表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/63

本物

 自分の顔をぺたぺたと触る。

 不思議なことにVRゴーグルは装着されていないようだ。

 

 新型だ。新型だから触れないんだ、とヤスは思いたかった。

 

 無理だった。


「は……ははは、はははは……」


 知らず、笑いがこぼれていた。

 目前の様子はリアル過ぎる。



――断じて着ぐるみとか仮想現実とかのチャチな造り物なんかじゃねー、本物の……本物の?



 化け物だ。モンスターだ。そうとしか思えない。



――めっちゃバリエーション豊富だな。搾取じゃねぇか。コンプするのに何回ガチャまわさせるつもりだ。ふざけんなよ、おい。ふざ、ふざけんなよ……!?



「くくくく……ははははは、ふははははははっ!!」


 笑いが止まらない。パニック状態に陥っていた。

 周囲のざわめきは次第に大きくなり、次第に聞き取れるようになってきた。


「おい……わ、笑ってやがるぜ……あいつ」

「殺られた……が、殺られちまったぞ!!」

「に、人間じゃないのか!? 人間が……」



――何だ? 何だよ、意味不明だろ、それじゃっ!? 俺にもわかるように説明してくれーっ!!!!



 自分の笑い声が邪魔で、そもそも聞き取りにくい。

 ヤスがそう思っても止められなかった。哄笑を途切れさせたのは、突然の激痛だった。


「――あがっ!? いた、痛てててっ!?」


 痛みは全身に広がり、ヤスは膝をつく。

 幸い、ほんの数秒で消えてくれた。


「は――? な、何じゃこりゃあっ!?」


 己の姿にヤスは驚愕した。

 裸の胸元に奇妙な紋様が刻まれていたのだ。まるで入れ墨だった。

 

「い、今の痛みで彫り込まれたのか……!?」

 

 驚いたことに、紋様そのものには見覚えがある。

 

 胸の真ん中でかっと目を見開くドラゴン。

 これはまだいい。絵柄がメッセンジャーアプリのスタンプのようだが、まだ許せる。


 しかし、ドラゴンをぐるりと囲む幾何学的なマークは――


「ラーメン丼の模様じゃねーかっ!! 丼マークの入れ墨って……か、恰好悪ぅっ!」


 手首や首も同じ模様で囲まれていた。

 指先で擦っても消えない。本物の入れ墨のようだった。

 

 

――おい、待ってくれよ。まさかこれ、一生消えないのでは?

 

 

 いやな想像に背筋が寒くなる。

 丼マークの入れ墨をしたヤクザなぞ、なめられるに決まっている。

 

 こんなの誰だって笑う。俺だって笑うわ、とヤスは思った。

 

 だが、そんなことより今は――


「いい紋様(ガラ)キメてるね、キミ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ラーメン丼www 逆にカッコイイかも!?(←)
[一言] ヤス…お気の毒さま(笑)
[一言] ラーメン柄? 中華風異世界でしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