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ドラゴンズダンジョンアタック

 翌日、俺とウェスタは前にも向かったCクラスダンジョンに来た。


 今日のダンジョン攻略配信はここで行うわけだ。ウェスタのステータスは軽くSクラス探索者の10倍以上あるので、よっぽどのことがなければ事故は起こらないだろうという判断で、今日はボスの元まで行くことにした。


 まぁ一応毒消しの薬草という保険も買ってきてはいるけどな。主に俺用。


 ウェスタが洞窟の中に魔法の炎を浮かばせ、光源を確保する。配信用だな。


「さ、主殿、配信を始めるのじゃ」


「あーいよ」


 ウェスタが早く配信を始めたいようなので、俺はスマホから配信開始のボタンを押す。


「こんにちはなのじゃ~! 『ウェスタン』のドラゴン、ウェスタじゃよ! 今日はCクラスダンジョンの攻略に来たのじゃ。概要欄に書いてあるとは思うが、凸行為は禁止じゃ! どこのダンジョンかわかっても絶対に来ちゃダメじゃぞ! それじゃあ探索、始めるのじゃ!」



コメント

『待ってました!』

『今日もかわいい!』

『ドラゴンの戦闘、見てみたいな』

『何、この子ドラゴンなの?』

『浮いてる人魂みたいなの何?』



 まだたった二回目の配信なのに、めちゃめちゃ配信慣れしている人感を感じる。すごいなウェスタ。これは天性の才能なのかもしれない。


 ウェスタが明かりを浮かべながら、洞窟を進んでいく。俺と探索したときと違ってゆっくりだが。まぁあのハイペースでやってたら配信どころじゃない。それに探索というか周回だしな。


 すると、目の前に一匹の魔物が現れた。現れたのは前と同じく、ストーンリザードだ。


「お、さっそく一体目の魔物が現れたようじゃな。あれはストーンリザード。Dクラスじゃ。石のように固いうろこと、そのうろこを前方に飛ばすというのが特徴じゃな」


 ウェスタが魔物の解説をしている。詳しいな、と思ったが、ウェスタの目をよく見ると魔法陣が浮かび上がっていた。


 あいつ鑑定の魔法でカンニングしてやがるぞ!?



コメント

『解説サンクス』

『詳しい』



 コメントには気が付いていると思しき人はいない。まぁそれもそうか。異世界の魔法だ。気づくほうがおかしい。


 ばれなきゃなんでもいいか。いや、カンニングはよくないけど。


「ではさっそく戦っていこうと思うのじゃ。よーく見てるのじゃぞ! 『変身』!」


 ウェスタが声を上げると同時に昨日もやって見せたエフェクトが現れ、一瞬カメラからウェスタの姿を隠す。


 エフェクトが消えたその時、ウェスタには角、翼が生え、手も竜の鉤爪のものになっていた。特撮の変身かよ。いや、めっちゃクオリティ高いしかっこいいけども。



コメント

『まじかよ!』

『かっこええ。さすがドラゴンや』



 コメント欄からの評価もおおむね好評。そして、ウェスタはそのまま敵に向かって歩を進める。


「儂の戦い、よく見ておくのじゃぞ!」


 そういったウェスタは一瞬でストーンリザードに近づき、ストーンリザードを切り刻んだ。


 多分、爪でひっかいたんだろうが、まったくもって見えなかったな。



コメント

『あれ、もしかしてラグい?』

『いや、多分ウェスタちゃんが早すぎるだけだな。俺の回線は正常だ』

『見えねー!』



 最新の高性能カメラを買ったとはいえ、ウェスタの動きは速すぎてとらえられていない可能性がある。そこに関しては少しもうしわけないな。


「まぁ物理に関してはこんな感じじゃ。あとは魔法じゃな。次に魔物が来たら軽く魔法を使ってみるのじゃ」


 そういってウェスタは先に進み始めた。俺もチャンネルのいろいろを確認しながら先に進む。ちなみに今の同時接続は1万に届きそうなほど。チャンネル登録者も5万に届いた。ウェスタ、やっぱり人気になったな。


「お、次が来たのじゃ。次もまたストーンリザードじゃな。とりあえず魔法をお見舞いしてみるのじゃ。『炎獄』」


 ウェスタが手をかざすと、ストーンリザードを中心に炎の柱が立ち上る。その柱はかなりの広さと高さを誇るこの洞窟の天井まで届いている。少し離れいてるこちらにまで熱気が来る。


「熱っ」


 つい口に出してしまった。



コメント

『さっきのは見えなかったからあんまわかんなかったけど、こっちはやばい。マジでやばい』

『これでできんの日本に何人いるの?』

『Sクラス連中じゃないと無理でしょ。炎系のSクラスは四倉さんだけだし、四倉さんくらいじゃね?』

『ウェスタちゃん、えぐい。そして主は熱いらしい』

『主かわよw』



 コメ欄で何やら議論が始まっていた。確かにそうだな、四倉さんはこれくらいならできそうではある。あと俺かわよとか言ったやつ出てこい。


 ウェスタは魔石を回収してカメラに向かってこんなことを言った。


「そこそこ弱めの炎魔法ですまんのう。ダンジョンの中であまり炎を使うとよくないのじゃ。そこは我慢してほしいのじゃ」


 あれが、弱め?



コメント

『弱めとは』

『弱めじゃねぇよ……』

『あれ以上あんの?』

『もう化け物ってレベルじゃねぇぞ』

『主がどうやって契約したのかめっちゃ気になる』



 コメント欄も俺と同じく困惑しているようだった。そしてたまたま目にはいったコメント、俺とウェスタの契約についてだが、それはしばらくは話さないつもりだ。


 理由もちゃんとありはする。まぁそれは今後のお楽しみだな!

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