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闇魔術師は溺愛希望~しかし私はあなたの愛犬ではありません~  作者: 竹輪㋠


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ニッキーとジャニス1

 カタカタと私とフロー様はそのまま馬車に乗ってグリムライ国に向かった。

 私はもう考えるのを辞めて、フロー様の膝の上に頭をのせた。フロー様も無言で私の頭を撫でてくれていた。

 色々と考えるのは性に合わない。

 この想いがニッキーのものだったとしても。

 私はこの温もりが欲しい。

 カザーレンの屋敷に着いたら、どうしていきたいかをはっきりしよう。

 そう決心して目をつぶった。




 屋敷に着くと私はすぐにお風呂に入れられて、少し眠るように言われた。

 疲れていては頭も回らないとフロー様に諭されて、その日は眠った。

 そうして次の日、目覚めると遅い朝食を食べ、無事にアルベルト兄たちが麻薬組織を壊滅できそうだと報告をもらった。


 午後からみんなの前で説明するとフロー様が言って、魔塔長とリッツイ姉さんが屋敷に呼ばれてやってきた。

 魔塔長は魔法を解くことができたのか、グローリア様の本を抱えていた。


「さて、なにから話せばいいかな」

 みんなを目の前にフロー様が顎に手を当てて考える仕草をした。

 そして、魔塔長が持っている本を見て視線が止まっていた。

「あれ、どこで、それを?」

 尋ねるフロー様に魔塔長のかわりに私が答えた。

「庭師のザイルに私が託されたんです。お母様が温室に魔力適合者が現れた時に渡すようお願いしていたそうです」

「温室……ああ、そうなのか。そういえば母が作った蝶がいたね」

 フロー様はなにか思い出したのか目を伏せてそう言った。


「フローサノベルド、この本が闇の魔術の蘇生術であれば、私はお前に処罰を与え牢獄へと追いやったかもしれん」

 魔塔長の言葉で私の体は強張った。

 もちろんフロー様に処罰を与えたくて本を渡したのではない。

 ハラハラしているとフロー様がフ、と笑った。

「その必要はないでしょ? それは僕が書いた真っ赤な偽物なのだから」

「え?」

 驚いて顔を見ると魔塔長が苦笑いしていた。


「ローズブレイドのお嬢さんから受け取った時は、お前を捕まえにゃならんのかと思って冷や汗をかいたわい……」

「偽物?」

「これは僕が作った本だから」

「ええ?」

「確か、八歳くらいの時かな?」

「八歳の子が、こんな本を作れるのですか?」

「元はなにか難しいことを並べて書かれていた解剖学の本だよ。僕はところどころを母さんの興味を引く文章に変えただけだ」

 なんてことのないように言うフロー様だが、八歳児が作ったなんてにわかに信じがたい。

「フローサノベルドなら出来たろうな。しかし、どうしてこんな禁術書に見える本を作ったのだ」

 魔塔長は不思議そうにフロー様に聞いた。

 フロー様は目を伏せたまま言葉をつづった。

「表面上は落ち着いていたけど、母の心はすでに壊れていたんです。父の面影ばかり僕に重ねて、幸せな日々を戻せないかばかり考えていた。僕がでたらめの本を書いたのも、片っ端から母が術式を試していくのを止めるためでした」

 当時を思い出したのか魔塔長が下を向いて肩を震わせていた。

「そうだったのか。確かに日記を読ませてもらっても……おかしくなっていたとしか思えない。私たちはてっきり立ち直ったのかと思っていたが、グローリア様は……ルートの死からは逃れることはできなかったのだな。そして……病に侵されてしまった」

 ポタリ、とポルト様の目から涙が落ちた。

 慰めるようにリッツィ姉さんがその背中を擦った。


「……母は、最期まで僕の心配をしていました。自分と同じ魔力適応者を探そうと魔道具を作ったりしていました。そして自分が死ぬまでに魔力適合者は見つからないと悟り、僕にニッキーを与えました。きっと、どうにか僕を一人にしないようにと考えたのでしょう」

 話をするフロー様の手が震えていた。

 私は隣に行って、両手でその手を包んだ。

 フロー様はそんな私を見てから話を続けた。


「十歳の時に母が亡くなって、僕宛ての遺書の他に薄い封筒が一枚が入っていました。それには『寂しくなったら開封してください』と書かれていました。当時の僕はすぐに開けようとしたけれど、封は開かなかった。なんども試して諦めた僕はしばらくそれを忘れていて……ニッキーが亡くなった時に封筒が僕の手元にきて開きました」

「魔道具だったの?」

 リッツィ姉さんが聞くとフロー様が頷いた。

「母は器用な人でしたから、条件付けしていたのでしょう。その封筒の中には十歳の頃学校で流行った霊を呼び出すお遊びの表が入っていました。ニッキーの寿命が尽きた時、僕がどうなるか心配して用意していたのでしょうね。でも、僕だって、そんなお遊びでニッキーの魂を呼び出せるなんて思っていなかった」

「まさか、あの、魔法の大きな痕跡は……子供のお遊びの術式だったっていうのか?」

 なにかに気づいた魔塔長が驚いた声をだした。


「僕は純粋にニッキーにお別れを言おうと呼び出しただけです。かなり魔力は注いでみたけれど、なにも起きなかった。コインは微動だにしなかったんです。しかしそれから数日後、ジャニスがニッキーの魂に取りつかれて僕の元にやってきました」

「どういうこと? 呼び出しは失敗したのよね。おば様はいったいどういうつもりで……」

「母はきっと本気でニッキーの魂と話せるって信じていたと思いますよ。表は見てもらっていいです。でも、きっとなんの変哲もないはずです」

 フロー様は魔塔長に説明すると当時使ったという表を見せた。

「ふむ。確かに……」

「私にも見せてください。封筒は魔道具だったんでしょう? だったら……」

「正確には封筒は普通の紙だよ。封筒を閉じていた封蝋が魔道具なんだ」

 今度はリッツィ姉さんが表を手に取って見ていた。

「本当だ……ふつうの……」


「だから、僕にも謎なんだ。どうしてニッキーの魂がジャニスに入ったのか」

 そう言ったフロー様は少し困ったような顔をしていた。




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