執着
「この格好は、伊達や酔狂でやってるわけじゃない」
私の反応をひとしきり楽しんだあと、フランは真面目な顔でそう言った。
私はというと、好きな人がセクシーワガママボディ美女になった、という目の前の現実をまだうまく呑み込めずにいる。
ディッツの薬で変身したにしても、印象変わりすぎじゃないのか。
「これはお前の風評対策だ。王家は表向き、俺たちの縁談を知らなかったことになっているが、そんなわけはない。俺とお前が偽装もせずに会っていたら、たちまちスキャンダルとして取り上げられるだろう」
ディッツの変身薬を知るのはごく限られた人間だけだ。女装どころか体形まで変化させているのを見て、正体を見抜ける人間なんかいない。完璧な偽装工作だ。
「と、必要だと頭で理解していても、面倒くさいことこの上ない」
フランは私をじっと見る。
「……こんなことになるなら、子供だなんだと言ってないで、一度抱いておけばよかったか」
「へぁ」
今なんつった?
それ、ハグとかの意味じゃないよね?
フランは、にいっと口の端を吊り上げる。
「俺という男に穢しつくされて、他の誰の花嫁にもなれない、と知っていればあんなクソガキの花束など受け取らなかっただろうに」
「そ……そそそそそ、それは、あのっ……」
どう答えたらいいかわからず慌てていると、フランはふっと視線をそらした。
「冗談だ。たらればの話をしたところで、何の足しにもならん」
本当か?!
本当に冗談か?
目がマジにしか見えなかったんだけど? 相手が女性の体だってわかってるのに、身の危険を感じたぞ?!
「お前と王子の婚約に納得していないのは、俺だけじゃない。お前の家族も、俺の父も姉も受け入れる気はない」
私の縁談は、兄様たちの縁談でもあるから、当然の話だ。
「それだけじゃない。クレイモア家、モーニングスター家、カトラス家、お前が関わってきた者たちも不快感を示している」
「え……他の家は関係なくない?」
「関係はある。俺たちは高位貴族だ。ほぼ全員が生涯王家と関わる立場にある。ただでさえ現国王が置物以下だというのに、その後継ぎが仲間の娘に迷惑をかけるアホでは困る」
「ぶっちゃけすぎてない?」
言いたいことはわかるけど!
今の私の状況を現代日本風に例えると、社長の息子が重役の家族にちょっかいかけたようなものだ。現代ならさっさと退職すればいいけど、ここはファンタジー階級社会。辞表を出してはいおわり、というわけにはいかない。
「お前はあの日、身を挺して内乱の危機を回避した。その恩に報いるため、大人たちは全力で動いている。すぐに解決するのは難しいが、諦めるな」
「うん……」
「俯くな」
フランは私の頬を掴むと、強引に私の瞳を覗き込んできた。
「足掻け」
「……っ!」
「王妃の悪意に流されるな。黙っていても、状況は変わらない。足掻いて足掻いて、最大限の迷惑をかけてやれ。お前が望むなら、俺は何でもする」
睨みつけてくるフランの青い瞳にともるのは、強い執着の炎だ。
そうだ、フランはこういう人だった。
愛が重くて面倒くさい男トップ3。
聖女が自分以外を見ないよう周りの男を排除したり、監禁して世界の終わりを見るような男が、目の前で王子にプロポーズされたくらいで諦めるわけないね!
今まで邪魔する者がいなかったから顕在化してなかっただけで、フランも十分ヤバい奴だったわー。
「クソ王室の都合など知らん。お前は俺のものだ」
でも、もっとヤバいのは自分かもしれない。
ドロドロの執着心を見せられて、独占欲を目の当たりにして、怖いと思うどころか嬉しいんだから。
「……うん、がんばる」
「いい子だ」
フランはふと口元を緩ませると、私から離れた。
「帰るの?」
「いや、しばらくここに潜伏する。姉から学園内の調整役を命じられているからな。それに……『攻略対象』も排除する必要がある」
んん? 何か不穏なことを言い出したぞ?
読んでくださってありがとうございます!
もしよろしければ、広告の下↓↓↓までずずいっとスクロールしていただき、「☆☆☆☆☆」評価お願いします!
作者の励みになります~!
もちろん、お気軽な感想、ブクマ、レビューなど大歓迎ですので、よろしくお願いします!!






