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因果応報という言葉が、限りなく相応しい

 ダンジョンという狭い場所から解き放たれた、空を飛ぶ魔物の数々。

 それらに苦戦している途中で、シビラとエミーが何かしらのやり取りをしていた。

 はっきりとは聞こえなかったが、この状況だ。一大決心をしたのだろう。


 再びエミーを見た時……明確に雰囲気が変わったのが分かった。

 だが、俺がエミーに対して驚いたのは、次の一言だった。


「厳しいと思うけど、でも……魔王をラセルに任せます」


 それは、聖騎士の力を得る理由であった俺を守ることに固執することを、やめた一言。

 そして……間違いなく、俺を信じていなければ出て来ない一言。


 そうか、エミー。

 お前は『前に進んだ』んだな。

 守るための能力を得るほどの強い想いすら振り切って、俺のためにそこまで変わってくれたんだな。

 やっぱりお前は、凄い奴だよ。


 シビラとともに、魔王の前に立つ。

 向こうからの憎々しげな視線を見返している最中、後ろから小さな呟きが聞こえてきた。


「まずは一匹」


 マジか、エミーはあのボスを一人で仕留め始めているのか。

 まったく、俺の周りの奴らはつくづく頼りになる。


 やれやれ……俺もそろそろ大きく活躍できないと、『宵闇の誓約』というパーティーの形だけのリーダーをしていることすら、自分で許せなくなりそうだな!


「……やってくれましたね、まさか【聖騎士】から、その聖なる力を奪うなど……!」


「ふん、お前にはわかんないでしょーね。エミーちゃんは、ラセルのためなら地位も名誉もプライドも、全部スライムの夕食にシュートしてしまう子なの。……強い女の子よ、ほんと、僅かな生であそこまで格好良くなれるんだから、眩しいわね」


 シビラと魔王の会話で、俺も全てを察した。

 間違いない。エミーは、宵闇の職業を選んだのだ。

 それも、俺のために。


 胸に熱い物がこみ上げる。

 これは、好意とか愛情とかそういうのとは全然違う。

 そう——仲間としての信頼だ。

 それがエミーにとって良いことなのかは置いておくが……少なくとも俺は、前よりもとても、エミーを近く感じる。


 だが、やはりこの魔王は気に入らなかったらしい。

 高貴な職業と、高価な剣。そういうものばかりに興味があるって感じだったものな。


「……」


 魔王は、それまでの睨んでいる顔から、ふっと表情を消す。

 それは今までの威圧的な顔よりも、獰猛な顔よりも、攻撃的な表情に映った。


「……もう殺す価値もないですが、それでもあなた方は私をここまで追い詰めた人間。全力を尽くさせていただきます」


 ここでようやく、魔王が積極的に攻撃に転じてきた。


 さあ、俺の戦いだ。




 魔王の攻撃を先程からエミーが防いでくれていたわけだが。

 対峙してみると……本当に、シビラの常識が通用しなかったのも無理ないな。


 三人分の武器と魔法を一つの頭脳が操っているなど、厄介というか卑怯極まりない。相手と全く同じ事をやっていては、絶対に勝てない相手だからな……。


 頭も三つなんだから、思考も三つあるのか?

 考えてもしかたないか。


「ラセル、恐らく魔法から来る」


「撃ち合いか? ふん……なるほどな」


 シビラの判断に、魔王の意図を察する。

 魔王は手を三つ前に出し、俺を値踏みするようにじろじろと見る。


「【魔卿】は消費魔力の特に激しい職業。ましてや闇魔法、どれぐらい持つでしょうね。【聖騎士】の高貴さに比べて、闇魔道士など私の相手の役には不足にも程があります。《アイスジャベリン》」


 魔法の言葉になった瞬間、三人同時に口が動く。

 その手から現れる、三つの氷の槍。


「《ダークスフィア》」

(……《ダークスフィア》)


