宮の地下を歩いていた。王家の者とごく近い側近しか知らされない、極秘の抜け道だ。王立学園と王宮を結ぶ、細く長い地下道は俺を一晩で目的地へと運んだ。


「しかし、この道は緊急事態用で、こんな私的に使うものでは……」

「俺と母様の緊急事態だ!」


 おろおろと、役に立たない言葉を並べるヘルムートを叱りつける。

 俺の言うことなら何でも従うよう、躾けられているくせに、今更何を。

 俺はカンテラを持ち上げて、地下道の壁に刻まれた模様を確認する。複雑な暗号のようなそれは、右に曲がれば王妃の寝室に到達できることを示していた。

 俺は迷わず右の道を進む。

 細い階段を登っていくと、極端に狭い通路に出た。そこに窓はなく人ひとりが体を縮めてやっと通れるくらいの幅しかない。恐らくここは王妃の寝室の隣の壁だ。王宮にはところどころ不自然に壁の厚い場所がある。間に隠し通路を通すためだ、と知識では知っていたが、実際に自分が使うことになるとは。


 不安そうに背後を振り返っているヘルムートを置いて、ゆっくりと進む。

 壁に取り付けられた装置を動かせば、扉が開いて中に入れるはずだ。壁の中に隠すように取り付けられた、小さなレバーに手を伸ばそうとした時だった。


「ああもう、腹立たしいったら!」


 壁越しに、母の声が響いてきた。いつもの優しく柔らかい声音じゃない、ヒステリックな叫び声。だけど、これは間違いなく母のものだ。

 俺は思わずレバーから手をひっこめた。


「あのご令嬢は残念でしたね。せっかく僕も手を貸してあげたというのに」


 母のヒステリーに返事をする者があった。若くてやや高めの声だが、明らかに男のものだ。王妃の寝室に王以外の男の声があることに驚いて、身動きがとれなくなる。何者なのだ、この男は。


「アイリスのことはいいのよ。どうせあの子の計画なんて、成功しないんだから」

「おやかわいそうに」

「あの子と、リリアーナの周りにいる人間とじゃ、役者が違うわ」


 面倒くさそうに母はため息をつく。


「それより……あの子が聖女役じゃなかったのがむかつくわ。好きでもない男とキスを演じさせられて、苦痛に歪む顔が見たかったのに……!」


 バシン、と何かを叩きつけるような音が聞こえる。

 俺は母の言葉が信じられなかった。

 母は知っていたのか? リリィが自分を愛していないことを。

 その上でリリィが苦しむ顔を見に学園に足を運んでいたのか?


「あのむかつく白百合の娘も、小賢しい宰相の娘も、愛した男と結婚するなんて許さない。ハルバードとミセリコルデの婚姻なんて、絶対に阻止してやるんだから」

「そのために、王子の縁談を利用するんですか? 実の息子でしょう」

「あれの話をしないで。あの方の血を引いてない子供なんて無意味よ」


 あれ、とは自分のことなのか。

 自分は名前さえ呼ばれない存在なのか。


「あれは、置物王のコピーよ。顔も瞳の色も、なにもかもがそっくり! 少しでもあの方に似ていれば、可愛がれたでしょうに……ああ、おぞましい! あんなものが、半分自分の血でできているなんて、耐えられない! 私はあの方の子を産むはずだったのよ!」


 母の呪詛が頭を殴りつけてくる。

 自分は母にとって、何だったというのか。


「派閥のためじゃなければ、視界にも入れたくないわ」

「王妃の地位を維持するためには、母と子という関係は必要ですからね」

「マクガイアが生きていれば、わざわざこんなことしなくてよかったのよ。騎士団と手を組み、王立学園を掌握した私に逆らう者なんていなかった!」

「それはそれは……」


 突然パン、と乾いた音が響いた。母が男の頬を平手打ちしたらしい。


「何を笑ってるの? これはあなたの責任でしょう。アギト国の暗殺者が、約束通り宰相を殺していれば!」

「ええ……それは我らの失態です」

「ハルバードの騎士バカが宰相を助けなければ……湯沸かしバカ息子が学園に手をいれなければ……宰相の改革がなければ……ああもう、何もかもがうまくいかない! こんな国、さっさと滅びてしまえばいいのに!」


 悲鳴のような母の声は、容赦なく通路にまで響いてくる。耳をふさぎたいのに、ふさげない。


「私は一刻も早く祖国に帰って、あの方に会いたいの!」


 それが、母の何よりの願いのようだった。


「だから、僕が来たんです。直接この国を滅ぼすために」


 ひとしきり叫んで疲れたのか、母は大きくため息をついた。


「……必要な身分は手配したわ。次年度からあなたも王立学園の生徒よ」

「ご配慮ありがとうございます。では計画通り、未来のハーティアを担う若者を腐らせていくことにしましょう」

「失敗したら許さないから」

「ええ、承知しています」


 母の部屋から男の気配が消えた。

 ドアを開ける音も足音もしなかったが、どうにかして去っていったらしい。


「王子……」


 そっとヘルムートの手が俺の肩に置かれた。

 しかし、俺は何も返事できなかった。それどころか身動きひとつできない。

 つきつけられた事実に、茫然とするしかなかった。

 王子絶望! というところで「リリィちゃん学園奮闘編」完結です!

 事実を知ってしまった彼が、どう動くかについては次章をお楽しみに~!



読んでくださってありがとうございます!

もしよろしければ、広告の下↓↓↓までずずいっとスクロールしていただき、「☆☆☆☆☆」評価お願いします!

作者の励みになります~!


もちろん、お気軽な感想、ブクマ、レビューなど大歓迎ですので、よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
あの方って誰?王様の父親かと思ったけど祖国に居るの?ホムンクルスか死体かな… それとも別人?
[一言] 『あの方』が独り身で居れば良いけど。 というか 一緒に歳を重ねた40代と、いきなり久しぶりに会う40代。前者は『最愛』な可能性があるけど、後者は「老けたな」って思われる可能性大よ? ヤれるヤ…
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