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ジャッカルの黄昏~VRMMOロボゲーはじめました!~  作者: 雑種犬
第3.5章 白い連星、命の輝き
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50 艦隊戦

「うっわ……、こりゃ凄えなぁ……」


 格納庫のシャッターが開かれると、私の視界に飛び込んできたのは赤と白と黒と、それから少しの青。


 そして轟音、砲声、爆発音であった。


 ギリギリまでレーダーに探知されないようにだろうか? 敵の空中艦隊はギリギリまで高度を落とした状態から3隻のコルベット目掛けて大出力のターボ・ビーム砲を次々と撃ち込んでくるが、幸いにも今の所は命中弾は無い。


 敵の戦闘艦は主砲、副砲、対空砲とありとあらゆる砲を撃ちまくり私の視界を染め上げているのだが、「城壁」のマモルが悪さしているのか敵の砲撃命中率は0%。ある意味で驚異的な命中率といえよう。


「おう、来たか。VLSには近寄るなよ?」

「さすがはベテランだけあってこういうの慣れてんのかい?」

「んなワケないだろ! だったら型落ちの烈風なんか乗ってねぇよ。なんかもう感覚が麻痺してきたわ」


 先に甲板に出ていたローディーから注意を促されるとすぐに前方の垂直発射管(VLS)から対艦ミサイルが白い噴煙とともに飛び出していく。


 敵のミサイルは「城壁」によって封じられているが、こちらは使い放題というわけだ。


 心強いと言えば心強いが、それよりも私は自分のすぐ目の前で飛び立っていく大型のミサイルの威容に飲まれかけていたくらいだ。

 なのに随分とローディーの声が落ち着いていると思ったら、彼は既に緊張の波が過ぎ去った後であったようだ。


 それも当然だろう。

 個人傭兵(ジャッカル)志望の少女という設定のキャラクターである私には分かる。

 空母を中心とした数十隻の敵艦隊と3隻のコルベットという戦力差は均衡を欠いていたが、それでも私たちの眼下に広がっていたのは紛れもない艦隊戦であった。


 彼我の戦力ががっぷりと四つに組み合ったガチンコでマジモンの戦場。

 本来ならば個人経営の傭兵が顔を出すような場ではない。


 ベテラン傭兵というキャラクターであるローディーですら冷や汗をかくような場所であったのだ。


 各コルベットから飛び出していった対艦ミサイルはほとんどが直接、敵艦を狙って突っ込んでいき、残りが高高度から子爆弾を撒き散らすクラスター弾であったようだが、いずれもその大部分が敵艦隊の濃密な対空砲火によって撃ち落とされる。


 それでも何発かは見事に敵艦に飛び込んで少なくない被害を与えたようである。


 それを見て私はまだ戦いようはあるのかと少しだけ気が楽になってローディーに軽口で返す。


「で、どうする? アンタはお留守番かい?」

「は? ザケんな。ガキのお守りは必要だろ?」

「そりゃ助かる」


 私が舷側からパイドパイパーを降下させるとローディーの烈風も後に続いた。


 敵艦隊は中心に正規空母、その周囲に二重、三重に渡って駆逐艦やらフリゲート艦を配置。要所要所に軽巡洋艦を配置といういわゆる輪形陣というやつだろうか?


 だがすでにその外輪はくずれかけている。

 轟沈したり、あるいは機関を損傷し地表へと落ちる艦もあり、またミサイルや轟沈した艦から吹き飛んできた破片によって損傷したりした艦がある。


 その崩壊した前線のカバーに入ろうとか後方の艦が速度と高度を上げて陣形を崩しているのだ。


「……ったく、こんなんジャリどもに見られなくて良かったぜ」

「違いない」

「私は見てるよ~! おじさんがそう言ってくれた事も憶えておくにぇ~」


 降下する私たちのすぐそばを抜けていくビーム。

 遠くの空母から今も次々とHuMoが発艦し、地表に降り立った艦載機はこちらを目掛けて隊列を組んで突っ込んでくる。


 確かにこんな目に見える形のシステマティックな殺意などあまり子供たちに見せたいものではない。


 まあ、その敵意を打ち砕いていく者たちの中にも年頃だけでいえば守られるべき存在であろう子供が混じっているのだが。


「軽巡にビームキャノンをシュ~! 超! エキサイティンッ!!!!」

「ほい! ほい! ほい!」


「雷神」の担いだビーム砲が敵艦を艦底から貫き爆散させ、「戦艦殺し」がひょいひょい敵艦のエンジン部を狙って撃ち込んでいくバズーカ砲などはまるで海外映画の自転車にのった新聞配達員がぽんぽん玄関先に新聞を投げ込んでいくかのような軽やかさがある。


