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闇魔術師は溺愛希望~しかし私はあなたの愛犬ではありません~  作者: 竹輪㋠


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偽りの一週間5

 それからザイルが温室の中を案内してくれた。

 小さな小川は魔力装置で半永久的に流れ続けるらしい。

 フロー様のお母様はあまり魔力はなかったが手先が器用な闇魔術師だったそうで、温室の温度調節する装置も小川の装置も彼女が作ったものだそうだ。


 この温室に感動した人の何人かは真似をして作ろうとしたようだが、ここまでこだわりぬいたものにはならなかったそうだ。

 王も国一番だと認めるほど美しい温室だとザイルは誇らしげに語った。

 こんなに愛情を注いだ温室も、きっとフロー様のために残してあげたかったのだろう。

 けれどフロー様はここにきてお母様の気配を感じるのが辛いのか、彼女の死後、足を踏み入れることも無かったようだ。かわりにニッキーが時々顔を出していたらしい。


「わあ……蝶も飼っているのですか?」

 小川の側を歩いていると虹色の蝶が飛んできて私の指にとまった。

「あ、あの……お嬢様」

 それを見たザイルが驚いた顔をして固まっていた。

 あまりに動かないので心配になったところで、ちょっと待っていてくれと言い残すとザイルがどこかに消えてしまった。


「え、なに?」

 蝶は私の指から離れなかった。

 羽をはためかせて優雅にとまっている。

 いつまでも止まっているので軽く指を振ってみたが、どこかに飛んで行くつもりもないようだ。


「ザイルはどこに行ったのかな」

 蝶に問いかけても当然ながら何も言わない。

 ゆっくりと羽を揺らしているだけだ。

 仕方なく待っているとゼーハー、ゼーハーと息を切らしながらザイルが帰ってきた。

 腕になにか箱を持っている。


「ハア、ハア……こ、これを」

 ずいぶん息が切れているが大丈夫なのか? 

 そんな心配をしながら差し出された箱を手に取った。

 美しい木彫りがしてある箱だ。


「とりあえず、テーブルのところまで戻りましょう」

 ザイルを心配しながら箱を持って、きた道を戻った。

 彼の肩はまだ上下していて、どれだけ急いできたのかがわかる。

 虹色の蝶は箱を手に取る時に飛んで行き、今度は私の頭に止まっていた。

 テーブルに着いて、座るように勧めても庭師はそれはできないと拒否した。


 仕方なくコップに水を入れて渡すと、立ったままのザイルはそれを一気に煽った。

 あまりの勢いにどうかゆっくり飲んでほしいと思う。

 案の定ゲホゲホと咳込んだのでその背中を擦った。


「もしかして、この蝶に何かあるのですか?」

 落ち着いてからそう尋ねるとザイルが話し始めた。

「その蝶は奥様が作られた蝶です」

「へっ!? こ、この蝶が?」

 作ったと言われて蝶をもう一度観察する。あまりに精巧にできているので本物にしか見えないが、触覚がやや太くて言われてみれば人工的に見える。

 しかし、それくらいで、羽も足もどう見ても本物に見えた。

「そして、その蝶が寄ってくるのは坊ちゃんの魔力と非常に相性がよい人になります。魔力の知識のない私にはわかりませんが、奥様がそうおっしゃっていました」

「相性? そうは言っても私は魔力なんてないですよ?」

 そもそも魔力を持って生まれる人は少ないし、繊細で賢い人が多いと聞く。

 大雑把で単細胞な騎士を多く輩出するローズブレイドの家系に魔術師の血が混じったことはなさそうだ。


「奥様が言うには魔力というのは相手から受け取り、質を変えて戻してしまうものなのだそうです。ですから相手に魔力がなくとも相性はあるのです」

「ふむ……」

 私の中には眠ったニッキーがいるから、蝶が反応したのかもしれない。


「そして、この箱は……ここにきて蝶が止まる人物かいたら渡してほしいと預けられていたものです」

「へっ!? そんな大切なもの受け取れませんよ!」

「奥様は『それがフローのお嫁さんになる人だったらいいのに』とおっしゃってました。あなたは坊ちゃんのご婚約者です。まさか……こんな奇跡が」

 その後オンオンと泣き出したザイルを見ながら途方に暮れる。

 違う。私ではない。

 ニッキーに反応しているのだ。

 それなのに私がその箱を受け取るなんて罰当たりもいいところだろう。


「あの……本当に」

「この箱は……ズビッ……奥様の魔法がかかってます。ですから、あなたにしか開けられないのです……ズビッ……」

「ハ、ハハハハハ……では、開けれなかったらザイルに戻しますね」

 ザイルがあまりにも必死なので断れそうもない。

 なんとか理由をつけて返さないと。

 ニッキーが私の中に居るとはいえ、開けることなどムリだろうと木箱を受け取った。


 しかし留め金に手をかけると、力をかけてもいないのにパチンと音がして箱が開いた

 ……もう、ザイルは感激で声が出ないようで、反対に私は罪悪感で息が詰まった。

 そうして、ちょっとした押し問答の末、結局箱を受け取ることになった。

「うう、どうしよう。何が入っているのだろう」

 ずっしりと重いそれは、ザイルに誰にも見られない方がいいと言われて自室に持って帰った。


「とにかく、中になにが入っているかだけ、確認しよう」

 十数分テーブルの置いて眺めていたが、やっと決心してそれを開けることにした。

 宝石や金塊だったらフロー様に渡せばいい。


 緊張しながらそっと蓋を開けると、そこには数冊の本とアクセサリーが入っていた。



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