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閑話:それぞれのエピローグ3後編(ツヴァイ視点)

「ちょっと待って、どうしてそういうことになるの」


 自分はお払い箱なのか、と妹に食って掛かられた少女は困り顔になった。


「だって……お兄と、ってことは私も一緒に出て行って構わない、ってことなんでしょう? ということは……」

「フィーアは大事な私のメイドよ!」

「だったら……」

「でも、あなたがハルバード家に引き取られたのは、子供ひとりでどこにも行くあてがなかったからでしょ? 自分でメイドの道を選んだわけじゃないじゃない」

「それは……そうですけど……」

「ずっと命令に従わされてきたあなたには、ちゃんと自分自身で選んだ道を歩んでほしいの」


 ふう、と少女は息をついた。


「元々、成人して自分で生きる力がついたら、一度ヒマを出すつもりだったのよ。お兄さん、っていう保護者が現れて、それがちょっと早くなっただけ」


 ヒマを出すつもりだった、と聞かされて、妹の顔がますますひきつる。


「フィーアがいらないって話じゃないのよ? フィーアに世話を焼いてもらうのは好きだし、今回だって、あなたがいなくちゃ私は死んでたと思う。でも、それとあなたの人生を縛るのとは、話が違うと思うから」

「……」


 恐らく、少女の言葉は正しい。

 行くあてのなかった子供を保護し、教育した上で、自由に将来を選ばせる。

 奴隷として扱われていた自分たち一族に対する、最大限の配慮と言える。

 しかし、獣人という種族は少女が思うよりも義理堅く、忠誠心の強い生き物なのだ。

 恐らく妹は少女を一生の主人と決めてしまっている。

 彼女の言葉が気遣いの産物だとわかっていても、受け入れられないのだろう。


 ……しょうがないな。


「妹の処遇を俺たちで決めろ、というのなら……もうしばらくハルバードに置いてやってくれないか」


 俺が声をかけると、少女はきょとんとした顔になった。


「行くあてがないのは、兄の俺も一緒だからな。故郷のあった場所に、集落は存在しない。民は全てアギト国の奴隷にされてしまった。今更戻ったところで意味はない」

「……そう」

「同胞を救うのなら、このままハーティアに留まって、刺客として送り込まれたところを捕獲したほうが早いかもしれん」

「じゃあ、ツヴァイもうちで働くってことになるのかしら」

「暗殺者、諜報員としてはそれなりに使い勝手がいいつもりだ。侯爵家なら使いどころがあるだろう」

「それなら、俺がもらっていいか?」


 少女の補佐官としてふるまう、奇妙な貴族が手をあげた。


「構わない、……というより、その方が助かる」


 正直、妹の主人とはいえ年端も行かない少女に仕えるのは抵抗があった。同じ変な貴族の部下になるなら、まだ成人男性のほうがいい。


「フランが自分の部下を欲しがるなんて、珍しいわね」

「お前の配下ばかり使っていると、いざという時困るからな」


 たった今上司になった男は疲れたようなため息をもらした。それを見て、俺を治療していた賢者が、ぶはっと吹き出す。

 やはり、彼らは俺の理解を越えている。



 ツヴァイ兄ちゃん、その後どうなったのエピローグ。

 とりあえずフランの部下になりました。じわじわ暗躍してもらう予定。



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