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12 イベント告知

「そういえば、ライオネスさんは東京の女子高生なのよね?」

「ええ。パオングさんも?」

「いえ、私は年齢的には中三です」


 私たちはだいじんさんと中山さんを残して療養所内のフードコートに来ていた。

 2人は何故か難しい顔をして話込んでいたもので、よほど私が不甲斐ないのかと思ったが、どうもそういう話ではないようで後から来るそうだ。


 VR療養所という施設がどういうものなのかはよく分からないが、施設内のフードコートは大型ショッピングモールに入っているものと大差ない。

 だが、ズラリと並べられたテーブル席はそのほとんどが空席で、僅かにいるお客さんはほとんどが子供。


 他に子供たちの相手をしている老人もいるが、それでもなんとも不思議な光景ではあった。


 とはいえ他の客にばかり気を取られているのもどうかと思い、私たちもテキトーに店舗を見て回りながら何を食べようか考えていると、パオングさんが声をかけてくる。


 パオングさんは私と同じくらいの背丈に大人びた顔付きをしているせいか同い年くらいかと思っていたのだが、3つも年下であったよう。

 年齢的には中三とか回りくどい言い方は気になったものの、それよりも気になっていたのは彼女が何か期待の籠った目で私の方をチラチラと見てくる事。


「パオングさんはキャタ君と同じで沖縄住み?」

「ええ、まあ……」

「ふふ。つまり東京の華の女子高生の間で何が流行っているのか気になるってところかしら?」

「……まあ、そんなところです」


 一緒に模擬戦をやったくらいだし、もっといえばこないだのバトルアリーナイベントでも対戦経験があるのだからと距離を詰め過ぎただろうか?


 いや、パオングさんは俯いてしまったものの、耳まで赤くなっている。


 よし!

