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魔神や教会など、今後の見通し

「さて……話を戻しますが、あの赤い部屋はもうあったところで意味はないでしょう」


『赤い救済の会』の力で『赤き魔神ウルドリズ』が現れた。

 ウルドリズの力の残滓で地上に巨大なダンジョンの入口『魔峡谷』が現れた。


 赤会関連でこれ以上悪くなることはない、か。

 考えようによっては良い話ではあるな。


「ケイティの件は、これに関連する話でもあります。あの部屋の先導者ですね。ヴィンスさんがケイティと共にあの場所に訪れたのも確実でしょう」


「もー、あいつマジでろくな事しないわねー」


 シビラが呆れ気味に愚痴りながら、ひらひらと手を振る。


「これ以上何かしないよう、こちらもシビラと意見を交わして対抗手段を得ました」


 そうか、対策を……ん?


「今、ケイティへの対抗手段を得たと言ったのか?」


「はい」


 シャーロットとシビラは、あの突然消えるケイティの対策を編み出したと?


「あら、ラセルだけはアタシの天才っぷりに気付いていたと思うけど」


「当然のように俺がお前を持ち上げている前提で話し始めるな」


 こいつと来たら、油断するとすぐに調子に乗る。

 何故確定口調なんだよ、ケイティに関して俺だけがシビラの行動に気付いていたことなど……。


「……なあ、そういえばケイティが突然消えた時、結局お前は何をしていたんだ」


「なんだ、分かってるじゃない。やっぱりラセルはいつでもアタシに夢中ね」


 もう勝手に言ってろ、やれやれ。


「結論から言うと、ケイティを捜し出す魔道具の製作依頼をしているわ」


「ッ!? マジかよ、それは凄いな……!」


 軽口が続くかと思いきや、さすがに出された情報の内容を流すことはできなかった。

 無論、俺だけでなく索敵担当のジャネットは真っ先に食いついた。


「シビラさん、一体ケイティの秘密は……?」


「ジャネットちゃんは特に気になるでしょうね。でもアタシもこれが成功するかどうかは分からないのよね。だから仮説の証明は、道具の実物が届いてから」


 これは期待ができそうだ。実際にその道具を使うのが楽しみだな。


 シャーロットは座り直し、三つ目の報告を始めた。


「最後は、孤児院に関して。お察しの通り、ここ帝国では一切孤児院がありません。子供は棄てられたら何もなしどころか、売られることが当たり前にある。幼少期にやり直しができなくなるあんなものは……使うべきではありません」


 そうだな。

 正直あの痕が生涯取れないほどの焼き印を幼少期に刻みつけられるなど、それによる利点を大人しか享受していない点も含めて虫唾が走る。


「自主性の修正を、ここからは少し権限を持って行わせてもらいます。これは文化ではない。闘技会ぐらいなら構いませんが、せめて回復術士ぐらいは完備させるべきです」


「同感だ、『帝国太陽教』はケチすぎる。冒険者が価格で使い渋ればそれはそれで収入になんねえだろ」


 俺の意見に、皆黙して頷く。

 特に魔物と戦った後に血まみれのまま放置されている連中が当たり前にいるなんて、【神官】の力を与えたシャーロットとしてはたまったものではないだろう。


「というわけで、『帝国太陽教』はこれでおしまい。これからはセントゴダートの方針を積極的に持ってくることにしました」


 その話を聞き、ジャネットが何か気になるのか質問をした。


「教会の一新となると、絶対でなくとも議会・立憲でない君主制に近しい帝国ではかなり内政干渉気味ですが……よろしいのですか?」


「……! バート帝国でも皇族と帝国太陽教は独立した組織なので、行政の相互干渉は基本ありません。コルネーリウスは、(かみ)の名を騙り上下関係を作るために干渉しましたが……。もちろん協議の必要がある場合は王国の者を出します」


「なるほど、帝国の宰相や政務官に皇族の方々にも、帝国の立法には関わらないと、分かっているのですね。王国との外交摩擦は起こらなそうで安心しました。シャーロットさんならお任せできます」


 シャーロットとジャネットが会話しているが……俺はシビラの方を見た。

 シビラも俺と同じ顔をしており、すぐにジャネットへと身を乗り出した。


「ねえジャネットちゃん、実は宰相のところで育ったり、政務官の仕事とかしてない?」


「えっ、何でですか」


「……気付いてないの本人だけ? 冗談でしょ」


 俺もシビラの意見に同意だ。


 正直、俺ら平民冒険者なんて国同士の関係を心配したりすることはないし、ましてや議論をするための前提知識が多すぎて俺ですらギリギリ理解できる程度だ。

 シビラが突っ込んだのはそこだ、何でお前は外交摩擦を心配するんだよ。


 見てみろ、エミーなんて単語が難しすぎて『ソーセージおいしいです』という顔だぞ。

 ……いつもどおりだったな。でも今はお前が癒しだよ。


 シャーロットは満足そうに笑い、とんでもないことを言った。


「ジャネットさん。『教皇』とかやってみません?」


「絶対に嫌です、僕は自分が偉いと思った時点で破滅するタイプなので」


「んー、残念!」


 即答したジャネットを予想してか、あまり残念じゃなさそうにシャーロットは笑った。


 なおシャーロットは予告通りエミーとコイバナとやらで盛り上がった後に帰った。

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