驚きのエロさ
感極まった様子になるアスモデ。
ヤスの方は言葉を吐き出すのもままならない。快楽に翻弄され、視界も思考もまだ乱れていた。
「なん――何だ、それ……ど、どういう……」
「たまーにいるのよ、他の世界での記憶を持った人間、転生者が。そういう人達の精ってものっ凄く、イイの!! あたし達の間じゃ、奪い合いになる位にね! 転生者は他の世界で死んでから、こっちにきて生まれ変わる。魂だけになると物質世界とのつながりが薄くなるから、迷い込んじゃうのかもね。でも――」
アスモデはヤスの頬に軽くキスをした。
雷に打たれたかのような、びりっとした快感が身中を駆け巡り、ヤスはうめいた。
「キミは違う! ヤっちゃんの匂いは転生者よりもずっと濃い。まるごと――魂と肉体が一緒に、つまり生きたまま、こっちへ転移してきた。そうでしょ!?」
こちらで生まれ変わっても記憶が残っていなければ、転生者とは呼ばれない。
魂以外にもとの世界での要素がどれだけ残っているかが、重要なようだ。
「身体がある分、魂だけの転生より転移にはかなりの時間がかかったはずよ。キミには体感できなかったでしょうけど――」
瞳をらんらんと輝かせ、アスモデは語り続ける。
しかし、ヤスはもう話を聞くどころではなかった。
――ダメだ……ヤバい! こいつの匂いで頭がぐちゃぐちゃになっちまうっ!!!!
放たれているのは、激しい情欲の香りだ。
アスモデのフェロモンはむせ返りそうなほど濃厚であった。
「素敵だわ――本当に素敵!! キミがどれだけイイか、想像もできない。まさに運命の出会いね。この日の為に生まれてきたって、思えちゃうわ! あたしがどきどきしているの、わかる?」
早鐘を打つアスモデの鼓動は、ヤスにも感じられた。
極度に興奮した女の匂いに思考がどんどん乱されていく。
ただ美人というだけではない。フェロモンをまとったアスモデはエロい。いや、ただエロいなんてものじゃない。ドエロかった。人類では到達し得ない驚きのエロさだ。ドスケベ過ぎるのだ、ボタンがパァンと弾け飛ぶくらいに。
サキュバス、侮りがたし!!!!
と、ヤスの脳裏に太い筆文字で書き記されてしまうほどであった。
「だから抱いて欲しいの、ヤっちゃんに。たくさん、して欲しい。夜明けまでずっとしよ? いいでしょ? ね、お願いっ!」
「お、おう……まかせろっ!!」
こんな美女にせつなく懇願されては、もはや断ることなど不可能だ。
というか、ヤスの方ももはや到底おさまりがつかない。マキシマイズされた分身は、いななく悍馬のような棹立ち状態。熱狂的なスタンディングオベーションであった。何度だってアンコールに対応できそうだ。拘束から解き放てば、びくびくとヘッドバンキングをかますに違いない。
「やったあっ! う、嬉しい……ありがと、ヤっちゃん!! うんとサービスするよ! いっぱい、楽しもうね!!」
喜びが弾けたのか、アスモデはぎゅっとヤスを抱き締めた。
細くしなやかな肢体が熱くほてり、汗で薄っすらとぬめっていた。触れているだけでとても気持ちがいい。もはやアウトオブバウンズ覚悟で初打を放ってしまいそうだった。
――マジかよ、俺ってそんなレアキャラなのか! なら、この先は超絶モテモテ人生まっしぐらじゃねーか!!!!
ヤスはこみ上げる笑みを抑え切れなかった。
アスモデほどの美女でさえこうなのだ。直接効果があるのはサキュバス限定だろうが、使いようはいくらでもある。
まあ利用方法は別としても、モテるというのは若い男には相当にプライオリティが高い。
考えてみれば、魔王とは魔物のトップだ。頂点なのだ。もはや成り上がる必要もない。安住すればいいだけの地位だ。上でふんぞり返り、サキュバスとエロ三昧するだけの簡単なお仕事なのだ、きっと。
――こっちの世界にきてよかったぜ、うひひひひ! 異世界転移は最高だなっ!!
アスモデは上体を起こしてヤスに馬乗り状態になると、ぽんと掌を合わせた。
「あ、そうそう。あたし、悪魔だから契約主義なのよね」
「ええっ? やる前に何か儀式とか署名とかいるのか……?」
ここでお預けとはあまりに殺生でござる! と、ヤスは思ったが、アスモデはひらひらと手を振った。
「あはは、ないない。契約だけど口約束でいいんだよ。ただ重要事項説明をしてからじゃないと無効になっちゃうから、ちゃちゃっと話しておくね」