 俺は頭の中で少し時間に差をつけ、氷の槍を二つ弾く。

 三つ目は——。


「《ファイアジャベリン》!」


 ——俺の相棒が、足りない部分を支えてくれる。

 これを無言でやってくれるから、やはりこいつは頼りになるな。


「一人で二人分の魔法を、しかも闇魔法でカバーするわけですか。……実に愚かな選択です。《アイスジャベリン》……どこまで持ちますかね?」


 同じように撃ってきた魔法を、同じように《ダークスフィア》で削る。

 シビラも無詠唱で炎の槍を放ちながら、剣を砂浜に挿して腰のポーチからマジックポーションを用意する。


 撃ち合いか……いいだろう。

 魔王が相手だろうと、シビラにもらった【宵闇の魔卿】の力を持つ俺が負ける可能性など、万に一つもありはしない。

 何を狙っているかは明白だが、お前の気が済むまで付き合ってやるよ。




 ……それから、どれほどの時間が経過したか。


「《アイスジャベリン》」


「《ダークスフィア》」


「《ファイアジャベリン》ッ! んぐっ……ぷはぁ」


 魔王と俺とシビラの、魔法の撃ち合いは続いていた。

 シビラはずっと右手で魔法を撃っている。汗を滲ませながら左手はマジックポーションを手に取り、飲んだ後は砂浜に落とす。その一連の動作も、これで五回目だ。足元には五つの空瓶が落ちている。

 マジックポーション一つで、ファイアジャベリンはそれなりの回数を撃てる。それ故に空瓶の数が、この戦いの長さを物語っていた。


 何度も何度も、魔法を相殺していく。

 少しずつ相手の氷の槍が細くなってきているような錯覚が……いや、これは錯覚ではないな。

 明らかに魔王が、俺と魔力の削り合いをして競り負けている証拠だ。


「手こずった、ごめん!」


「《ダークスフィア》。俺より早い、十分だ」


 エミーがもう一体のボスを討伐し終えたのだろう。俺の前に立ち、剣を使って氷の槍を弾いた。


 それまで無表情で攻撃魔法を打ち続けていた魔王の攻撃魔法が、ぴたりと止む。

 その顔は、目を見開き驚愕に震えていた。


「……おかしい。何故……何者なのですか、お前は……」


 魔王は、六つの手のうちの一つで、シビラの足元を指差した。

 状況の掴めていないエミーは指差すままにその空瓶を見て、それからシビラの汗だくの顔を見る。


「小娘、分からないのですか……。その男のダークスフィアは、ファイアジャベリンの数倍の消費魔力。しかも交互に魔法を放ち、私の魔法を二人分相殺しています。……私は、枯渇を狙いました。そして五度……ただの火炎魔法使いの女だけが、魔力の補充をしました」


 エミーが、後ろにいる俺の方を恐る恐る見てくる。

 当然こっちはまだまだ余裕なので、肩をすくめて「問題ない」と返事をした。


「……何故……何故なのですか! 有り得ない! お前の魔力はどんなに少なく見積もっても、数十人分は消費している! 既に気絶していてもおかしくないはずです! お前は一体……」