 ここは模擬戦に付き合ってもらった借りもあるし、お姉さんとして東京の女子高生のリアルというやつを伝授してさしあげよう。


 そうと決めた私はまっすぐに牛丼屋のブースへと向かっていく。


「なるほど。服やらアクセサリーやら化粧品にお小遣いを使うために食事は牛丼屋で手堅く済ませるってとこかしら?」

「いやいや、ウチの馬鹿を甘くみない方がいいですよ?」


 何やら後ろでマモル君が私を馬鹿にするような事を言っているのが聞こえるが、私が注文したものを見てもまだそんな事を言えるのだろうか。


 だが、かといってパオングさんの言っている事も的外れ。


「…………」

「…………」

「ええと……?」

「何ですか、これ?」

「うっわ! すっげぇ!!」

「その発想は無かったわ!! 俺もやってみよっと!」


 私が注文の品をトレーに乗せて席に戻ると、皆の反応は両極端であった。


 ジーナちゃんとキャタ君は絶句して空いた口が塞がらないといった塩梅、マモル君とパオングさんも信じられないものを見る目で私とトレーの上の品を往復させている。

 一方、トミー君にパス太君はノリの良い男子らしくはしゃいでいた。


「ええと、説明して頂いても?」

「いいけど、見たら分かるでしょ? これが牛丼大盛りで温玉の小鉢と……」

「そこまでは分かります。で、こっちのお皿は……?」

「牛皿の特盛よ」


 さすがにマモル君は私の補助AIだけあって付き合いがいいというか、見たとうりの物に対してわざわざ説明を求めてきた。


「牛丼あったら牛皿いらなくないですか? ってのは聞いたらいけないやつです?」

「マモル君ったら馬鹿ねぇ。PFCバランスって言葉は知ってる?」


 タンパクプロテインのP、脂質ファットのF、炭水化物カーボのCをバランス良く食べましょうというのは食育の基本。


 牛丼の特盛だと炭水化物が過剰過ぎるという女子高生らしい配慮にパオングさんは何も言えなくなっている。


「何、ドヤ顔キメてんですか!? パオングさんは流行りのオシャレなスイーツとかを教えてほしいって分かりませんでしたか!?」

「んなわけないでしょ!? ってか、どんなにオシャレな流行り物でもフードコートに入ってる時点でドヤれないのよ!!」

「なるほど! 牛丼にあえて牛皿を追加する事でツッコミ待ちの状態になってSNSで盛り上がろうって話ですね!」


 口の端にクレープのホイップやらチョコソースを付けたマモル君は目を吊り上げてがなり立ててくるし、パオングさんは変な解釈をしているし。


 だが、さっそく私の注文を真似して牛丼+牛皿のコンボを頼んできたトミー君とパス太君はさっそくがつがつと丼まで食いつくさん勢いで食べ始める。


「いい? 牛丼に牛皿を追加すると、とても美味しいのよ!」

「肉とメシのバランスを考えなくていいってのは良いな、これ!」

「うん! これは良い!」

「あ、牛皿の方をツユダクにしてもらうと、牛丼を途中からツユダクにする事もできるわよ」


 2人に混じって私も丼をかっ込みはじめると、パオングさんたちも釣られて食欲が湧いてきたのか、それとも模擬戦でお腹が空いていたのか言葉少なげになって各々が注文してきた物を食べ始めた。


 マモル君はフレッシュジュースにクレープとドーナツ。ジーナちゃんはジュースにドーナツを1つだけ。パオングさんは大人っぽく見える彼女らしくコーヒーにチュロスを。

 元気印の男の子という印象のキャタ君は讃岐うどんに天ぷらをトッピングしたものだけというのは意外だった。


 それからしばらくしてだいじんさんと中山さんもやってきて、2人に付き合っていたマサムネさんも合流して皆でこれからの事を話していると、近くの柱に駆けられていた大型モニターのチャンネルが急に切り替わる。


「うん? 何かしら?」

「ええと、ああ、新イベントの告知みたいですね」

「βの時はPvPの次の週はPvEじゃったけど、今回は何じゃろな?」


 勇ましいBGMとともにVVVRテック社のロゴに続いてゲーム内の傭兵組合のロゴが続き、そこまではいいのだがそこからさらに中立都市とサムソン、トヨトミ、ウライコフのロゴが続いていく頃にはβ版経験者のだいじんさん、マサムネさんの表情に疑問符が浮かんでいた。


『傭兵諸君!! 我々が住まう惑星トワイライトへ宇宙イナゴの接近が観測された!

 他勢力がテラ・フォーミングした惑星を襲い資源を根こそぎ奪っていく彼らを前に三勢力は一時的に休戦し、イナゴどもへ対抗する事を決めた。中立都市議会も三勢力に協力し、傭兵組合を通じ傭兵を派兵する事を決定……』


 BGMと同じく勇ましく、そして野太い男性の声でストーリー解説が流れ始めるも、せっかちな私にはナレーションを待っているのは性に合わない。


「マモル君……」

「はいはい……」


 マモル君がタブレット端末を取り出して少し操作して差し出すと、やはり運営の公式ウェブサイトにもイベント告知がアップされていた。




 新イベント「宇宙のジャッカル」のお知らせ。


 開催日時 4月27日(土)8:00~4月28日(日)22:00


 本イベントは本ゲーム初となる宇宙ステージを舞台としたイベントとなります。


 各プレイヤーは各々選択した三勢力の艦隊に配備されてイベントを戦います


 イベント中、各プレイヤーがイベント中に取った行動により功績値が与えられ、イベント終了後、功績値をランキング化し、順位により豪華景品を進呈!

→イベントランキング景品の詳細はこちら!


 三勢力の宇宙艦隊には以下の特性がありますが、どの勢力の艦隊でも全ての機体の整備補給は受けられます。

・サムソン艦隊:各艦の火力と索敵通信能力が高く、手厚い援護が受けられます。

・トヨトミ艦隊:他勢力よりも艦隊の艦隻数が多く、損害をカバーしやすいです。

・ウライコフ艦隊:エンターテイメント性が高いです(笑)


 なお本イベントは宇宙が舞台となるため、一部の機体は性能の低下などが見られます。

 一例として、トヨトミランク2機体「雷電陸戦型」は雷電の宇宙用装備を撤去して軽量化した機体のため、宇宙用装備を取り付けるとランク1機体「雷電」同様の性能になります。

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