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女神との初顔合わせと、専門書の秘密

 教会のトップが連行された後、シャーロットは羽を閉じて降り立った。

 残されたのは、俺達八名のみ。


「枢機卿七名が、全員揃ってダメとはね……」


 がらんとした礼拝堂で、シビラは溜息を吐いた。


「アタシが思うにローレンスが残っていたら良かったんだけど、生憎のところ行方不明。これから教会はどうするのかしらね」

 その呟きに、周りを見回しながらシャーロットが近づいてきた。


「んー、ぶっ壊しちゃう? あっでも建物綺麗だし、設計した人の美術センスはいいから、壊したくはないよね」


「ステンドグラスと彫像をぶっ壊した系女子が何か言ってるわ、クッソうける~」


「あれは! あんな像どうせ、その……もう、アレな使い方してたんだって! ぎゃー想像したくなーい! 不敬、不敬だぁー!」


 わちゃわちゃと実に女子会って感じの会話をして、シャーロットははっとするとこちらに顔を向けた。

 頭をぽりぽり掻いて、照れ笑いをしている。


「あはは……えっと、どうも、太陽の女神でーす、お久しぶりー……」


「あんたシビラの前だとアレなのか……」


「わ、わすれてくださぁい……」


 悪いんだけど、ちょっとインパクトありすぎて無理だな。

 一方、こういう時に強いのは天然である。


「シャーロットさん、可愛いです! そっちの方がいいですよ!」


「そ、そう? 可愛い? だったらいいかな……!」


 エミーが遠慮なく乗っかり、シャーロットも何故かノリノリで返す。


「……あんたソレ威厳が粉々になるからやめろって言ったでしょ」


 凄いな、シビラがツッコミ役をやってるぞ。


 そんな俺達とは違い、全く違う反応の者もいた。

 そういえばここに来たうちの二人は、初めてだったか。紹介を忘れていたな。


「ヴィクトリア、イヴ。紹介しよう。『太陽の女神』シャーロットだ。セントゴダート王国の女王も兼任している、ことも話していいか?」


「ええ、問題ありません。シャーロットです。二人とも、よろしくね」


 そう言って、少し冗談めかしてカーテシーを取る女神兼女王。

 シビラ同様に、目を惹く美貌だ。


 二人は唖然として、ゆっくり互いの顔を見て、それから再びシャーロットの方を見た。


「……え、ええと……『太陽の女神』様? 本物の? わあ……すごい体験。ブレンダに自慢しなくちゃ……」


「『宵闇の女神』の本物であるシビラがこの酒飲みなんだから、『太陽の女神』も実物こんなもんじゃないか?」


「……ラセルさんって、時々めちゃ豪胆っすね……さすがに太陽は例外っすよ」


 そうか? もしかしたら、シビラとエマの存在に慣れすぎてしまって、シャーロットのこともその程度に思ってしまうのかもしれないな。

 二人よりはまだマトモな方だが……一応威厳は保っているようだ。


「あとあと、コイバナ友達です! 恋愛物語ばかり読んでて、すっごく詳しいの!」


「あ、あは、は……」


 エミーがそんな『太陽の女神』の威厳を一発でヒビまみれにする。

 女神様、否定できず苦笑い。強いぞエミー。


「僕にとっては、未知の叡智を授けてくれる相手だね。知識も限りなく広く、どこまでも深い。話をしているだけで楽しいし、尊敬しているよ」


「ジャネットさぁん……!」


 そんなヒビだらけのイメージを、ジャネットが綺麗に金継ぎしてくれた。

 ただシャーロット、そのきらきらした涙目で両手を握り込む姿は威厳も何もないぞ。


「そうだ、シャーロットさん。知識の質問が一つあります」


「あっ、はい! 何でしょうか!」


「教会の地下図書室。あれを用意したのは天界の神々で間違いありませんか?」


 ジャネットは唐突に、そんなことを言った。

 シャーロットは一瞬目を見開くと、両手を叩いて笑った。


「分かっちゃいましたか! ちなみに、理由をお聞きしても?」


「ええ。出版物が二つと無いのはもちろんですが、やはり文化水準が高すぎます。どう考えても今のこの帝国は、感覚や自意識に関する内容を研究する段階にないように思いますし、何より読者が誰も必要としていません」


「仰るとおりです。さすがですね。いずれと思って置いていたのですが、需要第一号がジャネットさんでした。後はメートルなどの単位基準と共通貨幣、それにタグ決済レートは不便のないよう先に広めたんです」


 マジかよ……道理で補充のための本が見つからないわけだ。

 ていうかジャネットはそんなことまで棚を見ながら考えていたのか。驚く他ないな。


「さて、私は帰りますが……何かありますか?」


「マーデリンを見てきて、終わっていたら呼んできてくれ。北東部にいると思うんだが……ああそうだ、ケイティが潜んでいるかもしれない」


「分かりました、すぐに向かいます」


 シャーロットはそう話すと、「それではまた!」と軽く挨拶をして、割れたステンドグラスの間から再び飛び立っていった。


「すげー、本物の女神様だー。あっいやシビラさんも本物ですよ! でもなんか……」


「力があるというか、迫力があるというか……凄いわね……」


 初めてシャーロットを見るイヴとヴィクトリアは、彼女の姿にかなり興味津々といったようだった。


 俺から見ても、今日のシャーロットはかなり力を見せつけたなと思う。

 一方シビラは、何とも言えない不満顔で腕を組んでいた。


「何なんだよ」


「ロットばっかり目立ちすぎー。アタシの活躍をもっと見せつけたかったわ」


 そんなことをふて腐れながら言い放った。

 ……マジかよ、こいつ全然分かってねえ。


 俺はシビラの言葉に溜息を吐くと、今回の出来事を説明してやることにした。


「何言ってやがる。最初から教会を狙っていたのも、ヘルマンを罠に嵌めるよういくつも狙ってたのも、シャーロットを呼ぶことができるのもお前だろ」


「……」


「予定通り、帝国の教会は壊滅。今回も十分過ぎるぐらい、お前の掌の上だよ。普段通り過剰な自信を持ちな」


 俺の言葉を聞き、シビラは目を見開いて俺を無言で凝視してきた。

 何だよ。


「ら、ラセルがアタシを褒めている。このアタシの天才美少女っぷりを理解するなんて、悪いものでも食べた?」


「そういうとこだよ」


 俺じゃなくても、自然とお前のことを褒めなくなったのはな……。


 シビラにツッコミを入れつつも、ようやく一仕事終わったという感覚があった。

 さて、心配してはいないが――マーデリンは上手くやっただろうか。

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