「ああ、そうだ」


 俺は魔王の言葉を無視するように、シビラの方を向いて別種の魔法を使った。


「《エクストラヒール・リンク》、《キュア・リンク》。回復させ忘れてすまん、汗かく前に気付けばよかったな」


「……一応聞くけど、魔力補充はいる?」


「どちらかというと、ただの飲み物の方が欲しいな」


「はは、あんたらしいわ……」


 俺とシビラのやり取りを見て、魔王は初めて一歩、後ずさった。


「……なん、なんですか……聖者の、魔法……? 闇魔法を無限に撃ち続けて、聖者の魔法を全て使える……? そんな、そんな存在がいるはずが……お前は一体、何者……」


 その一歩を埋めるように、俺はシビラとエミーの間から一歩踏み出す。


「何者、か」


 魔王は俺というものが、どういう存在かを聞いているんだろう。

 ならば、こう答えるしか無いよな。


「——『黒鳶の聖者』ラセル。闇魔法を極める聖者だ。俺の魔力に枯渇はない」


 魔王は遂に、戦う者としての余裕を無くした顔で目を見開く。静かに目を閉じると、俺を『敵』と初めて認識したように睨み付けた。


 眉間に皺を寄せた三つの顔が唸りながら、砂浜から……というより地面の魔法陣から現れた剣を取り出す。

 アドリアダンジョンの魔王が持っていたようなのとは違い、妙に装飾過多な金色の剣だ。


 右手に二本、左手に一本。

 そして空いた手は、魔法を用意している。


「無駄撃ちしすぎました。油断していた、とは言いません。恐らく全ての『可能性』を想定しようとしていたとしても、常識を超える頭脳()()では、お前という存在を予想できはしなかったでしょう」


 その怯えの一歩を埋めるように、魔王は一歩ずつこちらに踏み込み始めた。


「この力を得てまで、負けるわけにはいきません。一つの頭脳が、しっかり一人を担当させてもらいます」


「いいだろう」


 そして俺も、シビラも、エミーも。

 魔王を見て剣を構えた。


 シビラがエミーの近くに行き、ぼそぼそと喋る。……何だ?

 そしてシビラは、俺の方に来て不思議な指示を出した。


「ラセルは、左から。絶対に後ろに回り込まないように」


 後ろに回り込んだ方が有利に感じるのだが……。


「必ずチャンスは来る。だけど、アタシじゃ駄目なのよ。エミーちゃんでもね。……ラセル、あんただけが頼りよ」


 いつになくはっきりとした指示。

 どういうことかは分からないが、恐らく何か仕込んでいるのだろう。


 それが俺にしかできないとシビラが断言するのなら、期待に応えてやらないとな。




 魔王が一気に踏み込み、俺達の方へと魔法を放ちながら剣を振り上げてきた。


「させないっ!」


 エミーが正面から受け止め、剣の一つを防いで魔法の二つを盾で吸い寄せる。

 シビラも剣を持ちつつも、あまり接近しない形だ。

 最後の空いた魔王の左手を、魔法が放てないように右側から牽制する。

 それでも十分だ。


 俺は、左側の二本の剣のうち、一本を担当する。

 左手は空いているが、迂闊にエミーへと誤爆するのは避けたい。

 闇魔法を、エミーの新しい職業が無効化できるかはわからない。そういう危険はなるべく避けたい。


 膠着状態ではあるが、うまく防げている。

 俺達それぞれが、自分たちの力を出しているが故に、これほど規格外の魔王と戦えているのだろう。


「……やはりそれなりに強いですねえ。ですが!」


 魔王は接近した状態から一度離れて、魔法を再び放とうとする。


「《アイス——」


「ええいっ!」


 そこでエミーが魔王を追うように一歩前に出て……盾が黒く光った。

 その瞬間、魔王の脚が砂浜で踏ん張れず、ずるずると引き寄せられる。


 そうか、これがエミーの新しい職業ジョブの力か。

 攻撃魔法などの遠距離攻撃手段の無いエミーが、あれだけのスピードでボス二体を討伐できた理由がようやく分かった。

 相手を弾き飛ばす技と対照的な、相手を吸い寄せる技。

 その能力は、魔王にも十分に通用するようだ。


「……ぐうっ!」


 そのエミーと剣を打ち合わせると、再び同じ状況に陥った。

 俺が剣をぶつけると……闇属性を乗せ直した効果なのか、宵闇の魔卿の持つ俺の剣だけの特性なのか……魔王の剣が折れる!


「まだまだァ!」


 チャンスかと思った瞬間に、魔王が一瞬で次の剣を召喚する。

 戦いのためのものではない、明らかに俺の買ったブレスレットなら数十個分にでもなりそうな高価な剣だ。

 くそっ、またこんな高そうなものを折らなければならないのか! 元貧乏暮らしとしては、ますます憎しみを重ねられていいなおい!