 以前、マーカスが攻略WIKIに載っていた「マモルは狙撃が得意」というのは誤りで「一方的に強く出れる相手には強い」と言っていたが、経験を積みスキル育成を済ませた彼らからすれば死角に飛び込んで撃ち落としていける戦闘艦も強く出れる相手という事だろうか。


 もちろん敵だって「雷神」と「戦艦殺し」が脅威であるのは認識しているわけで両者には蟻が砂糖に群がるように次々と押し寄せてくるが、それを私たちがむざむざ許してやる道理も無い。


「中立都市で姦計を謀り、挙句の果てに実行犯の家族を口封じとは度し難い。私の剣の錆にしてくれるわ!」


 2本のレイピアのように鋭いビームソードを奮って次から次へと敵HuMo隊を屠っていくのはカーチャ隊長。


 これまで2日間に渡って不殺を貫いてきた彼女もヨーコたちを騙し討ちしようとしていたトヨトミには心底、腸が煮えくりかえっていたのか的確に敵機のコックピットを貫いていく。


「ハッハハのハ~! 単騎で防衛目標を守り抜くために先行配備してもらった試作特殊兵装『ドラゴン』です。当たると痛いですよ!?」


 華麗に戦場を駆け抜けていくカーチャ隊長とは対称的に無茶苦茶に飛び回っているのがマサムネさんのホワイトナイトだ。


 あの大柄のメイスのような武装は私の予想通り、先端からビーム刃を発生させるビームランスであったようで、まさにその名の通りに竜の牙のようだった。

 さらにそのビームランスの先端を短い周期で放射してビームマシンガンのようにしている辺りは竜のブレスを模しているのだろうか?


 そんな2機の白騎士をマトモに相手しても無理だと敵も包囲を狙ってくるが、それも駄目!


「はい、ド~~~ン!!!!」


「一人砲兵中隊」のセントリーの全身が炎と白煙で包まれたかと思うと機体各所のランチャーからミサイルが飛び出していき、敵集団を阿鼻叫喚の地獄絵図へと叩き込む。


 直撃を受け、爆発に巻き込まれ、跳んできた破片に打たれ、足場を奪われ、包囲を目論んでいた敵集団はあっという間に壊滅に追い込まれていた。


 対艦攻撃特化の2機のセントリーを落とそうとしても2機のホワイトナイトや砲兵仕様のセントリーに阻まれる。ならば先にコルベット艦を狙おうとか、僚機を囮に駆け抜けてきたHuMoも少なからずいたが、その相手をしていたのがカミュとだいじんさんだ。


「爺さんは後ろで援護してろよ!!」

「うっさいわい! 貴様が死ねば彼女が泣くぞ!?」


 口では俺が儂がと言い合っているが、どうやらそれは互いを奮起させる結果となっていたようで2人は競い合うかのように次から次へと敵を討ち倒していく。


「ゼロっっっ!! タイフーーーンッ!!!!」

「うおおおッ! 『こーど:ぼんばいえ』発動!!」


 ……このゲームって必殺技とか撃ち合って戦うゲームだっけ?

 自分の担当もそうだし、なんか自信はないが。


 それにカミュはともかく、だいじんさんの「コードなんとか」とやらは何が何やらさっぱりなのだが、目に見えて動きが良くなっているから良しとしよう。


「カミュ! 爺さん! 敵は回り込んでこようとしている動きをしている。2人はそれぞれ左翼、右翼へと動いてくれ! 正面は私とローディーが入る!」

「了解ッ!」

「ならばここは任せた!」


 敵の全体的な動きを見るのはまだ戦闘に入っていない私たちの仕事。


 私とローディーは機体を全速力で駆けさせ一直線に前線を目指す。


 だが私の指示で二手に分かれたカミュとだいじんさんの背後を突こうとする動きを見せる敵小隊が現れる。


「ローディー!」

「オーライ! こっちもいけるぜ!」

「こっちもパンジャンドラム発射!!」


 私を追い越して無数の砲火が敵へと向かっていく。

 ローディーの烈風カスタムⅡは多数の連射火器を搭載した弾幕仕様。

 機体を全速力で駆けさせながらではマトモな命中精度は得られないが、敵の注意を引くためならばその砲火は無駄ではなく、むしろ心強いくらいだ。


 私のパイドパイパーも手にしたサブマシンガンを当たれば儲けものぐらいの気持ちでバラ撒きながらさらに背部コンテナからパンジャンドラムを投下。


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[一言] パンジャンパンジャンパンジャンパンジャンパンジャンパンジャンパンジャン  長文失礼しました。 絶対相手に当たらずに別の方向へ進んで行きそう
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