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闇魔術師は溺愛希望~しかし私はあなたの愛犬ではありません~  作者: 竹輪㋠


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魂の浄化2

「人の体に入り、定着する魂はごくまれに存在するようだ。禁術の蘇生により分離された魂はその入れ物を探して浮遊する。しかしそれがどうやって入る体を選ぶのかはわかっていない」

「では、フロー様が意図的に私の体にニッキーの魂をいれてはいないということですか?」

 私が質問すると答えてくれたのはリッツィ姉さんだった。

「今までのフローサノベルドの行動を見てもそれはないんじゃない? 意図的にジャニスの体を入れ物にしようとしたなら、あなたを先に捕獲する必要があるもの。いくら容姿がぴったりだったとしても、グリムライ王国の蜂は選ばないわよ、おっかない」

「そんなものですかね?」

「フローサノベルドがニッキーの死後悲しみの中、人嫌いを押えてまで、魔力適合者を探し回るとも思えんな」

 魔塔長にもそう言われて、たしかに部屋に引きこもっていたくらいのフロー様がそんなことをするとは思えないな、と思い直した。

「じゃあ……たまたま?」

「それは本人に聞くしかない。ともかくお嬢さんの中の魂は浄化するとしよう」

 魔塔長が呪文を唱えだし、紙に書いた魔法陣を私の胸の上に置いた。

「浄化は数回に分けて行うのでな」

「そう、ですか」

 ほわり、と胸のところが熱くなるのを感じた。急激に眠くなっていく……。



 大好きな、私のフロー……私の大切な子。

 泣かないで。私も悲しい。

 お母様はずいぶん弱っていたから、こんな日が来るのは知っていた。

 死を避けることはできない。

 悲しいけれど、その日がきてしまった。

 フロー、ご飯をたべて。

 あなたにまでなにかあったら私だって生きていけない。


 目の周りが擦りすぎたのか真っ赤になって腫れている男の子。

 きっとあれは十歳のフロー様だ。

 部屋の隅で膝を抱えている。

 頬を舐めて顔を上げさせようとしたけれど無理だった。

 私は背中を彼につけて丸まる。

 ただ温もりを与えることしかできない。


 元気になって、フロー。

 みんながあなたのことを心配してる。


 鼻をすする音が収まって撫でろと頭をこすりつけると、ようやくフロー様が抱き着いてきた。

 『ニッキー……お母様が……』と繰り返す彼が哀れでならない。

 私が守らないと。

 フロー……。

 泣かないで……。


「……ス、……ニス……ジャニス!」

 はっ……。

 リッツィ姉さんの声で目が覚めると、魔塔長と二人で心配そうにのぞき込んでいた。

 ゆっくりと体を起こそうとするとリッツイ姉さんが手助けしてくれる。

「大丈夫? 気は確か? ええと、ジャニスよね」

「……はい。間違いなく、ジャニスです」

「施術しだした途端、眠りに落ちたようだな。そんな記述はなかったのじゃが、どんな気分だ?」

「ええと、夢を……見ました。私はニッキーで、お母様を亡くして悲しんでいるフロー様を慰めようと奮闘していました」

「……そうか。ニッキーの魂の記憶なのかもしれないな」

「はい。あの、この施術は何回くらい必要なのですか?」

「書物によると魂の年齢の数だけとある」


「ニッキーは十五歳で亡くなったのですよね……」

「そうなるな」

 では、あと十四回くらいか。

 残り全部の処置をフロー様に見つからないようにとは、難しそうだ。しかし、何事も始まらないことには成し遂げられない。

「お手数ですが、残りもよろしくお願いします」

 しばらく診察台の上で気持ちを整えて、魔塔を出た。

 心配したリッツイ姉さんが付き添ってくれる。

「ジャニス、大丈夫? その、あなたが目を覚ました時に泣いていたから」

「小さな……小さなフロー様が可哀そうで。なにもできない自分が無力で歯がゆくて」

「……そう。きっとニッキーはそう思っていたのね」

「そうだと思います」


 リッツィ姉さんと別れて屋敷に戻って自室に籠ると、私は我慢できなくなって泣いた。

「わあああああっ……」

 タオルに顔を埋めて声を上げて泣くのは久しぶりだった。

 でも、あんな疑似体験をしてしまって、悲しくて、辛くていてもたっていられなかった。

 大好きだったお母様……。

 この世で一番大切なフロー。

 ニッキーの想いに私はつぶされてしまいそうだ。




「フロー大好き!」

 夜、屋敷に戻ってきたフロー様に抱き着く。

 昼間にあんな経験をしてしまったので、演技にも力が入ってしまう。

 ニッキーがいなくなると知ったら……。

 あなたはまたあんなふうに泣いてしまうのだろうか。

 ちゅっ、ちゅっ、と頬に何度もキスをする。

「……今日は積極的だね」

 そんなふうに愛おしそうに笑うフロー様を見て胸が痛んだ。


 この笑顔を守りたいのに。

「どうして泣いているの? 寂しかった?」

 私がしていることは正しいのか。

 フロー様には幸せになってもらいたいのに。

 こらえきれなくて零れた涙を見てフロー様がオロオロとしている。

「愛しているわ、フロー……」

 自然とこぼれた言葉がニッキーのものでないことに自分でも驚いてしまった。


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