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幕間 中山さんチのお二人さん

「そろそろライオネスの読んでくれた助っ人さんとやらも来るかな?」


「あ……」


「どうした、マモル?」


「サブリナさん、えとウチの馬鹿のフレンドさんの補助AIさんからメールが来ました」


「うん? 何だって?」


「え~と……。『注意事項を2つだけ。今から行く奴は「40機足らずで山脈のようにデカい移動要塞と戦った」とかフカしてくるかもしんないけど腕は確かなのでイベントが終わるまでの付き合いだと思って優しくしてあげてください。あと不慮の事故を避けるために小さな女の子は近づけないでください』だそうです……」


「はぁ? 一体、どんなトンチキが来るってんだよ……。うん? どうした?」


「……いや、なんかどっかで聞いたような話だなと」


「あっ、あの輸送機じゃありませんこと? とりあえずジーナちゃんはトミー君と私の後ろに」


「アシモフ、お前も何かあったらカバーに入ってやれ」


「モチロンでございますとも!」


「……やっぱ、あの輸送機みたいだな。……それにしてもニムロッドU2型と話には聞いていたけれど、何だありゃ?」


「濃緑の塗装にイエローのライン。オマケに肩には日の丸のエンブレムか……」


「まるで旧軍の戦闘機というか、随分と思想強めのカラーリングでごぜぇますわね」


「まあ、それはともかく武装は……、ライオネスの機体と同じバトルライフルに銃剣、それと手斧が2本。中距離から近距離までを想定した構成みたいだな」


「ならライオネスの穴は埋められるか?」


「話に聞くだけの腕前があればな……」


「って、あのパイロット、爺じゃねぇか!?」


「…………」


「…………」


「うん? ヒロもサンタモニカもどうした……?」




「……こんなトコで何をやってますの、大叔父様?」


「え、いや、あの、その……」


「晩餐の時間に呼びに行っても部屋から出てこないから寝てるか永眠したかと思ってたらメシも食わないでゲームでごぜぇますか?」


「い、一応、雅子しゃんにおにぎり握ってもらったから……」


「まあ、お母様に? 余計な手間かけさせたって話をして『なら、いいか』なんて反応が返ってくると思いまして?」


「……すみません。でもモニカちゃんもイベントに参加してるって事は似たようなもんじゃないのかの?」


「お生憎様。ヒロミチさんがしっかり休憩とっても入賞狙えるラインを見極めて頂けているおかげで私は朝昼晩と大叔父様以外の家族皆でお食事を頂いてきましたわ」


「あ、やっぱりそこの青年は“ヒロミチお兄さん”じゃな!?」


「……90過ぎた身内が20代の男を“お兄さん”なんて呼んでいたでごぜぇますわ!!」


「あ、どもっス……。えと“総理”さんですよね……?」


「久しぶりじゃの! じゃが正式サービス版からは“だいじん”というHN(ハンドルネーム)でやらせてもらっておる!」


「ちょい待ち、でごぜぇますわ!? ヒロミチさん、何ですの、その“総理”とかいうのかは?」


「えと、だいじんさんのβ版時代のハンネというか……」


「……大叔父様。総理大臣になれなかったというのに“総理”なんて名乗ってましたの?」


「……うん」


「で、今は閣僚も議員も辞めて20年くらい経つというのに“だいじん”なんて名乗ってらっしゃいますの?」


「……うん」


「い、いいじゃねぇか!? てか、なんかサンタモニカ、なんか怖ぇよ!?」


「とは申されましてもクリスさん。一族悲願の宰相の座に座れそうだと期待されておいて燃え尽き症候群で勝手に政界から引退して、それからプラプラして私からゲーム機借りたかと思えばヘッドセットに加齢臭染みつけてきてとこういう方なのでごぜぇますわよ!?」


「あ、新しいの買って返したから良いじゃろ!?」


「あと、ついでで言うなら私のお母様にコンビニにお使い頼んでプリカ買ってこさせたり、お母様もお父様も詐欺に引っかかってらっしゃるんじゃないかと心配しておりましたわよ?」


「心配無用じゃ。プリカは全部、このゲームに課金したったわい! 年金ブチ込んでるからβじゃブイブイいわせとったわ!!」


「βテストって終わりがハッキリしてるようなもんに詐欺のカモにされてるんじゃないかって心配されるような金額を使ったんですの!?」


「いや、それはさすがに俺もドン引きだよ……」


「ひ、ヒロミチお兄さんまで……!? い、いや、ヒロミチお兄さんだって課金しとったじゃろ!? 飛燕は課金しないと手に入らんハズじゃ!」


「いや、ヒロはゲームに課金してるかもしれないけど、貯金もしてるし、休みの日には遊びに連れてってくれたりするぞ」


「……この人は?」


「ヒロの婚約者です」


「クリスさん、止めてあげてくださいませ。ウチの大叔父様はそろそろ百年(センチュリー)独身者(ソロプレイヤー)が見えてきたくらいなのですから……」


「え、ええじゃろがい!? ほれ、とっとと試合行くぞ!!」


「あ、まだ話は終わってませんことよ!?」

………………

…………

……




「なんだ、普通に爺さん強ぇじゃねぇか。 いや、普通にっていうか、メッチャ強い?」


「当たり前だ。言い忘れてたけど、マモル君がさっき言ってた40機足らずで移動要塞をどうのこうのっての、アレ、マジだぞ。俺もこの目で見たんだ」


「ふっふ~ん! 見直したかの? どうじゃ、モニカちゃん?」


「…………」


「お~い、モニカちゃ~ん……?」


「身内の後期高齢者がゲームの中で厨二病発症してましたわ……。死にたいでごぜぇますわ……」


「そういや、アレ何なんだ? 『コードナントカ発動!』ってヤツ。アニメかなんかの真似か?」


「さあ、そういうのは俺もあんま詳しくないから」


「まあ、確かにサブリナさんが『腕は立つ』と紹介してくれるだけの事はありましたわね」


「だな。なんつ~の、土壇場の格闘戦に強いっつ~か……」


「確かにだいじんさんに接近を許してしまったら、たとえ武器を持ってなくても危険ってのはβやってたトップ層のプレイヤーなら周知の事実だろうな」


「それはそうでごぜぇますけど……、なんていうか、私にはライオネスさんの戦い方に近いものを感じましたわ」


「……ほう。そのライオネスというのは体調を崩した子だったかの?」


「会わせませんわよ?」


「……え? いや、ちょ~っとモニカちゃんのお友達に後で挨拶したいな~って……」


「どうせ大叔父様の挨拶ってお得意の肉体言語でしょう? ライオネスさんには勝てませんから止めておいた方がいいですわよ? それに厨二の後期高齢者が身内なんですだなんて言えるわけないじゃないですか?」


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