庭にダンジョンとかラノベかよ
新章開幕
ピザを食べた後、前と同じように家まで向かう。ウェスタもピザをたくさん食べて幸せそうにしているし、配信も盛況したしで、今日はとても良い一日だった。明日は明後日の配信用のゲームを見に行く予定なので早く家に帰ってゆっくり休もうと思う。
そういうわけで、もうじき家だというところで、ウェスタの表情を変えて俺を守るように前に立つ。今までにない、険しい表情だった。後ろ姿はもうじきつく我が家のほうをにらみつけているように見える。
「どうしたんだウェスタ?」
「主殿、家の庭にダンジョンができておる。それも儂がいたダンジョンと等しいほどの難易度のものじゃ。そのうえ出来立てで不安定。いつ中から魔物が出てきてもおかしくないのじゃ。今日は家に帰るべきではないかもしれぬ」
ウェスタ、そんなこともわかるのか。しかし、俺の所有する土地にダンジョンができた、か。これは面倒なことになったな。協会にも申請しないといけないし、それにウェスタのいう通りなら家が危険ということだ。
「そう、だな。いったん探索者協会に報告、申請をして今日はどこか別のホテルとかでやり過ごすか」
「ホテルとかはよくわからないが、それがいいのじゃ。最悪あのダンジョンから儂と同格の奴が出てくる可能性もあるからの。そうなった場合は主殿をかばいきれんのじゃ」
ウェスタと同格とは、考えたくもないな。今日のウェスタの実力を見る限り、日本中の探索者が束になってかかっても勝てない可能性すらある。
「じゃあ日も傾いていることだし、早めに行動しよう。まずは探索者協会に行こうか」
そうして俺たちは進路を変更して協会方面に向かう。あ、そうだついでに魔石とかの換金も済ませておくか。
そういうわけで10分ほどで協会に到着した。そういえば今支部長いないんだったな。誰に報告すればいいんだ? とりあえず受付さんに話してみるか。
「夜見さん、換金ですか?」
「ええ、それと一つ報告したいことが。久蔵支部長はまだ戻ってませんよね?」
久蔵支部長が入ればそれが一番いいんだけどな。何かあったという噂は聞いてないから、一応生存確認はできたんじゃないかとは思うけど。
「そうですね、今久蔵支部長は入院中ですし。まぁ1週間くらいはかかると思います。支部長代理をおよびしましょうか?」
「あ、換金が終わったらお願いします」
入院、か。何があったんだろうな。ウェスタ曰くかなり強いとの話だったのに。とりあえず今は支部長代理さんに報告することにしよう。
まずは換金する魔石を受付さんにお渡しして、少しの間待機する。待機所の椅子にウェスタと共に座る。
「なぁウェスタ、ほんとにダンジョンができたんだよな?」
「間違いないのじゃ。あれほどの魔力を儂が間違えるはずがないのじゃ」
待機の間、ウェスタにもう一度ダンジョンについて尋ねるがどうやら間違いはないらしい。
ウェスタがこれだけ言ってるんだから相当やばいダンジョンなんだろう。庭に最難関ダンジョンとか、俺はそんな主人公気質じゃないんだから勘弁してほしいんだけどな。
「ウェスタでも攻略は厳しそうなのか?」
「む? ボスまでは余裕じゃな。じゃがボスはおそらく儂と同格じゃ。勝てるかどうかは相性しだいじゃな」
ということはほかの探索者にも攻略は無理だな。引っ越しも視野に入れて考えるか。両親から受け継いだ大事な家なんだけどな。
「案ずるでないぞ、主殿。今の儂ならきっと勝てるのじゃ」
ウェスタが立ち上がると共にそんなことを言った。
「根拠は?」
「守るものがあるのじゃ。負けるわけにはいかないじゃろ?」
振り向いて笑顔でそういうウェスタに一瞬、俺は見惚れてしまった。いかん、ロリコンっていわれっちまうぞ。俺は両頬をたたき、それと同時に立ち上がった。
「ほれ、そろそろ査定も終わりじゃ。受付にいくぞ!」
「お、おう」
ウェスタに押されて受付に行くと、受付さんに驚かれた。
「ちょうどおよびするところでした。よくタイミングがわかりましたね」
「ええ、まぁ」
「こちら換金結果になります」
パット見た感じ、今回は20万かと思っていたが、桁が一つ違った。200万!? Bクラスの魔石とかめっちゃ高価なんだな。
「それと支部長代理がおよびなので奥の部屋にどうぞ」
と、いうわけで、奥のほう、前に泊さんに連れていってもらった場所に行くと、前に久蔵支部長が腰を掛けていた椅子に一人の女性が座っていた。
「いらっしゃい。夜見さんとウェスタさん。私は支部長代理の佐藤です。話は小鳥遊さんから聞いてますよ」
支部長代理の方は佐藤さんというらしい。それで小鳥遊とは誰のことですか。
「小鳥遊は受付さんのことじゃぞ」
マジ? いわれてみればそんな苗字だった気がする。というかウェスタ、会話はしてないと思うけどしっかり名前覚えてたんだな。
「久蔵支部長にも先ほど連絡を取りまして、もし敷地内にできたのであれば、お二人に調査を依頼したいそうです。なんでも面倒な申請等をしなくて済むからと。もちろん報酬は出すそうですよ」
なるほど、今回のダンジョンの所有権は俺らにあるわけだから、俺らがそのダンジョンに入る分には申請等は必要ないと、そういうわけなのだろう。いわれてみれば確かにそうだ。
「ウェスタ、いけそうか?」
「ちと厳しいが、やり切って見せるのじゃ」
「そういうわけで依頼、受けます」
「とても助かります。ありがとうございました。では後日、調査報告をお待ちしています。くれぐれも無理はなさらないでください。支部長も調査にて病院に行く羽目になったので」
そういえば調査に行って救助されたとか言ってたな。
「承知しました。では失礼します」
ウェスタと共に協会を出る。
「ウェスタ、明日から調査、始めていいか?」
あまり長い間家を空けたくないしな。掃除とかいろいろしないといけないし。
「構わんのじゃ。しかしそうなると配信はいったんお休みじゃな」
そういえばそうだな。でもみんな事情を話せばわかってくれるだろう。取り合えずSNSに向けていろいろ発信しておかないと。




