サプライズ
「お次はこちら、異国の歌を奏でるカナリアでございます!」
オークショニアが商品を紹介すると、会場がどよめいた。舞台の上には、美女を閉じ込めた大きな檻が置かれている。恐らく外国人なのだろう、ハーティアでは滅多にお目にかかることのない、褐色の肌が美しい女性だった。彼女は日本の琵琶に似た楽器を抱えて、ぐったりと力なく座り込んでいる。
何度かの激しい競り合いののち、バルコニー席の貴族が勝者となった。
嬉しそうにガッツポーズを決める貴族とは対照的に、女性の顔が絶望に染まる。貴族のおもちゃになることが確定した女性は、死人のような顔色で運ばれていった。
「さて今度は……」
しかし、彼女の絶望などお構いなしにオークションは続く。
次から次へと、檻に入れられた人間が運ばれてきて、値段がつけられていく。
「サヨコは檻の中の商品に興味はないので?」
オークションが人身売買へと移行してから、ずっと黙っている私にダリオが声をかけてきた。
「興味があるかないか、って質問だったら、興味はおおありよ。全部買い占めたいくらい」
そして、全員を救いたい。
売られている人たちの肩書はどれも立派なものだった。恐らく、誘拐されてくるまでは、地元で一目置かれる存在だったのだろう。誰も彼も、現在の境遇を受け入れられずに、茫然としていた。
叶うなら、全員ここから連れ出して、故郷に帰してあげたい。
「でも、そんなの無理よね?」
現在の私は、客のひとりでしかないからだ。
「ええ。金がいくらあっても足りやしないでしょうね」
実は、金だけの問題ならどうとでもやりようがある。
ハルバードの財力をフル活用すれば、会場の買い占めだってできない相談じゃない。しかし今彼らを救ったからといってどうなるだろう?
組織が残されたままでは、第二第三の闇オークションが開かれて、新しく不幸な人が売りに出されるだけだ。ハルバードがいくらお金持ちだといっても、開催されるたび人を買い続けられるほどの財力はない。お金が尽きれば、そこでおしまいだ。
人を売らせないためには、人身売買組織そのものを破壊する必要がある。
そして、組織を破壊するためには、どうしても『潜り込んで把握する』という過程を踏まなければならない。工作活動をしている間は、誰がどう売られていても、一旦は目をつぶって……彼らを見捨てなければならないのだ。
と、理屈ではわかっていても、いらだつ感情を抑え込むのは難しい。
「腹が立つったらないわ」
私にとって、この悪趣味なショーが、何回か体験するうちの一回だとしても、売られる側にとってはそうじゃない。自分の人生を決める、一度きりのオークションだ。誰かに買われて連れて行かれたら、もうその先に真っ当な人生は残されていない。
わかっていて見過ごすなんて、嫌だ。
「サヨコは、ずいぶんとおかわいらしい」
くつくつとダリオが笑う。
ねえ、その『かわいらしい』、絶対誉めてないよね?
もうやだ、このバルコニー席。
舞台ではろくなものが売られてないし、ダリオは変な絡み方してくるし、フランはずーっと後ろで黒オーラ出しまくってるし。座ってるだけでストレスがたまる。
さっさとツヴァイを買って帰りたい。
カタログによると、今売られているのが最後から二番目。これを耐えればツヴァイの競売が始まる。それまでの辛抱だ。
祈るような想いで舞台を見つめていると、突然オークショニアが勢いよく手をあげた。
「ここで、サプライズオークションを開始します! カタログにも載っていない、特別な逸品をどうぞ、ご覧ください!!」
高らかな宣言にあわせて、舞台袖から大きな鳥かごのような檻が運び出されてきた。中には私と同年代の少女がひとり椅子に座らされている。
その姿を見た瞬間、私は思わず立ち上がってしまった。
彼女の顔に見覚えがあったからだ。
「……聖女?」
ゲーム内より少し幼いけど、間違いない。
あの子は世界を救う運命を背負ったゲームのヒロイン、聖女だ。
読んでくださってありがとうございます!
もしよろしければ、広告の下↓↓↓までずずいっとスクロールしていただき、「☆☆☆☆☆」評価お願いします!
作者の励みになります~!
もちろん、お気軽な感想、ブクマ、レビューなど大歓迎ですので、よろしくお願いします!!