 魔王がその剣を持った瞬間。




 ——とす。




 と、どこか場違いな音とともに、魔王の背中に見慣れないものが見えた。

 俺はその瞬間……これがそうだと理解して、その『女神の一手』を掴んだ。


 魔王の剣を右手で抑え込み、左手に意識を集中しながら全力で叫ぶ!


「《エンチャント・ダーク》!」


 その瞬間、背中のものはずぶずぶと魔王の身体に入り込む。


「——あああああああアアアアアアア!」


 叫び声を聞きながらも、俺に剣を押しつけてくる右腕を抑え込む。

 残りの腕が全て俺に狙いを定めて襲いかかってくるのを、エミーが器用に打ち払っていく。


 その一瞬の隙に、俺は左腕を押し込みながら……散々言われ続けてきた怒りと、こいつに致命の一撃を喰らわせた達成感とともに、肩口まで切り上げる!


「ア——あ……!」


 魔王は背中から紫の噴水を上げる。

 俺は続けざまに左手の武器を魔王の胸に突き立てると……魔王はそのまま力を無くして、砂浜に沈んだ。

 今の手応えは、間違いない。

 俺の、勝ちだ。


 魔王の、血走った白目の眼球が、弱った身体で必死に武器を確認しようと自分の状態を起こして胸を見る。

 そこにあるのは――。


「……な、んです、か……この、粗末な……おもちゃは……」


 ――柄が変色するまで使い込まれた、明らかに中古品の投げナイフだった。


 『何ですか』、か。そんなこと、俺が知りたい。

 そんな俺の心情に答えるように、これが何か当然のように知っている女が動き出した。


 シビラがナイフを見ると、実にいい笑顔で親指を……魔王の後ろ側、遙か先に向かって立てたのだ。


「……え? イヴちゃん?」


 エミーが呟いたのは、ここにいるはずのない、四人目の冒険者だ。


「うっす。シビラさん、これでお仕事完了っす」


「ほんと、いい仕事だったわ。それじゃお返しに、楽しい楽しいお笑い劇を見る権利をあげるわ」


 イヴへの返事をして、いかにもシビラらしい前置きをしながら魔王へと近づき見下ろす。

 その顔には、美しくも嗜虐的な笑みが浮かんでいた。




 シビラは、全ての種明かしを始めた。


「【アサシン】には、高レベルになった者が使えるスキルがある。『隠密』、まあ知ってるわよね」


「……それ、は……」


「そう。気配を消す『隠密』を覚えるために必要なレベル、けっこー高いのよ。一度斬られたお前なら分かってると思うけど、第四ダンジョン当時のレベルじゃ、全然足りなかったわ」


 ……それはそうだ。あのとき活躍したとはいえ、イヴのレベルは決して高くはないはず。

 じゃあ、どこで……?


「ラセルは知ってるわよね。すぐにレベルアップできるもの」


「そんなの、フロアボス討伐と……それからその後、俺は……」


 ……ドラゴンの心臓で、レベルアップを……!


「いや、だってお前、あの時食べてただろ!」


「そうね、食べてたわね。ドラゴンの『胸肉』をね」


 ……は? 胸肉?

 あの時、俺が心臓を食べている横でお前がもっちゅもっちゅ食べてけらけら笑っていたのは、ただの胸肉だったのか?

 明らかに心臓を食べたような反応だっただろ?


