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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は学園生活を謳歌したい

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罠の真意

「ごめんなさい……リリィ様……ごめ……なさ……うぅぅ……」

「はいはい、それはわかったわよ」


 ぐすぐすと泣きじゃくるゾフィーを抱えて、私は王立学園の裏道を歩いていた。ちらりと後ろに向けた視線の先に、演劇ホールの明かりはない。ゾフィーに言われるまま歩いているうちに、かなり離れた場所まで来てしまった。今から戻ったところで、開演時間に間に合うかどうか。


「アイリスはただのイタズラ娘じゃなかった、ってことね……」


 今まで起きたトラブルが、せいぜい窃盗や器物破損程度だったから油断していた。彼女はじっくりと狡猾に、今日のこの時を狙っていたのだ。

 あの一斉道具隠しは陽動だ。

 生徒全員をパニックに陥れ、浮足立った隙に私を孤立させる。生徒たちが私の不在に気が付いたときには、あとの祭というわけだ。

 数日前のキス未遂事件で、私と王子の不仲は学園中に知れ渡っている。

 このまま舞台に上がらなければ、『王子を拒否して学年演劇をすっぽかしたダメ令嬢』のレッテルが貼られるだろう。

 単純に王子妃の資格なしとみなされるだけならいい。婚約解消の口実に使えるなら、この際多少評判が落ちたところで構わないし。

 しかしあの腹黒王妃のことだ。私をダメ令嬢として下に置きつつも婚約関係は続けさせ、飼い殺しにするつもりなんじゃないかな。

 恋人と引き裂かれて王子と結婚させられた挙句、義母と愛人に虐げられる。

 いかにも彼女が喜びそうな展開だ。

 だからといってゾフィーを見捨てて逃げることもできなかった。


「ううっ……」

「しっかり立って。歩かなくちゃ、いつまでたっても終わらないわよ」

「は……はい……いぁあっ……」


 彼女に刻まれた呪いはヤバい。

 ディッツの元で呪いや癒しについて学び、実際の症例も何度か見てきたけど、こんなに強い呪いを見たのは初めてだ。しかも効果が強いだけじゃない、タチの悪さも深刻だ。呪いは彼女の心臓に絡みつくようにして根を張っている。私程度が無理に解呪しようとしたら、すぐに死んでしまうだろう。

 呪いを解くには、東の賢者レベルの技術が必要だ。

 こんなひどい呪いに苦しめられている女の子を、放っておけない。


「はあ……」


 私は新鮮な空気を求めて、大きく口を開けた。大声を出すつもりだと思ったゾフィーが、びくっと体を震わせる。


「安心しなさい。この状況で無駄に助けを呼んだりしないわ」

「ご……ごめんなさい……ごめんなさいっ……」


 彼女に与えられた命令は大きくみっつある。

 私を指定した場所に連れてくること、私以外に助けを求めないこと、そして私に助けを呼ばせないこと。

 そのどれかひとつにでも反したら、心臓を掴まれるような激痛に襲われる。

 私が助けを呼んでいるかどうか判定しているのはゾフィー自身なので、彼女の前で怪しい行動をとるわけにはいかない。


「あ……あそこです……」


 呪われたゾフィーが私を引っ張ってきたのは、裏庭の隅に建てられた小屋だった。古くてぼろぼろだけど、人の出入りはあるのか周囲に雑草は少ない。


「やっと来たか」


 小屋の裏に潜んでいたらしい制服姿の男たちが、ぬうっと姿を現す。

 彼らは制服こそ着ていたけど、学園の生徒ではなさそうだった。制服の着方がおかしいし、サイズも合っていない。何より顔がどう見ても十代の少年じゃなかった。学生を装うために、変装しているんだろう。


「お嬢さん、ご苦労。ここから先は俺たちに任せな」

「あ……あなたたちは……」


 ゾフィーは震える声で男たちに尋ねる。


「その先は訊かねえほうがいい。そっちのお姫さんがこの後どうなるかもな」


 ニヤニヤと男たちは下品に笑う。『ダメ令嬢のレッテルを貼る』のがアイリスの目的なら、このまま拘束していればすむ話だ。しかし彼らは、それ以上のことをするつもりのようだった。


「最低……」


 私は感情のままに彼らを睨みつけた。

 予想通りすぎて、腹が立つ。

 でも私だって無策でここに来たわけじゃねーからな?

 ポケットには武器になる魔法薬が入ってるし、雷魔法だって使えるからな?

 ゾフィーに隠れて居場所の手がかりを残してきたから、助けが来るのも時間の問題だからな?


「さあお姫さん、連れの命が惜しけりゃこっちに来るんだ」


 男のひとりが手を差し出す。

 この手をとったが最後、ひどいことをされるんだろう。


「だ、ダメ……それは絶対ダメ……っ!」


 蒼白な顔のゾフィーが私と男の間に割って入った。


「ゾフィー! 呪いに逆らったら……」

「ああぁぁっ!」


 胸を押さえてゾフィーが悲鳴をあげた。どれだけ呪いに負荷をかけられたのか、口から泡を吹いて倒れた彼女はそれっきり動かなくなる。


「ゾフィー!」


 私はゾフィーを抱えたまま、男たちとにらみ合った。



読んでくださってありがとうございます!

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