表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャッカルの黄昏~VRMMOロボゲーはじめました!~  作者: 雑種犬
第1章 獅子と白騎士王
23/429

10 2度目のミッション

 私たちはガレージに戻り、マモル君に新たなミッションを探してもらう。

 もう少しノーブルを眺めていたい気持ちもあったけど、それ以上に私は逸る気持ちを抑えきれなかったのだ。


 この広大なゲーム世界の中心に屹立するかのように涼し気な表情を浮かべるホワイトナイト・ノーブルは、その肩の上にでも姉が乗っていて私を見下ろしてドヤ顔でも決めているかのようでもあった。


 無論、私以外の誰がノーブルを見てもそんな事など微塵も思うわけがない。


 自称「社会の歯車」の姉が、大勢のスタッフの中の1人という立場でありながらも自身の理想を追求し続け、その結果をこう目の当たりにすると、諦める事に慣れてしまった私は胸の内をかきむしられるような気がしてくるのだ。


 さりとて私自身に後ろめたい気持ちがあるわけでもなく、父が倒れて家業を手伝うために部活を辞めなければならなかったのは「しょうがない」というくらいにしか思わないし、父が復帰してから暇を持て余して始めたファンタジー物のVRMMOゲームをすぐに止めたのは純粋に「やってられっか!」という思いがある。


 そういうわけで私は自身の心の底で滓のように熱を持つ何かに胸を焼かれながらも、その熱がもたらす衝動はただ姉が作った世界をもっと見てみたいだとか、このゲーム世界の一員であるプレイヤーの1人としてゲームを微力でも盛り上げる事で姉を応援してあげようという形となって私を次のミッションへと向かわせたのだ。


「とはいえ、私のニムロッドもそう悪い物じゃないと思うのだけどね」


 マモル君がよさげなミッションを見繕ってくるのを待ち、また出入りの整備業者が新たに運び込まれてきたライフル用の予備弾倉を機体に取り付けていくのを眺めながら私はニムロッドの足元に立って一人ごちる。


 そりゃあ姉が心血注いで完成にこぎつけたホワイトナイト・ノーブルに比べればニムロッドは見るからに性能が低そうな見てくれだ。


 ノーブルの装甲が全身くまなく張り巡らされているのに対してニムロッドは所々から機体フレームが見えているし、その装甲もノーブルの高価な磁器を思わせる優しく光りを反射する輝きとはまるで違い、被弾箇所を塗装し直した箇所などは塗りムラがあるほどだ。


 だがそれが案外と格好良く思えるから不思議なもの。

 私は別にミリタリー趣味などはないのだけれど、低ランクの機体ながら力強さを感じさせてくれるニムロッドに施された意匠が嫌いではないのだ。


 顔にあたる部分に並んだ1対のアイカメラは左右で大きさが違うが、これは目標の遠近によって異なる性質のカメラの主従を切り替える事であらゆる領域での性能を確保するためだとカタログには書かれている。

 こういう所にニムロッドの姿を通してデザイナーの意思を感じて私はただの機械に闘志のようなものを感じるのだろう。


 それに機体フレームが見えているのもまた良い。

 重機を思わせる重厚なフレームに、バイクのカウルやレーシングカーのボディを思わせる流麗なプロテクター状の装甲が取り付けられているのが美味しいとこの両方取り的な満足感を感じさせてくれる。


 たった1度のミッションをクリアしただけだというのに早くもニムロッドに愛着を感じ始めているのか、上位機体を購入したとしても下取りには出さずにマモル君に乗ってもらおうかなどと随分と先の話を考えていたほど。


 このゲームはぼっちのソロプレイヤーでもチームプレイが体験できるように担当AIも機体を操縦して戦闘に参加できるようになっている。


 もっともプレイヤー自身の機体の他、担当AIの分の機体も用意するとなればその分コストが必要になるわけであるし、それ以前にまだ私はこのゲームにまだ不慣れであるのでマモル君には同じコックピット内にいてもらってアドバイスを貰える方が心強いわけで、彼のパイロットデビューはまだ先の話であろう。


「お姉さん、いくつかミッションを選んできたんですけど、難易度的にはどうします?」

「そうねぇ。あと1つか2つくらいは『難易度☆(ホシイチ)』のミッションで慣らしてみたいわね」

「それじゃ、こういうのはどうです?」


 タブレットを抱えて駆けよってきたマモル君が見繕ってきてくれたミッションはまさに私が望んでいたものであった。




件名:盗難されたHuMoの追跡、撃破(難易度:☆)

依頼主:サンセット防衛隊治安維持部


内容:盗難されたHuMoを武装犯罪者集団に引き渡される前に撃破してください。

 サンセット南の砕石場で作業用に使われていたHuMoが作業員によって奪われ逃走中です。調査の結果、借財で首の回らなくなった作業員が武装犯罪者集団にHuMoを売り渡そうとしている公算が高くなりました。


 盗難されたHuMo「キロ」は作業用に使われていたものですが、採石場の自衛のために用意されていた火器も奪われており、十分に気を付けてください。

 また合流予定の武装犯罪者集団との戦闘になる可能性もありますが、本ミッションの主目的はあくまで奪われたHuMoの撃破であり、HuMoの撃破をもってミッション完了とさせていただきます。


添付:ポイントS657周辺地図

  「キロ」スペック詳細

タグ:難易度☆




「うん、装甲車や戦闘ヘリ相手も悪くはないけど、やっぱり王道はロボット同士の戦いでしょ!」

「撃破目標以外のハイエナというのは難易度を考えるとやはりHuMo以外なんじゃないでしょうか?」


 となるとHuMoが1機にそれ以外に車両かヘリかが何体か。

 ハイエナが出てくるのがHuMo戦の前になるのか後になるのかは分からないが、前回みたいに今回のミッションにも特別ボーナスがあるのなら、ハイエナたちを殲滅する事がその条件だろうか?


 となると1対1の対HuMo戦でHPを使い過ぎるわけにはいかないが、こちらはランク3のニムロッドで、向こうはランク1のキロ。

 さらに奪われたのは作業用に使われていた機体だというし、おまけに相手はハイエナでも傭兵でもなく借金でケツに火が付いた作業員。

 負ける理由は無いと言っても過言ではないだろう。

お気に召しましたらブクマ&評価をお願いします。

感想なども頂けたら励みになります。また疑問点などもありましたらお気軽にどうぞ!


更新情報などはTwitterで

雑種犬@tQ43wfVzebXAB1U

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