「敵を騙すには、味方から。イヴちゃんには、ここで活躍してもらうためにニードルアースドラゴンの心臓を食べてもらってるわ。そりゃもう強いわよね、【アサシン】レベル21あるもの」


 シビラのとんでもない暴露に、俺もエミーも絶句した。

 同時に理解した。シビラがあの時、イヴと一緒に孤児院へ行った理由が。


 イヴはそもそも、この砂浜からダンジョンに入る姿を見ていて、俺達を追ってきていたのだ。

 当然ここで魔王との戦いがあると知っているのなら、目のいいイヴなら戦っているところが見える。

 後は、頭脳の一つを一人一人に担当させ、腕の六本を止めて背中側を空ける。


 そして俺が、闇属性を投げナイフに付与するであろうことを信頼して、何も話さず託していた。

 その結果が、今だ。


 ここまで……ここまで全部読んでいたのか、シビラは!


「いや、魔王を追い詰めた最後の一手は、ラセルの記憶だったわよ? ってわけで、ここからは私の出番」


 そしてシビラはニヤニヤしながら、魔王を心底嬉しそうに見下す。

 魔王に最後の審判を下すのだ。


「お前を倒すのは、【聖者】の剣でもない、【聖騎士】の竜牙剣でもない、『宵闇の女神』の剣でもないわ。だって全部拒否したんだものね〜!」


 その身体の近くで、片足を上げる。


「や……やめ……」


 今から何が起こるかを予見した魔王は、三つの顔全てを恐怖に染めて首を振る。




 セイリスに潜んでいた、規格外の力を持つ魔王。


 金銭第一主義で、貧乏な他者を平気で見下す。

 聖騎士であろうと、孤児の出なら興味を失う。

 俺達の死闘も、時間がかかると待つのに飽きる。


 考え方、振る舞い方の全てが悪意の塊のように自分勝手。

 その身体には、街からかき集めた宝飾品まみれ。

 しかし、その全ては偽造通貨で手に入れたもの。


 だというのに。

 自分の戦う相手は、高貴な者の高価な武器を望む。

 どこまでも傲慢で、強欲で、虚飾にまみれた魔王――。


 ――その魔王の運命が、今、決まる!




「お前を倒すのは、孤児で、超貧乏な元スリのアサシン! そんな子ですら使い捨てとして投げ飛ばした、この街で一番くっっっそ安っちい中古のボロボロ投げナイフよ! いやぁ〜いいわぁ〜! 心の奥底から! お前にトドメを刺すのにチョー相応しい、ほんっとこれ以上なく相応しい武器だと思うわぁ〜!」


 動かない身体で必死に拒否しようとする魔王を嘲笑うかのように、シビラは大声で叫びながら親指を下に向けて、足を踏み下ろした!


「これが、お前の因果に対する応報よ! ざまああああああああ!」


 闇属性を付与された投げナイフは、シビラのブーツによって魔王の身体深くに埋まる。

 一度びくりと痙攣すると、魔王はさらさらと土の中に溶けていった。




 シビラがこちらに振り返り、先ほどまでの狂気じみた表情とは全く違う、悪戯っぽい笑みをした。


「みんなの代わりに言わせてもらったけど、こんなもんでどうかしら?」


「気分爽快だな」


「もうほんと最高です」


 魔王の止めを刺したかった俺とエミーだが、結末を見るとシビラに譲ってよかったと素直に思った。

 あそこまで奴にとって嫌な部分を的確に抉って倒してくれると、文句の付けようがないな。

 ……同時に、俺はエミーと一瞬目を合わせたときに『シビラとだけは絶対に敵対したくない』という意志を共有できたように思う。

 なんつう口撃だよ、あんなん言われたら魔王でも泣くぞ。


 様子を窺っていた今回の功労者であるイヴも、俺達に合流した。

 その活躍ぶりを称え合い、みんなで笑いながら一つの終わりを実感した。


 孤児の生まれでも、自信を持って育てられて。

 それを、生まれの理由だけで見下されて。

 お世話になった人まで貶されて。


 必ず倒すと誓い、逃げられること二度。

 街の中に貴族の服を着て逃げ込んだ魔王を暴いて、三度目の正直。

 日が落ちるまで続いた最終決戦は、今、終わりを迎えた。


 ようやく俺達は……あの魔王に勝ったのだ。

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